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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第1章 やっぱりクリーンな世の中が一番

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第14話 またきたよ、侯爵令息。名前何だっけ?



 王都から学園都市までは馬車で3時間かかる。

 その間、学園長とふたりでいろいろと話しながらという……回数をこなしても慣れるの、これ?


 魔法のこと以外にもこの国の今の状態についていろいろと教えていただきながら、魔法学園まで帰ってきたわけだけど。


 この時間ならまだイセリナ先生の基礎訓練の時間に間に合いそうだから、ボクは学園長と別れて講義室に向かった。


 講義室ではアリスティアお嬢さまたちが瞑想を繰り返してる感じだ。


「……あら。戻りましたか、シーアルドくん」

「はい。遅くなって申し訳ありません」


 イセリナ先生が講義室に入ってきたボクに気づいた。


 真っ先に集中を切らしてしまったのはナイスクマリーで、次にニーラだ。


 アリスティアお嬢さまは集中を切らすという感じではなく、ゆっくりと瞑想を中断してた。さすがだと思う。


「それで、女王陛下には会えましたか?」

「はい。その……」


「ああ、その話はあとにしましょうか。みなさんに話していいかどうかの判断がまだシーアルドくんには難しいと思いますからね」


 説明しようとしたボクをイセリナ先生は止めてくれた。


 確かに……うかつだった。

 女王陛下と学園長からの話はボクが勝手に広めるのはマズい。


 ……金貨500枚もらったとか、そういう話もたぶんよくない。


 ナイスクマリーとかニーラならボクにたかってきそうな気がする。


 今はボクが孤児院の出身だから、そういう感じはないけど。


 ……アリスティアお嬢さまの場合、そういうことはありえないだろう。伯爵令嬢だから。


 とにかく……子どもの間で秘密にしようって話じゃなくて、女王陛下から極秘だと指示された状態になってるわけだ。


 ボクの意識も甘かった。


 イセリナ先生、ありがとうございます!


「カーインド学園長からは周辺諸国との関係にも影響するような話だと聞いていますから、みなさんもシーアルドくんの魔法については何も話さないようにしてくださいね?」


「もちろんですわ」

「はい」

「はい……」


 ……なんとなくニーラの返事が弱々しい気がするけど、気のせいだろうか?






「……結局、ボクは今日も属性魔法を発動させられなかったな……」


「いいじゃねぇか。オレだってちょっと火が出せるってだけなんだぜ? 使えるっていえるほどじゃねぇよ。なあ、ニーラ」


「うん……」


「少しずつ、使える力は伸びていくものです。まだ3年間も学べるのですから、慌てることはありませんわ」


 講義室を出て、そのまま寮へと向かう。

 アリスティアお嬢さまを中心として4人で一緒に、だ。


 魔法学園での講義は基本的に午前中だけで終わる。


 ダンジョン実習なんかの特別な実習がある時は丸一日だったり、数日かけたりすることもあるらしいけど、基本は半日だけ。

 これは平民出身で学園都市にやってきた学園生が学園都市内で働きながら勉強するためのしくみらしい。学園長情報です。


 寮は学園都市の中にあるけど場所は魔法学園の外だから、とりあえず魔法学園から出ないとたどりつけない。


 学園都市内での通学はアリスティアお嬢さまのような貴族でも徒歩だ。


 歩くことも重要らしい。

 貴族令嬢は基礎体力が足りないって部分もあるみたいで、体力をつけるためにも馬車での通学は認められてない。


 騎士学園のソードアークなんかは走って通学してるから……あっちは脳みそまで筋肉に育つんじゃないだろうか……。


「おや。これはこれは……『掃除の魔術師』殿ではないかね」

「「はははっ! 笑えるよな! 掃除だってよ!」」


 ボクたちが校門へと向かっていると……歓迎会の時にいたなんとかって侯爵令息とその取り巻きが声をかけてきた。


 問題なのは……侯爵令息がボクを『掃除の魔術師』っていったことだ。


 ……どうして知ってるんだろうか? 極秘なのに?


