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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第1章 やっぱりクリーンな世の中が一番

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第12話 女王さまとの出会い



「楽にせよ」

「は、はい……」


 そういわれてボクは頭を上げる。


「……ソファに座ってよい。公式な謁見ではないのだ。この場はあくまでも私的なものである」


 ボクは今、女王陛下と会ってる。


 いきなりすぎるけど……こうなったのは学園長と一緒に王都へと向かったからだ。


 それを言い出したのはイセリナ先生。

 学園長が王都に向かうのならボクを一緒に連れていく方が早いって。


 ……心の底からやめてほしいと思ったボクは悪くないと思う。


 普通なら女王陛下と会うなんて無理らしい。

 できたとしても何日もかかる。


 ボクについてはすでに謁見予定があったみたいだけど……それも数日後って話だったはずだ。


 でも、王叔の学園長の場合はちがうみたい。


 王城で待たされたのは1時間ぐらいか。

 もう夜だから学園都市に戻るのは明日になるだろう。


 私的な謁見というか……お仕事以外の家族と会う時間にボクがおまけとしてついてきたって形、らしい。


 イセリナ先生がボクも一緒にいくべきだと提案した時は学園長も少し考え込んでいたんだけど、最後はボクを連れていくことを決断してしまった。


 ……心の準備なしでいきなりだから困る。


 学園都市と王都はだいたい馬車で3時間から4時間くらい。

 陽が沈むギリギリくらいで王都入りして、そのまま王城へ。


 ……学園長とふたりで馬車の中というのもかなり胃が痛かったけど。


 魔法の話が中心なのは助かったし勉強になったからありがたいとはいえ、身分の差がありすぎていろいろ困るというか!?

 学園長って王叔っていう王家の血筋でしかも公爵だし!?


 まあ、とにかく今回の謁見は女王陛下と会うための裏技的なやり方のようだ。


「そなたが『なんとか魔術師』となったシーアルドか」

「は、はい……」


 ソファに座ったボクはちらりと女王陛下をみた。


 みる前から声でなんとなくわかってた。


 美幼女。いや、美少女?

 そのへんは微妙なラインだ。


 女王陛下は御年10歳だという。

 幼女王というか少女王というか……微妙なラインだ。

 どうして学園長みたいな大人の王族がいて王位についてないのか、そこは疑問しかない。知りたいわけじゃないけど。


 子どもだ。

 子どもなんだよ。

 女の子なんだよ、女王陛下って。


 孤児院にいたボクより年下の子たちと同じ、子ども。


 王位についてるけど、その姿は子ども。


 ……でも威厳はある。女王という雰囲気がちゃんとある。


 10歳でこれって本当にすごい。

 どれだけめんどうくさいことをがんばってきたのか……。


 この時。

 ボクは……女王陛下に同情してしまったのだろうと思う。


 幼い少女が女王として生きているということに。

 どう考えても、ありえないくらいめんどうくさいことをがんばってることに。


「わらわはウルスラ。カンシドレー王国の女王でありゅ、る……」


 あ、かんだ!? 「りゅ」ってかんだ!?

 しかもちょっと恥ずかしそうにしてる!? かわいい!


 かわいい……い、いや。

 これって不敬かもしれない。

 女王陛下だし。


 でも、かわいいぞ、女王陛下……。


 女王陛下のとなりに座ってる学園長が微笑ましそうにみてる!?

 後ろに立ってる護衛の騎士さんとか、側仕えの侍女さんとかも微笑んでる!


 さすがにメイドさんとかは無表情のままだけど……やはり身分差のせいか。


 こ、ここは年上のボクがフォローしないと!


 相手は女王陛下だけど10歳だし!

 子どもだし! よし! やってやる!


「い、いと尊きわが国の太陽たる、じょ、女王陛下にごあいさつ申し上げます。わが名はシーアルド、女王陛下にお会いできて、こ、光栄でございます……」


 わざとかんだ感じでどもってみた。

 練習に付き合ってくださったイセリナ先生には申しわけないけど。


 緊張してるのは確かだけど、これはわざとだ。

 女王陛下のためにわざとかんでるボク、いい人かもしれない。


 これでボクがすごく緊張してる感じは出たはず。


 ボクはあまりにも緊張しすぎて女王陛下が「りゅ」ってかんじゃったことには気づいてナイヨ?

 むしろボクがかみかみダヨ?


