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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第2章 なんとか魔術師のセンパイ

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第17話 またなのか……?



「とりあえず……カードが消えてしまう前に一度、使ってみるしかない……」


 朝、いつもよりも早く寮を出た。

 ソードアークとの訓練の時間よりも1時間は早い。


 まだ暗い時間だから、誰もいない。

 それを狙ってこの時間なんだけど……。


 いつものように魔力を循環させて……魔力の本を出す。


 ポケットに入れているカードを取り出して、目的のカードを選ぶ。


 4ページ目の『止揚アウフヘーベン』で生み出したなぞのカードだ。


 ほうきのカードを使ってほうきの数を増やしていった結果、ほうきが描かれていないカードになったあのなぞのカード。


 不思議すぎる現象だ。


 ほうき10本のカードよりも効果があるとすれば……ボクたちが暮らす東寮の東南棟だけじゃなくて東寮全体とか、まさかと思うけどこの学園都市全体とかが綺麗になるという可能性も……ないとはいえない。


「結局、使ってみないとどうなるのかがわからないっていう……なんでだろうな? 学園長の話だとボクには本能的にわかるはずだったのに……」


 ボクは輝く星マークのあるなぞのカードをみつめて……ごくりとつばを飲み込んだ。


 とにかく使ってみる。

 使えばわかるはず。


 2ページ目の枠へとなぞのカードをはめ込んで……あれ?

 入らない? なんで?


 今まで、このページの枠に入らなかったカードはなかったはずなのに。


 カードの大きさは問題ない。

 今までのカードと同じだ。


 それなのに……はめ込めない?


「……使えないってことなのか? いや……」


 その時、ピンっと直感が働いた。


 これが本能的にわかる瞬間なんだろう。

 ボクの『なんとか魔術師』としての直感だ。


「左のページ……1ページ目の方の枠ならはめ込める気がする……」


 はじめてほうきのカードを手にした時、ボクがそのほうきのカードをはめ込んでしまったところ。


 でもはめ込んだままずっと使えなくて……そのまま数日経過したらカードが消えてなくなってしまった枠だ。だから不安もある。


 でも、なぞのカードも今は3枚ある。


 ほうきのカードが消えてなくなる前に『止揚アウフヘーベン』した場合の到達点になるカードだからな。

 ボクがもったいない精神を発揮する限り、これからもこのなぞのカードか増えるはずだ。


 そのなぞのカードを1枚を準備する。

 たぶんこれが最初のなぞカードのはず。


 同じカードは区別がつかないから、まちがってる可能性はゼロじゃないけど……。


 ……ええい、やってしまおう。早くしないとソードアークがくるかもしれない。


 ボクは思い切って、左のページの枠へとなぞのカードを押し込んでいく。


「あ、入った……」


 右のページの枠にははめ込もうとしても入らなかったなぞのカードが、左のページの枠にぴたりとはまった。


「よし……って、あれ? なんか、おかしい……」


 いつものように頭の中に起句が浮かんでこない。


「いや。もう起句は知ってるんだから……『ウピヨーグ』」


 ボクは起句を口にした。


 それでも……はめ込んだなぞのカードはそのままその枠の中にあった。


 魔法は発動していない。

 カードも消えてない。


「……どうなってるんだ? 使えないってことなのか? わからん……」


 はめ込んだなぞのカードを取り外すこともできない。


 右の2ページ目の枠には、はめ込もうとしても入らなかった。

 左の1ページ目の枠には入りそうな気がして、ぴたりとはめ込むことができた。


 ……でも、起句が頭に浮かんでこなくて、自分で起句を口にしても魔法が発動しなかった。


 使えないのか?

 それとも、何か……別の理由があるのか?


