幸せの時間
子猫と過ごし始め、黒一が来た日から数日が経つ
クロと名付けられた子猫は元気に育ち走り回る
宗馬は仕事の忙しさはあるが更にメリハリが付くようになり会社内の評価も高水準で評価されていた
(モヤが見えるのはずっとなんだろうか)
これだけは気になってはいた、以前黒一から「きっかけにすぎない、その眼は元々」と言われていた
日常生活に支障はない、最近は集中してモヤをチェックして仕事に活かせているぐらいだ
クロを助けれたのもモヤが視えたおかげでもある
ただ、次黒一の最後の訪問が終わればどうなるかは気になっていた
(視えることも悪い事じゃないんだがな)
仕事を終わらせ今日は人と待ち合わせている
待ち合わせ場所へ向かうと既に待つ人が見えた
「すいません、お待たせしましたか紫音さん」
「今来たばかりですよ!さあさあお疲れ様で悪いですがクロちゃん見に行きましょ!」
紫音さんに猫を飼った事を話したら、凄い食いついてきたのだ
紫音さん曰く「定期的に猫は摂取したいものなんです!」と力説され、じゃあウチへと言う流れになったのだ
「今日はお休みですか?」
「ちょうど定休日でしたし父が行っておいでと送り出してくれて」
恩義があるとは言え独身男性の元に独身の娘を送り出すとはいかがなものだろうと、ちょっと思う
歳はいってるが男なんだけどな…と思いながら案内していく
「着きました、ここがウチです」
「わぁついにクロちゃんご対面ですね!」
玄関を開け二人入り切った所で奥から走りながら現れたクロ
いつも出迎えてくれて擦り付きアピールをしてくるが…初めての紫音さんへはどうだろう?
クロは一瞬止まり初めての人間に警戒はしている
紫音さんが屈んで手を差し出した
ふんふんとクロはチェックしていく…頭を擦り付け出した
「どうやら気に入られたようですよ」
「私、今最高に嬉しいかもです」
紫音さんは感無量と言った様子に笑いながらリビングへ案内する
クロも離れず付いてくる
「どうぞくつろいで下さい、コーヒー淹れますので」
「あ、おかまい…わっクロちゃんあなた良いの!?」
なんだと見れば紫音さんの膝に乗りくつろぎ体勢になってるクロ
あいつ人見知りが無いんだろうか
笑いながらコーヒーを用意する、宗馬はブラック紫音さんはミルクと砂糖
去年からの付き合いでその辺りもわかってきている
「うれしいですね、猫の居る生活って」
肉球を触りながら喜んでいる紫音さんに愛でられクロも満足気で目を細めている
自分よりリラックスしてないか?
少しの嫉妬を覚えながらコーヒーをお持ちした
「成り行きとは言え、突然猫を飼うなんてどうしたんですか?」
紫音さんの素朴な疑問はもっともだ
ただ説明するとなると幼少期の時のクロや、今現在毎月来る黒一の事などをどう説明するか
少し悩み宗馬は「運命でした」と答えた
「クロちゃんは幸せですね〜こんな優しい人と出会えるなんて」
パッと肯定してくれる紫音さんが眩しい
しかしまあ気が付けばクロもベッタリゴロゴロと喉を鳴らしながら紫音さんから離れない
「かなり気に入られたようですね」
「クロちゃん子猫だからか全力で甘えてきますね」
もっとバタバタ走り回るイメージはあったが誰か来ると大人しい
黒一に会った時も黒一の側から離れなかった
親はわからないが子猫ながら一匹で生きてきて死にかけた経験から、今甘え癖が出たのだろうか
「そうそう、こちら忘れない内に」
紫音さんが持ってきていた大きめの荷物を漁る
そう言えばあれは何なんだろう…箱が出てきた?
「お口に合うかわからないですが、店で作ったフレンチ重になります」
「え!?…おぉ!」
開けられた箱には名前が分からないが一口サイズに盛られた色とりどりの料理が宝石のように輝いている
「宗馬さんにお渡しするよう父からの新年の挨拶です」
「こ、こんな凄い物頂いてよろしいのですか…?」
「勿論!じゃないと無駄になっちゃいますので」
紫音さんは手を振りながら笑い、どうぞどうぞと差し出される
「日持ちはしますが、出来るだけ早くお召し上がり下さいね」
「ありがたい限りです、写真撮っとこう」
宗馬はスマホを起動し二枚三枚と写真を撮る
最近、クロが来て写真撮りに目覚めたのもありアングルにこだわったりしていた
「宗馬さんそんな色んな角度で撮らなくても」
紫音さんは大笑いし、膝上のクロは呆れた顔で見てる気がした
「今度お店行きますね、悟さんにお礼言わなきゃ」
「またお会いしたいと言ってますし喜びますよ!」
本当に素敵で優しい親子だ
「紫音さん、いつか聞いてくれますか?不思議な僕の夢みたいな体験」
キョトンとした顔で見つめられるがパッと笑顔を見せ
「面白そうですね!是非聞かせて下さい!」
この人に出会えて良かったな、宗馬は噛み締めながらクロを撫で回した