 そういう空気にしてみた。


「うむ……。シーアルド、先にも述べたが楽にせよ。これは公式の謁見ではない」


 女王陛下、気を取り直して女王っぽくしゃべってくれた。


 ちょっとだけ顔が赤いのはさっきの名残りか。

 かわいい女王陛下でよかった。


「はい。お言葉、ありがたく……」

「よい。よい。それで、そなたの魔法についてだが……掃除の魔法であったとか。相違ないか?」


 うんうん。

 そういうとこだよね。「相違ないか」とか、女王っぽい言葉を使わないといろいろ大変なんだろうね。


 背伸びしてる感じがこれまたかわいい。すごく頑張ってる。

 これは……応援したくなる。


 守りたい、その姿。


「はい。ボ……私の魔法は掃除の魔法でした」

「ふむ。大叔父さ……カーインド公より危険はないと聞いておる。この場で使えるか?」

「女王陛下がお望みとあらば……」


 ボクは「ボク」っていいかけていい直してるし、女王陛下は「大叔父さま」っていいかけていい直してる。


 身分はちがうけど仲間意識をもってしまう。

 これが、共感か……。


 ボクはイセリナ先生から教わった言葉づかいでがんばって話しながら、魔力を循環させていく。


 そして、ボクの前に魔力の本を出す。


 すでにほうきのカードを2枚、右のページにはめ込んでるから、起句? っていうのを唱えるだけだ。


「『使用ウピヨーグ』」


 これで何回目だろうか。

 掃除の魔法を使うのも慣れてきた気がする。


 この部屋はだいたい学園長室と同じくらいの広さがある。

 掃除の魔法で半分くらいのスペースがピカピカになる。


「……まぶしい……」

「あ、申しわけありません……」


「いや、よい。それで、今のが掃除の魔法か?」


「あ、はい。後ろの壁やこのテーブルをよくご覧ください」

「ふむ……」


 女王陛下はきょろきょろと周囲を見回して、それからテーブルへと視線を下げた。


 女王陛下以外の騎士さんとか侍女さんとか、メイドさんとかも一緒にちらちらと確認してる。


 中でもメイドさんはすごくびっくりした顔になってる。

 さっきは一番無表情だったのに……掃除の担当だから驚いてるのかな……。


「……輝くように美しくなっておる壁と、そうではない壁がある。それにこのテーブルもそうなっておるようだ」


「はい。ボ……私の掃除の魔法はだいたいこの部屋の半分くらいに効果があるので、残りの半分は元のまま。綺麗になっているところが先ほどの魔法がかかったところになります」


「なるほど……部屋を綺麗にする、か。確かに掃除の魔法であ、る」


 ……今、「りゅ」っていわないように頑張ったんだろうな。本当にかわいい女王さまだ。これからも頑張ってほしい。


「もう一度、使うことはできるか? 半分だけではせっかくの魔法も意味がない」

「あ、はい。『使用ウピヨーグ』」


 魔力の本の右ページにはめ込んでいたもう1枚のほうきのカードが消えて、部屋が光に包まれる。


 あらかじめ2回分の用意をしておいてよかった。

 でもこれで使い切ったから、あとでまたはめ込んでおかないと……。


「……見比べた後だからよく分かる。確かに綺麗になった。空気まで綺麗になった気がするくらいだ」


「おほめいただき、ありがとう存じます」


 ボクはゆっくりと頭を下げて、それからまたゆっくりと頭を上げた。


 イセリナ先生によると、ぺこっ、みたいな礼だとマズいらしい。

 短期間の詰め込みだから礼儀作法には自信がないけど……。


「しかし、シーアルド。そなたの魔法が掃除の魔法であることは、少し、問題があるようだ。お……カーインド公、説明を」


「はい」


 学園長が女王陛下に返事をしてから、ボクをみた。

 女王陛下に向けていた優し気な表情が、ボクに向けられるとすぐ真剣なものへと変わる。


 難しい話は女王陛下じゃなくて学園長が担当するってことだろう。


 女王陛下は10歳とは思えないくらい立派だったと思うし、こういう話は女王陛下の大叔父にあたる学園長が話しても別におかしくないはず。


 役割分担ってヤツだ。


「まずは軍事面からとなるが……『なんとか魔術師』は強力な魔法を使えると周辺国は考えている。その点で、この国の防衛の観点から、キミの魔法が掃除しかできないというのはとても困る。隣国がキミと戦うことをおそれることで平和が保たれる。学園でも少し説明したが、これは理解できるだろうか?」


「はい。学園長」

「よろしい。よって、キミの掃除の魔法については極秘とする」

「はい」


 魔法学園でもいわれていたので別に不満とかはない。


「キミはまだ魔法が使えない。学園で学んでいつか強力な魔法が使えるようになる。そのように周辺国に思わせなければならないのだ」


 ボク自身、今はすごくめんどうくさい立場になってるけど……女王陛下とか、学園長とかはもっとめんどうくさい立場なんだろうな……。


「次は報奨の話を」

「はい」


 女王陛下にいわれて、再び学園長が返事をする。


 ……報奨? なにそれ?


 なんか予想外の方向に話が進んでる気がする。


「極秘ではあるが……掃除の魔法はこれまでになかった新しい魔法。つまり、新魔法でもある。この国では新魔法を編み出した者や新魔法を広めた者には報奨を与えることになっている」


「はい……」


 つまりボクは何かをもらえるってことだろうか?


