第二話 虚
第一話 完璧な朝
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目を覚ますと、そこは薄暗い廃墟だった。
朽ち果てたビル群が乱立し、ガラスの破片や錆びついた鉄骨が散乱している。空は鉛色に曇り、どこかから機械が軋むような音が響いていた。
「……ここは、どこだ?」
レイは立ち上がり、周囲を見渡した。空気は冷たく、湿った土の匂いが鼻をつく。足元には錆びた看板が倒れている。そこにはかすれた赤い文字で、こう書かれていた。
『65』
「65……?」
その数字を目にした瞬間、強烈な耳鳴りが襲いかかる。頭が割れそうな痛みに思わず膝をついた。周囲の景色が歪み始め、視界が闇に覆われていく――。
目を覚ましたとき、レイは自分の部屋のベッドにいた。
窓からは柔らかな朝日が差し込み、時計は午前6時を指している。
「……なんだったんだ、今の。」
息が荒い。額に手を当てると冷や汗が滲んでいた。夢にしてはあまりにも現実感が強すぎる。
机の上には父親からのメモが置かれている。
「先生から連絡があった。学校で倒れたって。心配だから今日は家で休みなさい。」
レイはメモを見つめながら、前日のことを思い出そうとする。だが、記憶は途切れ途切れで、学校で倒れた後のことはまったく思い出せなかった。
「……学校で倒れたはずなのに、どうやって家に戻った?」
その疑問が頭を離れない。
レイはふと窓の外を見た。澄み切った青空、規則正しく流れる車、人々の整然とした動き――完璧すぎるほど整った日常。
だが、その完璧さが妙に不自然に感じられる。
特に、隣のビルの広告看板が一瞬だけ「65」に変わったかと思うと、すぐに元の状態に戻った。
「また……65?」
胸の中に重くのしかかるような違和感。その数字は一体何を意味しているのか。
その日の夕方、休みをもらったはずのレイのもとにトモヤが訪ねてきた。
「お前、大丈夫か?急に学校で倒れたから何かあったのかと思ってさ。」
トモヤは心配そうに話しかけるが、レイはどう説明すればいいのか分からなかった。ただ、夢の中で見た「65」という数字のことが頭を離れない。
「トモヤ……お前、“65”って数字、見たことないか?」
「65?」トモヤは首を傾げる。「何だよそれ。宝くじの番号か?」
冗談めかしたトモヤの言葉に、レイは曖昧に笑って話題を逸らした。
トモヤが帰った夜、レイは机に向かい、学校用の端末を起動した。そのとき、突然画面が暗転し、赤い文字が浮かび上がる。
「システムエラー検知:コード65」
「……またか…」
さらに、端末のスピーカーからかすかな声が聞こえてきた。
「目を覚ませ……」
声は消え、画面は通常の状態に戻った。しかし、レイの中で「65」という数字がただの偶然ではないことは確信に変わりつつあった。
「これは……何かの警告なのか?」
不安と興奮が入り混じる中、レイは眠りについた。
次回予告 真実への扉