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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第2章 なんとか魔術師のセンパイ

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第19話 ボクは……信じる! 信じる心が大切なんだ!



 さて。

 めんどうくさい男、ソードアークをうまく働かせて……。


 そこからはうまくいった。

 それはもう簡単な課題だから当然なんだけど。


 ソードアークがトゲネズミをみつけて合図を出すと、ナイスクマリーとアリスティアお嬢さまがそれぞれ左右に分かれて1匹ずつ魔法で倒す。

 残りは逃げられるけど気にしない。


 それを2回、繰り返しただけだ。


 トゲネズミの小さな濃紫の魔石を4つ、ボクたちは手に入れて……今は入口へと折り返して戻ってるところ。

 先頭はソードアークで、アリスティアお嬢さま、ナイスクマリー、そしてボクという順番だ。


 ソードアークが早足になってることについては、アリスティアお嬢さまも苦笑しながら見逃してくれてる。


 たぶん、どのパーティーも1回目の接敵ではボクたちと同じように失敗してるんじゃないかと思う。

 少し時間がかかっていたパーティーは2回くらい失敗したのかもしれない。


 それほど難しい課題じゃないから、このままボクたちもだいたい15分くらいで終わるだろう。


 ソードアークは1番早く終わらせたいみたいだけど、先生方も時間の記録はしてないから実は誰が1番とかはわからない。

 残念だったな、ソードアーク。許してくれ。


 ……そもそも、課題をこなすための時間を参加してるパーティーで競ってるわけじゃないんだよな。


 一番になりたい性格のソードアークをうまく動かせてよかった。

 うまくだましたともいえるかもしれない。


 ごめんよ、ソードアーク。一応謝っとく。心の中で。

 1ミリも悪いとは思ってないけど。


 結果が1番なのかどうかわからなかったとしても、そこはアリスティアお嬢さまにほめてもらえばどうにかなるだろう。


 ソードアークはちゃんと斥候役として頑張ったわけだし。

 ほめるネタはあるはず。


 どっちかというと……ボクとソードアークが位置を交代してないから、本当に何もしてないのはボクの方だと思う。


 まあ……せっかくだから……ボクもダンジョン実習の思い出を残そうかな。


 ボクはダンジョンの出口でこっそりと足を止めて、少しだけ後ろを向いた。


 1ページ目の枠にはめ込んだなぞのカードを意識すると、頭に起句が浮かんでくる。


 ……うん。使えるな。


 右の2ページ目とちがって、左の1ページ目はダンジョンで掃除の魔法を使うためのページなのかもしれない。


「……『使用ウピヨーグ』」


 ボクはささやくように起句を口にした。

 他の人たちに聞こえないように、とても小さな声で。


 これはいつもの起句だ。

 別の起句になるんじゃないかと思ってたけど……どうやら1ページ目と2ページ目の起句は同じものらしい。


 イセリナ先生によると『ウピヨーグ』はたぶん『掃除』って意味だから、やっぱりこのカードも掃除の魔法なんだろう。


 それにしても……今回の魔法は、ほんの少しだけ魔力が失われた感覚がある。

 そこはいつもとちがった。いつもは魔力が失われる感覚がほぼゼロだ。


 でも、それ以外は……いつもと同じ感覚で魔法が発動し、広がっていくのがわかる。


 あ、でも……今までにない広範囲で掃除の魔法が拡散していく。

 そこも全然ちがうな。すごく広い。

 さすがはほうき10本カード2枚分の効果範囲……ん? あれ?


 え? なんか、すごくないか、これ? 範囲がおかしい?


 感覚的にボクに伝わるのは……ダンジョン内のかなりの広さが綺麗になっていくということだった。

 でも、これまでのように空気が綺麗になったみたいな感じはしない。


 ……ものすごく広範囲なのはわかる。でも、掃除の効果が今までとちがうような?