「今回、シーアルドには新魔法を編み出した者として……金貨500枚が与えられることになった」


 金貨、500枚!?

 よくわからないけどすごそうだ!


 そこで後ろに立っていた侍女さんがすっと動いて、テーブルの上に何かを置いた。

 書類っぽいヤツで、しかもなんか立派な感じがするヤツだ。


「それは金貨500枚をキミの口座……ああ、今回の報奨のために商業ギルドにはキミの口座を用意することになっている。そのための証文がこれになる。これをもって商業ギルドへいけば、キミの口座から金貨を引き出すことができる」


「商業ギルド……ですか」


「そうだ。こういうことにも慣れておくといい。キミはいずれ王家に仕えて王都で働くことになる可能性があるのだ」


 ……王家に仕えるようになるんじゃなくて、あくまでも可能性ってことか。


 そうなることもあるけど、そうならないこともあるって話だろう。なるほど。


 ボクの魔法は極秘で……実際には掃除の魔法だ。


 ボクが学園を卒業するまでに対策を用意して、周辺国との関係をどうにかできればボクは必要ないってことかもしれない。


 掃除はメイドさんがするし。


「商業ギルドの口座は……確か4カ月で金貨1枚、必要になる。毎年、金貨3枚が必要だから気をつけるようにした方がいい」


「あ、はい」


 口座にお金を預けてるとそこからお金を取られるんだ。

 気をつけよう。


 でも、商業ギルドにはなかなかいかないし、金貨500枚を持ってうろうろするのは無理だと思う。怖すぎる。


 預けたままの方がまだマシなんじゃないかな……減るとしても。


「デレシーロ先生と掃除の魔法を研究して、誰もが使える魔法にできたら……その時は金貨100枚の報奨が与えられるが、これについてはどうなるか不透明だ」


「不透明……?」


「うむ。今回、キミの魔法が掃除の魔法であるということが問題になっている。私個人としてはそこまで問題を感じないのだが、中には掃除の魔法を見下す者もいるのは事実だ」


 あ、うん。

 副学園長とかそういう感じだったし、きっとそういう人は多いんだろう。


 ……攻撃魔法じゃないってだけで、極秘にしてどうこうって話だし。


「新魔法の報奨である金貨500枚はすでに国法として定められた金額なのだが、それでも減額するべきだという意見が出た。女王陛下が減額は許さぬとお怒りになって今回は金貨500枚となったのだ」


 女王陛下!

 10歳なのになんて立派な女王なんだ!


 一生ついていきます! ありがとうございます!


 ……ボクの魔法はいらないっていわれて王家に仕えない可能性の方が高いけど。


「だがしかし……掃除の魔法を普及させるための研究をしている間に、国法の改正が行われる可能性が高い。すでにそういう意見は出ている。改正されると、おそらく普及させる魔法がどのような魔法なのかによって金額が変動するようになるだろう」


「はい。わかります」


 ものすごい攻撃魔法とかだったら金額は高くなって、掃除の魔法だと安くなるんですよね。


 わかります。ボクも掃除の魔法でたくさんお金をもらうのは変だと思う。


 むしろ、掃除の魔法を新魔法として国法に定めた通り金貨500枚を用意してもらえたことの方が不思議だ。


 女王陛下の優しさみたいなものだろうか。


 ……あ。掃除の魔法を極秘にする口止め料的な何かなのか?


 それなら納得できる。

 誰にも秘密はもらしませんよ?


「今回の謁見がこのような形……公的な謁見ではなく私的なものになったことも、掃除の魔法に関係している。その点については申し訳ないとは思うのだが……国防に関することでもあるので、許してもらいたい」


「はい。問題ありません」


「わらわは謁見の間でみなを集めてやるべきだとゆうたのに……」


 ……みなを集めるって、ええと。貴族ってことだろうか。


「陛下。そのことについては先ほど納得されたではありませんか。シーアルドのためにも、この国のためにも、あきらめてください」


 学園長が優しく微笑みながら、女王陛下の頭をポンポンとなでてる。


 まあ、このふたりっておじいちゃんと孫、みたいな関係だからそういうものなのかもしれない。

 今は私的な謁見だし。


 それに女王陛下のお気持ちは嬉しいけど……。


 公的な謁見とか……なんかえらそうな貴族がいっぱいみてるだろうし、この私的な謁見の方がボクとしては助かってる。


「では話は以上だ」

「はい。ありがとうございます」


 学園長からの説明はこれで終わったらしい。


「それではシーアルド。今夜は城に泊っていくがよい」


 最後にそういったのは女王陛下だった。


 ……ボクとしてはどこかの宿屋の方がまだ安心できるんだけど。


 うぅ、謁見を乗り切ってもまだ胃が痛くなるのか……。






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