 アリスティアお嬢さまはボクをかばうように前に出た。


 ありがたいけど、ボクたちはアリスティアお嬢さまの護衛でもある。

 アリスティアお嬢さまが何かされそうになったらすぐに飛び出すつもりでナイスクマリーを視線を交わし合う。


「……ラレヤール侯爵令息。何かご用でしょうか?」


 そうそう。

 この人、ラレヤール侯爵令息だった。


 アリスティアお嬢さまはちゃんと覚えててすごいと思う。


「用というか……ふふ……何本もほうきをもってウロウロしていたから『ほうき野郎』や『掃除の魔術師』などと呼ばれていたが、まさか本当に『掃除の魔術師』になるとはな。驚いたよ、くくく……」


 にやりと笑ったラレヤール侯爵令息は鼻息をふんっと荒げながらボクをみた。

 完全にバカにしてる感じで。


「そのような話がしたくてここに? ずいぶんと時間に余裕がありますわね」


「……いや、用件はそこの『掃除の魔術師』殿に、わが侯爵家への勧誘の話は忘れてもらいたくてね。くくっ」

「『掃除の魔術師』とかありえないだろ?」

「そんな魔法が使えてもなぁ? 役に立たないし?」


 めちゃくちゃ態度が悪い。

 見下してる感じがもうハンパない。嫌な連中だ。


「……何の話でしょうか? よくわかりませんけれど?」


 アリスティアお嬢さまはとぼけた。

 ボクの魔法は極秘だから、そうするしかないんだろう。


「はははっ! シュタイン伯爵令嬢はやはり愚かだな。そのような無能をかばい、侯爵家に逆らおうとするのだから」

「使えない魔術師など捨てておけばいいだろうに」

「やはり伯爵家ごときではそんなこともわからないのか」


 こいつら……ボクだけじゃなくて、アリスティアお嬢さままでバカにしはじめた。


 ボクだけならまだしも……アリスティアお嬢さままでとは。


 アリスティアお嬢さまはボクが『掃除の魔術師』だからってバカにしたりはしなかった。


 今だってアリスティアお嬢さまより身分が上の侯爵令息からボクを守ろうとしてくれてる。そんな立派な人だ。


 昔、孤児院にきてた時からずっと……優しいお嬢さまだった。


 でも、こいつは……ラレヤール侯爵令息はちがう。


 アリスティアお嬢さまとも、イセリナ先生とも、学園長とも……女王陛下とも、ちがう。

 ほとんどの人は高い身分でも誰かをバカにしたりなんかしてない。


 でもこいつは腐ってる。

 腐った貴族だ。こいつは。


 すごくめんどうくさい貴族だ。

 でも、めんどうくさいからってこのままにしておくと……たぶん、もっとめんどうくさくなるタイプの貴族だと思う。


 このままやられっぱなしでいて……いいはずが、ない。

 アリスティアお嬢さまをバカにしたことも許せない。


 ボクはアリスティアお嬢さまに小さく礼をして口を開いた。


「アリスティアお嬢さま。発言の許可をいただきたく」

「シーアルド……?」


 ボクが突然そんなことをいったのでアリスティアお嬢さまは少し戸惑った。


「よろしいわよ。何かしら?」


 でも、すぐにボクの方を向いてそういった。


 ラレヤール侯爵令息から視線を外して、だ。

 一瞬で侯爵令息が不機嫌になった。


 さすがに暴れられたらマズい。


 でも、もともと騎士家で育ったナイスクマリーなら防御くらいはできるはず。

 だから、もしもの場合はそっちに任せる。


 さて、いわれっぱなしで逃がすなんてありえない。


 身分が上? 侯爵令息? そんなことは関係ない。

 こいつだけは絶対にやっつけてやる……ボクはただの平民だからあくまでも言葉の力で、だけど……負ける気は、ない。






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