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【懺悔室のシスターさん】に悩み相談すると決まって聖女な『義姉』が全肯定で甘々に甘やかしてくるけど、俺はその理由をまだ知らない~スクールカースト最底辺からのやり直し~  作者: 水瓶シロン
第四章~燻り始める想い編~

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第32話 この辺で恩返しをしておきたい……!

「ごちそうさま。めっちゃ美味しかった」

「美味しかったね~」

「ありがとな、陽葵」

「いえいえ~、どういたしまして~」


 テーブルの上に並べられた空になった小皿とティーカップから視線を移して感謝を伝えると、陽葵はニコニコと笑って反応する。


 多分、俺が今回のご褒美について「ありがとう」と言っているように受け取ったのだろうが、少し違う。


「なんか、いつも気に掛けてくれてさ」


 そう。今回だけじゃなく、これまでのことも含めての感謝。


 父さんが再婚して俺達が新しい家族になったとはいえ、認識としてはやはり他人。


 それは陽葵も変わらないだろうに、俺の学校での立ち位置を心配してくれたり、玲美や天羽と関係を取り戻そうとしていたときも勇気をくれた。


 何より、泥臭く足掻こうとする俺をいつも見て、肯定してくれた。


 それが何故かはわからない。

 陽葵がそういう誰にでも優しい性格だから、と言ってしまえば簡単だが、本当のところは陽葵のみぞ知ると言ったところ。


「ホント、ありがとう。凄く助けられてる」

「えぇ~、なになに~? 急に感謝されても困っちゃうよ~」


 陽葵が照れたように笑って受け流そうとするが、俺はこの機会に折角だから返せる恩は返したいと思った。


「だから、陽葵ももしなにか困ってることとか、俺にやってほしいこととかあったら遠慮なく言って欲しい。ま、まぁ、俺に出来ることなんて限られてるけど……」


 ははは、と乾いた笑いが零れる。


 おっと、いかんいかん。

 俺はすぐ自嘲的になってしまう。

 悪い癖だ。


「え~、ほんと? 嬉しいなぁ。でも、うぅん、困ってることかぁ……」


 陽葵が脚を折り曲げてクッションを胸に抱く。


 むぎゅぅ、となっているのはクッションか、それとも陽葵自前の――コホンコホン!


 どこへともない虚空を見詰めながら考える陽葵の答えを、必死に煩悩を排除しながら待っていると――――


「あっ、えっとね?」


 何かを思い付いたように陽葵が声を上げる。


「困ってる、とかではないんだけど。司くんにお願いできたら嬉しいなぁっていうことなら、あるの」

「何でも言ってくれ」


 ピン、と人差し指を一本立てる陽葵。

 俺は少々畏まったように正座をして居住まいを正す。


「実は、最近できた喫茶店なんだけど、冬季限定のスイーツを出すお店があってね? 前々から行ってみたいな~って思ってたんだけど、一人だとちょっとうーんって言う感じだったの」


 なるほど、と頷く。


「つまり、その店に一緒に行けば良いのか?」

「う、うん……!」

「もちろん構わないけど、それなら別に俺じゃなくても友達とかと行った方が楽しめるんじゃないか?」


 随分とお世話になった陽葵のお願いなのだから、もちろん何でも叶えてあげるつもりだ。


 なので、もっとこう……俺だからこそ出来るというか、男手が必要な仕事があるとか、そういうちょっと難易度の高い類のものを想定していたのだが。


 こうも簡単なお願いだと、俺が無理に恩返しする機会をせがんで、陽葵が適当な要望を引っ張り出してきたようにも感じられる。


 もしそうだとしたら、むしろ申し訳ない。


 だが、どうやらそんな心配は杞憂だったようで…………


「う、ううん。友達じゃ、ダメなの……」

「そ、そうなのか?」

「うん、そうなの」


 陽葵が視線を僅かに逸らして、横に垂れる亜麻色の髪を指に巻き取って弄る。


 微かに頬が赤いのと、唇が尖って見えるのは気のせいだろうか。


「だ、ダメ……かな?」


 じぃ、と。

 逸らされていた陽葵の琥珀色の瞳が俺を見据える。


 いちいち仕草が可愛いのは何なんだ、まったく。


 俺はギュッと胸の奥が苦しくなるのを感じながらも、それを表の態度に出さないようにして首を横に振った。


「いや、ダメじゃない。そういうことなら、もちろん付き合わせてもらうよ」


 陽葵が無理してその場凌ぎのお願いを引っ張り出したのでなければ、それでいい。


 俺は全力で陽葵の要望に応えさせていただくまでだ。


「やったぁ~、ふふっ……!」


 パァ、と花が咲いたようにはにかむ陽葵。

 気恥ずかしさを隠すように、顔の下半分を抱き締めたクッションに埋める。


「いつ行く?」

「えぇっと、明日……は流石に急だよね? 明後日とか、どうかな……?」


 明後日は、日曜日か。


 俺の予定が空いているか心配なのだろう。

 可愛らしく上目遣いで尋ねてくるが、安心してくれ。


 俺の休日が埋まるほど、友達はいない!

 ……あれ、自分で言っていて悲しくなってきたぞ?


「ああ、大丈夫」

「良かったぁ~」


 楽しみにしてるね、と言う陽葵の屈託のない笑顔。


 いや、それはこっちの台詞です、と心の中で言っておく。


 というか何だろう。

 ここまで嘘偽りなさそうに期待されると、俺まで嬉しくなってきてしまう。


 これは陽葵への恩返しのはずなのに、感覚的にはまた俺の方がご褒美をもらっているみたいだ。


 でも、いかん。

 これは陽葵に喜んでもらいたくてすることなのだ。


 全力で陽葵を楽しませるために、どうすればいいか。


 うぅん。

 玲美や天羽と遊びに行った経験を参考にしようにも、陽葵はまたあの二人とタイプが全然違うんだよなぁ。


 玲美も天羽もどちらかというと自分から引っ張っていく性格。


 だが、今回は俺が陽葵をエスコートする側。

 そうでなければ恩返しにならない。


 さて、誰か陽葵と雰囲気が似たタイプの人に相談をしたいところだが……フッ、ここで俺の交友関係の狭さが足を引っ張ってくる。


 似たタイプと言えば、やはり陽葵の実の母親である茉莉さんか?


 いやいや。

 これ以上ないタイプ一致だが、流石に茉莉さんに「娘さんとデートするのでエスコートの仕方を教えてください」とは言えんだろ。


 言い回しを工夫しても、伝わる意味合いは結局一緒になってしまうし。


 ん~、あと似てるタイプの人と言えば…………


 ……あ、いた。

 真っ先に思い付くべきはずの人物だったが、灯台下暗しとはこのことか。


 いるじゃないか。

 いつでも親身に俺の相談に乗ってくれるうえ、どことなく陽葵とタイプの似ている女性。



 懺悔室のシスターさんが――――

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