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ヒロインがいっぱい  作者: 翡翠
第一章
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1

 記憶通りの(・・・・・)白亜の城と見紛うような美しい校舎を前にして、マクレガー子爵家長女であるカレン()は目を輝かせ……るのではなく、死んだ魚のような目をしていた。

 なぜなら視線の先には私と同じ(・・・・)ピンクブロンドの髪にアクアブルーの瞳を持つ五人の令嬢達が、その可愛らしい(かんばせ)を鬼のような形相に変えて争う、まさに地獄絵図と化していたのだからーー。


◇◇◇


 私が前世について思い出したのは、四歳の誕生日パーティーでのこと。

 研究所に勤める伯父がプレゼントしてくれた、当時なかなか出回らないという珍しい『チョコ』という菓子を初めて口にした時。

 うわ、無駄に甘ったるくて全然美味しくないじゃない。普通のミルクチョコレートが食べたい! と思って、はたと気付く。

 普通のミルクチョコレートって、何ぞやと。

 次の瞬間、突然雪崩のように前世の記憶が脳裏に押し寄せた。

 記憶の中の私は限りなくブラックに近いグレーな企業で働き、そんな私の心の支えとなっていたのが所謂乙女ゲームというもので。

『君に捧げる永遠(とわ)の愛』は、ありきたりな中世ヨーロッパ風世界観の学園ラブストーリーだったけれど、神絵師と人気若手声優達を採用したことにより爆発的な人気を博した。

 例に漏れず、私も好きな声優さんが出ているからという理由でそのゲームを楽しんでプレイしていた一人である。

 攻略キャラは五人。

 メイン攻略キャラのキラキラ王子こと、第二王子セルシオ・シュネーヘル。

 見目麗しく優秀で、誰にでも優しいけれど誰にも興味を持てない彼が唯一興味を持ったのがヒロインである。

 セルシオルートでは、卒業パーティーで婚約者のハークス侯爵令嬢(悪役令嬢)がヒロインに対し目に余る嫌がらせを繰り返していたとして婚約破棄し、新たにヒロインと婚約を結ぶ。

 攻略キャラその②のマティアス・ハークスはセルシオルートの悪役令嬢の義弟であり、マティアスルートの悪役令嬢もハークス侯爵令嬢だ。

 攻略キャラその③の腹黒眼鏡な公爵家嫡男エリック・レーベンは、常に優秀でなければならなかった。

 屋敷でも学園でも始終気を張っていた彼の唯一気の抜ける場所がヒロインの隣で、エリックルートの悪役令嬢は婚約者のザイン侯爵令嬢。

 攻略キャラその④の騎士団長次男デイビッド・ロータスは、完璧主義の婚約者が自分にまで完璧を求めることに辟易していた。

 婿入り予定のため強く出られず、我慢を重ねるそんな鬱屈とした日々を忘れさせてくれたのがヒロインで、デイビッドルートの悪役令嬢は婚約者のカールトン伯爵令嬢。

 攻略キャラその⑤は国一番の商会長長男ラルフ。

 ラルフルートの悪役令嬢は幼なじみのソフィーで、虐めこそないが、ラルフとヒロインが二人きりになると必ず邪魔しに来る。

 ちなみに逆ハー成立後に隠しキャラが登場するらしいという噂を耳にしたことはあったが、確認する前にどうやら私は過労死してしまったらしいので、それについては不明である。

 そしてヒロインのデフォルト名は残念ながら覚えていないのだけれど、ピンクブロンドの髪にアクアブルーの瞳の美少女だった。

 あら、私と一緒ね! なんて思ったのも束の間。

 ……この国の名前はシュネーヘル王国で、第二王子様のお名前がメイン攻略キャラと同じだという事に気付いてしまった。

 彼は先日、どこぞの侯爵令嬢と婚約したとかなんとか、お父様とお母様が朝食の席で話していたような……?

 え、ホント待って。これ、マジでヒロイン私じゃない?

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