 魔力の本からはなぞのカードが消えている。

 ちゃんと使えたというのもわかる。カードが消えたんならまちがいないだろう。


 ……うーん。これ、何の掃除だったんだ?


 一瞬だけ、そんなことを思ったけど……ボクはすぐにアリスティアお嬢さまたちを追いかけてダンジョンから出た。


 わずかにパーティーメンバーから遅れたけど、アリスティアお嬢さまたちは気づいてない。

 気づかれないようにそっと魔法を使ったから、これでいい。


「……よし。魔石は確認できた。次のパーティーはダンジョンへ入れ!」


 こうしてボクたちの初のダンジョン実習は無事に終わった――。






 ――と思ったんだけど、何かがおかしい。


 ボクたちの次に入ったパーティー……このパーティーはアリスティアお嬢さまの護衛がしたいといってたヌーヴォルスたちのパーティーだったんだけど、もう30分くらいダンジョンに入ったままで出てこない。


 今回の課題はだいたい15分で終わるはずなのに。


 先生たちも何かがおかしいと思ってるみたいで、ボクたち学園生には聞こえないように何か話し合ってる。


 ……ダンジョンの入口付近でトゲネズミを倒すだけ。危険はゼロじゃないけど、戦わずに逃げ出すトゲネズミぐらいでさすがに死ぬようなことはないだろう。


 ひょっとすると、ヌーヴォルスがソードアークみたいなヤツで……パーティーメンバーにそれをうまく動かせる人がいないってパターンだろうか?


 いや、ネルソンって騎士見習いも一緒だったから、それはない気がする。


 しばらくの間、ボクたちの待機状態はそのまま続いた。


 そして、さらに30分くらい経って……合計で約1時間が経過してから、ヌーヴォルスたちのパーティーがダンジョンから出てきた。


 それをみたソードアークが嬉しそうにニヤニヤしてる。

 たぶん、オレの勝ちだ、なんて思ってるんだろう。


 やめろよ。そういうところだからな?

 いくらヌーヴォルスが嫌なヤツでもそういうのはダメだろう。


 ソードアークの機嫌が悪くなるとめんどうくさいからいわないけど……。


「……魔石は確認した。だが、ずいぶんと時間がかかったな? 何かあったのか?」

「はい。報告します。実は……」


 リーダーはヌーヴォルスではなくネルソンの方らしい。

 ピシッと背筋が伸びていて、立派にみえる。


「……ダンジョン内を進んでもトゲネズミと接敵することがなく、かなり奥まで進みました」

「何? そんなわけが……」


「最終的に、これ以上の奥地はマズいと判断して戻りました」

「奥地へ入らなかったのはいい判断だが……それならこの魔石はどうしたんだ?」


「これは……落ちていた魔石を拾ったものです。私たちのパーティーはトゲネズミと接敵することがなく、戦闘はできませんでした」


「そんなバカな……」

「騎士見習いとして自分が見たものを可能な限り正確に報告しております。なあ、そうだろう? みんな?」


 ネルソンが他のパーティーメンバーをみると、メンバー全員がうなずいた。

 あのヌーヴォルスも、だ。


「……とにかく確認してみましょう」

「そうですね。ダンジョン実習は私たちの確認後に再開する! 残りのパーティーはここで待つように!」


 引率の先生方の中から、3人がダンジョンへと入っていく。


 それをみながらボクは……。


 まさか、そんなはずはない、なんて思っていた。


 ボクの掃除の魔法でダンジョンのモンスターが綺麗さっぱり掃除されちゃったとか、絶対にない、はず。


 それはないだろう。

 ありえない。うん。ないない。


 ないよね……?






 結局、この日のダンジョン実習は中断したままそこから中止になった。


 まだダンジョンに入っていないパーティーと、ネルソンたちのパーティーは別の日に実習やり直すことに決まった。


 ……ボクのせいではないと、ボクは信じてる。


 信じたいと、思ってる。


 だって……バレたらマズいし、絶対に困るから。






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