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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第1章 やっぱりクリーンな世の中が一番

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第11話 極秘の、魔法……?



「失礼します」


 イセリナ先生に続いて、ボクとアリスティアお嬢さまが学園長室に入る。


 ナイスクマリーとニーラはドアの外で待つらしい。

 見張り役だろうか?


 学園長室の中では学園長がいて……別のドアから副学園長も入ってきた。


 ……集まったメンバーから考えると、ボクの魔法が使えるって話はかなり大きな出来事になるようだ。


 つまり……嫌な予感しかしない。


「さあ、座ってくれたまえ」


 学園長がそういって、大きなソファを指し示した。

 3人か4人くらいで座れるヤツだ。


 イセリナ先生、ボク、アリスティアお嬢さまという順番で並んで座る。


 このふたりにはさまれてるのはとても嬉しいけど、たぶんそんなことを喜んでる場合ではない。


 すでにちょっと胃が痛くなってきた。


 ボクとしてはようやく魔法が使えるようになったから……ものすごく純粋に嬉しかったんだけど。


 それだけでは済まない何かがあるようだ。


「デレシーロ先生。報告を」

「はい」


 イセリナ先生が背筋を伸ばす。


「シーアルドくんが魔法を使えるようになりました」

「何っ……」


 驚いたのは副学園長の方だった。


 学園長は面会理由としてボクが魔法を使えるようになったことは先に知っていたのだろう。


「どのような魔法なんだ?」


「それは……掃除の魔法、です」


「掃除……?」


 副学園長は意味が分からないという表情になった。


「デレシーロ先生。もう少しくわしい説明を頼む」


「はい。シーアルドくんが魔法を使ったのは講義室でした。おそらく起句のみの短縮詠唱で、その起句は『ウピヨーグ』です。わたしははじめて聞くものでした」


「『ウピヨーグ』……? どういう意味だ……?」

「確かにはじめて聞くものだな」


 副学園長も、学園長も『ウピヨーグ』という言葉は知らないようだ。


「効果は……何というか、窓や机、床が綺麗になります。それも、新品同様に、という状態です」


「……新品同様?」


「ええ、そうです。効果範囲は限定されているようで、おそらく講義室の3分の1か、4分の1か。そのくらいの範囲でした。効果範囲の境目にあった机の上が半分だけ新品同様に輝いていたのでまちがいありません」


「……それは、掃除の魔法なのか? 再生魔法とか、時間魔法とか、そういうおとぎ話の伝説的な魔法である可能性はないか?」


「実験を繰り返していかなければそのあたりは何ともいえませんけれど……」


 イセリナ先生はちらりとボクの方をみた。


「……シーアルドくん自身が『掃除の魔法』だと認識していますので……」

「そう、か……」


 学園長は小さくうなずいた。


「使い手本人の認識がそうなっているのであれば、まちがいないだろう」


 どうやら学園長はボクの魔法を掃除の魔法だと認めてくれたらしい。


 副学園長は何もいわなくなったけど、表情はよくない。

 すごく不機嫌な感じだ。


「……シーアルドくん。この部屋で使ってみてもらえるだろうか? キミの魔法を?」


「はい、学園長」


 ボクは魔力を循環させて、魔力の本を出す。


 そして、右のページのふたつの枠のうち、右側の枠に残っているほうきのカードを使おうと意識した。


「『使用ウピヨーグ』」


 光と風と、少しの音。


 何かが変化してるけど、どう変化しているのかを一瞬で把握するのは難しい。


 だからこそ魔法と呼べるのかもしれない。


 学園長室の空気が変わり、明るさが増す。


 部屋全体のおよそ半分くらいだろうか。

 窓や机などがピカピカになってる。

 ソファの色も変わったと思う。


 一瞬だけ空気は綺麗になったと思うけど、効果がなかったもう半分の空気と混ざって元に戻ったような気がする。


 ……寮のボクの部屋だと空気のちがいもすごくわかるんだけど。


 空気については広すぎるとダメらしい。


「……風と水、光……少なくとも3属性は関係しているようだ」

「……3属性、ですか?」


 学園長のつぶやきに副学園長が顔を動かす。


 どうやらボクの掃除の魔法は3つ以上の属性が関係してるらしい。


 学園長の魔力視の技だろうか?