 わからん……どうすれば……。


 ボクはそのままソードアークが出てくるまで、魔力の本にはめ込んだなぞのカードをじっとみつめていたのだった。






「楽しみだな、ダンジョン」

「ああ、楽しみだ」


「ナイスクマリー、ソードアーク。浮かれていてはいけませんわ。ダンジョンは危険なところなのですから」


 はじめてのダンジョン実習に浮かれていたナイスクマリーとソードアークが、アリスティアお嬢さまに注意されてる。


 ボクたちのパーティーリーダーはアリスティアお嬢さまだから当然の発言だ。


「申し訳ありません」

「気をつけます」


 一応、ふたりは反省の言葉を口にしたけど……そこまで真剣に反省はしてない気がする。


 ボクたちのパーティーは、アリスティアお嬢さま、ソードアーク、ナイスクマリー、そしてボクだ。


 魔法学園から魔術師見習い3人で、騎士学園から騎士見習いひとり。


 ……ただし、今日のボクは魔術師ではなく剣士として剣を振るう。一応、騎士見習いという扱いはシュタイン伯爵家の中でされてるし。


 掃除の魔法しか使えないボクは魔法学園で学ぶ魔術師見習いだけど……魔法じゃなくて剣で戦うことになってる。ちょっと悲しい。


 ダンジョン実習でボクは魔法じゃなくて剣で戦うと説明した時のイセリナ先生の何ともいえない困ったような表情が忘れられない。


 イセリナ先生によると、ボクは今の魔法学園にいる学園生の中でもっとも魔力量が多いらしい。


 それなのに魔法が使えないという……悲しい現実がある。


 ボクの魔力量が完全に無駄になってるわけで。

 実にもったいない話だ。


 ……正確には掃除の魔法以外は使えない、ということなんだけど。


 掃除の魔法のことは極秘なので使うわけにはいかないし、そもそもダンジョンの中で掃除の魔法を使ってどうするんだって話でもある。


 さて、もうひとりの仲間だった……ニーラについては、もういない。


 大きく体調を崩してしまって寮では世話ができないからシュタイン伯爵領の実家へ帰って療養に専念するという理由で……ニーラは魔法学園を去った。


 実際にはただの退学で……実家にも帰っていないみたいだ。


 じゃあニーラが今、どこにいるのかというと……実は鉱山にいる。


 ラレヤール侯爵領にある鉄鉱山で……ラレヤール侯爵からその鉱山は王家に贈られたんだけど、そこでニーラは働いてる。


 なんでそんなことを知ってるのかというと、アリスティアお嬢さまから説明されたからだ。


 ニーラだけじゃなくてラレヤール侯爵令息の取り巻きをしていたふたりも一緒だし、さらには魔法学園の教師だったバレル先生も同じ鉱山で働いてるという。


 アリスティアお嬢さまがそういうことを説明したのは……ナイスクマリーに太すぎる釘を刺すためだったりする。


 ニーラが情報を売っていたというか、売らされていたというか……そういうことをやってしまったのでナイスクマリーには同じことをさせないように、ということ。


 ニーラがその鉱山から生きて出てくることはないだろうって話だった。怖い。


 話を聞いたナイスクマリーは絶対に秘密を守ると誓ってたよ……わかる。そりゃそうだろうな……。


 え? ラレヤール侯爵令息?

 あいつは鉱山にいないのかって?


 鉱山に送り込まれてはないらしい。

 でも、ニーラと同じ理由で魔法学園を去った。表向きは。


 アリスティアお嬢さまによると……貴族や王族が大きく体調を崩して領地へと送られるというのは、そのまま病死することになるのが普通だそうだ。


 何が普通なのかよくわからない。

 でも、アリスティアお嬢さまがそうだっていうんなら、そうなんだろう。


 もちろん、正確には病死ではなく毒殺らしい。表向きは病死。


 あいつのせいでラレヤール侯爵は鉄鉱山を失ったんだから、親子の情とかいってる場合じゃないんだろうと思う。


 ……うぅ。ボクのせいではないとアリスティアお嬢さまはいってくれたけど。


 さすがにやりすぎじゃないのかって思ってしまった。


 いや、それはもうすごくすごーく嫌なヤツだったんだけど、ボクはよくわかってなかったというのもあって……。


 だって、まさか毒殺されるなんて思わないだろう?


 実際に病死したという連絡はまだ聞いていないけど、そうなるんだろうと思う。貴族、怖い。


 ……うん。思い出すのはやめて忘れよう。それがいい。


 とにかく、今日はダンジョンに入って……トゲネズミの魔石をひとりひとつ持ち帰るという課題が出されてる。


 ダンジョン実習は魔法学園と騎士学園の合同行事で、魔法学園の魔術師見習いを騎士学園の騎士見習いたちが護衛するって感じになってる。


 それで……ボクたちの方をすごくにらんでるヤツがいるんだけど……。


「アリスティアお嬢さま。なぜソードアークなのですか? どうして私を選んでいただけないのです?」


「ヌーヴォルス……そういう発言をするから選ばれないと気づきなさい」


「しかし!? ソードアークは孤児ではありませんか!?」


 ヌーヴォルスというのはシュタイン伯爵領から騎士学園に入学した騎士家出身の騎士見習いで……王都までの移動中はボクとソードアークをこきつかってたヤツだ。


 残念ながら、自分の「孤児だからアリスティアお嬢さまの護衛にはふさわしくない」という意味の発言がアリスティアお嬢さまに選ばれない理由だとわからないバカだったりする。


 ……そんなバカだからこうやってからんでくるんだけど。


「やめろ、ヌーヴォルス。アリスティアお嬢さまの指示に従え」


「だが、ネルソン! オレたちだってソードアークと同じくらいは戦えるんだ!」


「そうじゃないだろう。孤児とかそういうことを口にする時点でダメなんだと早く気づけおまえは」


 ネルソンというのもシュタイン伯爵領から騎士学園に入学した騎士見習いだ。

 こっちはかなりまともな騎士見習いだと思う。


 ネルソンがヌーヴォルスに向ける視線はとても冷たい。


 他にもシュタイン伯爵領からの騎士見習いはいるけど……今回のダンジョン実習でヌーヴォルスと組んでるのがネルソンらしい。それで止めてるのかもしれない。


 ……まあヌーヴォルスがダメなヤツというのもあるけど、たぶん、ボクがいるからアリスティアお嬢さまはソードアークをパーティーメンバーに選んでる。


 騎士学園の中でどんな感じなのかはみてないからわからないけど、ヌーヴォルスが手合わせでソードアークに勝てるとは思えない。


 剣の実力でも負けてて、さらにアリスティアお嬢さまの護衛としても選んでもらえない。

 身分って部分からみると……ヌーヴォルスは騎士の子で、ソードアークやボクは孤児だ。


 見下してる相手にいいところを全部もっていかれたら嫉妬もするだろう。


 ものすごくめんどうくさい相手なんだけど、ソードアークはそういうところで気をつかわないからなぁ。


 今日だけじゃなくてこれからのダンジョン実習でもからんできそうな気がする。


 しかもソードアークともめて乱闘とか……起こりそうだ。


 あぁ、めんどうくさい……。






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次回より毎週水曜日6時更新となります!

よろしくお願いします!

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