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第19話 幼馴染のメンヘラ属性目覚めさせたの誰だよ

 ガチャ。


「ただいま」


 帰宅して玄関を見る。

 誰の靴も見当たらないので、家には誰もいないことがわかる。


 父さんと茉莉さんは仕事。

 陽葵もやはり生徒会やボランティア活動で忙しいのか、他の生徒に比べて帰るのが遅いようだ。


 やることは昨日と変わらない。


 荷物を整理し、課題に着手し、浴室を洗う。

 昨日はこのタイミングで陽葵が帰ってきたが、今日はまだその気配はない。


「ご飯炊いとくか……」


 キッチンへ移動し、米を三合研ぐ。

 炊飯器にセットして、ピッ。


 一通りやることを終えたので、俺は自室に戻ってベッドに腰を下ろし、スマホを手に取る。


 すると――――


『やほ』

『早速連絡してみた』

『久し振りでなんか恥ずい』


 お、玲美からだ。


 スマホの通知画面に三つほどメッセージが来ていたので、俺はアプリを開いて返信する。


『女子にメッセ送ってソワソワしてる男子中学生かよ』


 そう送ってスマホから目を離そうとしたが、三秒と経たずに既読がつき、玲美から返信が来た。


 というか、文字打つのが早い。


―――――――――――――――


『すぐそういうこと言う』

『ちょっとは素直になったと思ったのに』

『イジワルする男子はモテないよ』


  『余計なお世話だ』


―――――――――――――――


 と返しつつも、俺は自分の口許が少し緩んでいることに気付いた。


 少しは玲美と以前のように仲の良い関係を取り戻せたような気がして、俺も何だかんだ嬉しいのだろう。


―――――――――――――――


  『そんで?』

  『何か用事とかあったか?』


『用事がないと連絡したら駄目なの?』


  『いや』

  『そんなことはないけど』


『まぁ』

『実は頼み事あるんだけど』


  『あるんかい』


―――――――――――――――


 電話で言うところの「ちょっと声が聞きたかったの」展開。


 つまりは、用事はないけど俺と話したかったから連絡してきたみたいな流れを勝手に想像してしまっていたので、たまらずツッコミを入れてしまった。


 部屋で一人小さく一笑を溢していると、すぐに玲美から用件が伝えられる。


『もうすぐ期末あるじゃん』

『司に勉強見てもらいたくて』


 あぁ、そういえばそうだった。

 今月末から来月の頭に掛けて二学期末定期考査期間だ。


 落ちぶれる以前はテストの日程を忘れることなんてなかったが、ここ二年程は直前にようやく気付くような感じになっていた。


 昔はあんなに気にしていた点数も、今ではすっかりやる気も失せて平均点狙えればまぁ良いか程度になっている。


―――――――――――――――


  『人に教えれるほど頭良くない』

  『別の人をあたってくれ』


『嘘』

『頭は良い』

『今は勉強してないだけでしょ』


  『どっちみちダメじゃんw』

  『学力ないのは変わらん』


『なら言い方変える』

『一緒にテス勉しよ?』


  『んー』

  『めんどい』


『女子にめんどいとか失礼』


  『お前に言っとらんわw』

  『勉強がめんどい』


『もう』

『あ』

『わかった』


  『何が』


『なんだかんだ言ってさ』

『やっぱまたウチと関わるの嫌なんでしょ』

『距離取ろうとしてるよね』

『図星?』

『ねぇ』

『そんなにウチ嫌い?』

『それならそう言って欲しい』

『勉強を理由にしないでさ』

『嫌なとこあったら直すし』

『ねぇ』

『司』

『どう?』

『どう思ってる?』


―――――――――――――――


 ちょ、怖い怖い怖い怖い……!

 怖いって!!


 メッセージを打つスピードで気の昂ぶりをそのままに感じるんですけど!


 なんか変なスイッチ入ってない!?

 コイツこんな属性あったっけ?

 なんかヘラってるんですけど……!


―――――――――――――――


  『ストップストップ!』

  『落ち着けって』


『私は落ち着いてる』


  『昂ってる奴は皆そう言う……』


『え?』

『なに?』

『ウチは冷静なんだけど』

『司やっぱ嫌いでしょ』

『ウチのこと』

『あー』

『うん』

『ごめん』

『ウチめんどいよね』

『自分でも思った』

『こういうとこだよね』

『直さなきゃね』


  『わかりました』

  『一緒にテスト勉強しましょう』

  『来週で良いか?』

  『良いよな?』

  『はい、決まり』


『え』

『いいの?』

『マジで?』


  『マジマジ』


『あ』

『ありがと』

『司』


  『うい』


―――――――――――――――


 最後にサムズアップしているスタンプを送ってからスマホの画面を閉じた。


 カチッ、カチッ、カチッ……と、部屋のアナログ時計が一秒一秒を刻む音が聞こえる。


「はぁ……」


 ボフッ。

 背中からベッドに倒れ込む。


「こ、怖かったぁ……」


 え、なに?

 これがメンヘラ?

 流行のヤンデレ?


 まさか自分が身をもって経験することになるとは。


 妙な感慨に浸りながら天井を見詰めていると、玄関扉の鍵が開けられる音が聞こえた。


「ただいまぁ~」


 ふわふわとした可愛らしい声。

 陽葵で間違いない。


「おかえりー」


 俺は上半身をベッドに寝かせて天井を見上げたまま返事をする。


 玄関を上がった足音が部屋の前で止まる。

 コンコンコン、と三回扉がノックされた。


 ……なんだろう?


「司くん、入っていい~?」

「ん、良いけど」


 お邪魔しま~す、と一言断りながら入ってくる陽葵。


 そういえばこうして陽葵が俺の部屋に入ってくるのは初めてか。


 新鮮に感じたのだろう。

 キョロキョロと部屋を見渡して「わぁ」と声を漏らしていた。


「ふふっ、男の子の部屋って感じがするね。ちょっと緊張しちゃうかも」


 照れ臭そうにはにかむ陽葵。


 はい、今日も可愛い。

 突然のメンヘラ爆撃で強張った俺の心が和らいでいく気がする。


 とはいえ、緊張するならわざわざ入ってこなくてもいいのではと思ってしまった。


 用事があるなら呼んでくれれば俺が部屋から出ることも出来る。


 ……けどまぁ、違うんだろうな。


 こうして緊張している間は、本当の意味で家族にはなれていない。


 親しき中にも礼儀あり。

 確かに家族にだって遠慮というものは必要だ。


 しかし、こうして部屋に足を踏み入れる程度、平気で出来るようにならなければ本当の意味での家族にはなれないだろう。


 その練習、とまでは思っていないかもしれないが、その辺りを考慮してのことだろう。



 それにしても、一体何の用事だろうか……?

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