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この子

ぴーっ、と乾燥機が鳴った。あたしのが先に終わった。


洗濯物をカゴに移しながら——あったかいタオルとかTシャツとか、生活の匂い——あたしたちはまだぽつぽつ喋っていた。あたしの名前が有羽だということ。その子の名前が凪紗だということ。凪紗が車で来たこと(ガラス越しに見えたのはスポーツカーだった。赤い。しかも古い型。嘘でしょ)。あたしがこの店をよく使うこと。そういう、どうってことない話。


畳んだ洗濯物をゴミ袋に戻しているあたしの横で、凪紗は言った。


「ゆうちゃん、あたし歌もやってるんだ」


「え、歌?」


「うん。凪紗で調べたら出てくるから、暇だったら聴いてみて」


友達にインスタのアカウントを教えるみたいな温度だった。


「うん。聴いてみる」


「やった」


凪紗は洗濯物を紙袋に雑に詰めて(畳まないんだ、この子……)、「じゃあね、ゆうちゃん」と手を振った。


ガラス扉の向こう。赤い車のドアが開いて、閉まって、エンジンがかかった。聞いたことのない音だった。ぶるん、じゃなくて、もっと滑らかで、どこか遠い場所から届いてるみたいな響き。丸いテールランプが四つ、暗い道路を滑っていって、角を曲がって、消えた。


コインランドリーに残されたあたしは、まだあったかい洗濯物の袋を抱えていた。ふわっと、柔軟剤の匂い。凪紗のほうからも同じ匂いがしていたかもしれない。同じ柔軟剤を使ったわけじゃなくて、同じ空間の空気を吸っていただけだけど。

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