 そんなことまでみえてるのならすごいかもしれない。

 さすがは学園長だ。


「わたしは新魔法だと思ったのですけれど」

「新魔法だと!?」


 今度は副学園長がイセリナ先生の方を向いた。

 首の動きが忙しい人だ。


「ええ。少なくともわたしの知る限り、このような魔法はなかったと思いますね」


「それは……そうかもしれないが……」

「いや、確かに新魔法だろう」


 学園長がそう言い切った。


「効果は……何というか……メイドが掃除するよりも綺麗になるようだ」

「いや、学園長!?」


 副学園長はまた学園長を見た。

 本当に忙しい人だ。


「属性が多く、しかも新魔法とは……」

「し、しかし! 掃除の魔法ですよ!?」


 副学園長が叫んだ。


「メイドがいれば必要のない魔法です! メイドよりも綺麗にすることができるのかもしれませんがそれほどの意味はないでしょう! しかも、メイドの仕事を奪う可能性もある!」


「……研究してメイドたちが使えるようになればいいのではないでしょうか?」


「魔術師の才をもつメイドなどみたことがない!」


「それは……そうです、ね……」


 言い返してくださったイセリナ先生が副学園長にあっさりと屈した。

 負けないで、イセリナ先生!?


 でも、神殿で魔術師関係のジョブを獲得したらこの魔法学園に進学するようになってるんだとすれば……。


 そういう人がわざわざメイドになってるわけがないというのもわかる。

 メイドになるよりも魔法を使う仕事を選ぶにちがいない。


「副学園長が言いたいことはわかるが、これは新魔法だということもまちがいない」


「そこは……そうかもしれませんが、しかし……せっかくの『なんとか魔術師』が実は『掃除の魔術師』だったなどと……」


「いや、言いたいことはわかっている」


 3つ以上の属性が関係する特殊な魔法で、しかも新しい魔法でもある。


 でも、効果は掃除。

 メイドさんが働くよりも綺麗になるけどあくまでも掃除。


 価値があるようで……あんまりないような気もする。


 ボクとしては使えるようになって嬉しいけど……本当に、それだけでは済まないのかもしれない。


「とりあえず、この魔法については秘密とする。それとデレシーロ先生はシーアルドくんとともにこの魔法を研究してほしい。極秘で」


「はい。そのようにします」


「王家には直接、私が報告しておく」

「学園長が……? 問題なければ私が王都へ向かいますが?」


「いや。女王と直接話すべきだろうから、私が行く方が早いだろう」


 そう学園長がいった。


 なんか、ヤバいな、と。

 さすがにボクもそう思った。


 アリスティアお嬢さまも緊張してるようだ。


「……それにしても、掃除の魔法とは……はぁ……」


 副学園長がため息をついた。


 なんかすごく嫌な感じだ。


「……副学園長。そういう態度はやめたまえ」

「は、申し訳……」


「複数の属性の影響がある新魔法だ。魔法学園の教師ならその価値をもっと考えるべきではないだろうか?」


 学園長はそういってボクの方を向いた。

 副学園長は不満そうだけどとりあえず黙ってる。


「シーアルドくん」

「……はい」


「これは素晴らしい魔法だ。誰かに否定されたとしても胸を張っていい」

「はい……」


 うっ……やっぱり学園長はいい人だ。

 ちょっと泣きそう。


「ただ、問題がある」

「問題……」


 ボクが学園長の言葉を繰り返すと、学園長はゆっくりとうなずいた。


「キミは『なんとか魔術師』として強力な魔法……特に攻撃魔法が使えるようになることを期待されていた。隣国の『雷撃の魔術師』のように」


 それは、理解できる。


 ずっと……そういう感じはあった。

 どこかの侯爵家から勧誘されたのも、たぶん、そういうことなんだろうと思う。


 ボクは強力な魔術師になるだろうと考えられてたはずだ。


 もちろん、アリスティアお嬢さまのところのシュタイン伯爵家も……イセリナ先生のところのデレシーロ侯爵家もそうなんだろう。


 そういう前提で後ろ盾になってくれていたはずだ。


「……キミの魔法が、攻撃力のないものだと知られてしまうと……いろいろと、あるのだ」


「いろいろ、ですか?」


「すでに『なんとか魔術師』のジョブが授けられたという話は広まっている。それを止めることは難しい。この学園だけでなく、そもそも神殿という組織は国をまたいで存在している」


「あっ……」


 つまり、外国もボクのことを……もう、知ってるってことか?


「おそらく王国としては……キミの掃除の魔法を秘密にすることで近隣諸国との間でうまくやりたいと考えるようになるだろう。いや、私が王都でそういう話をすることになるというべきか」


 学園長は王家の人……確か王叔という立場だったはず。


 王家と話して、ボクの掃除の魔法を秘密にして……って、つまりボクの魔法は強力な攻撃魔法だと外国の人には思わせるってこと!?


 さすがにそれは無理があるような!?

 だって掃除の魔法だし!?


「シーアルドくん。いいかい? キミの魔法は極秘のものとしておかなければならない。いいね?」


「は、はい……」


 ボクは学園長の温かい視線が冷たく感じるというおかしな心境になったのだった。






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