0099・合成
昼食後、ログアウトして雑事を熟して昼食を食べたらログイン。今度は<屍人の森>をウロウロしつつ素材をゲットしていく。石と木だけだが、後の薬草や<澱み草>もキッチリと手に入れていき、師匠の家に戻ってスケルトン・クラフターに渡す。
後はソファーの部屋で物作りをしていくんだけど、ラスティアは部屋に寝に行った。まだ寝足りなかったんだろう。僕は格闘武器をメインに作っていくのだが、その理由は切実に<闘士>の職業の人達が欲しがっているからだ。
<木工士>も作ってはいるようだが、そもそも木だけではそこまでの武器にならない。そして青銅製は作れても高い。なので丁度良い攻撃力や破壊力、それに耐久や値段なのは石と木を組み合わせた物のようだ。
僕は自分で作って自分で使うので、そこまで値段なんかを気にしてなかったけど、購入して使う人にとっては当然重要な部分となる。ま、僕としては安値でも売れてくれたらそれで良い訳で、特に作る事にどうこうとは思わない。強いて言えば、早く他の錬金術師が上達してほしいくらいだ。
僕1人で作れる量には限度があるので、鬱陶しい書き込みを回避する為にも早く上達してもらいたい。そもそも自分で作って壊して作る、それが一番上手くなる近道じゃないかとも思う。とにかくお金儲けと物作りを一緒にやるっていうのが時間的には早いと思う。
とはいえ、誰も彼も近くに森がある訳じゃないだろうし、木が無ければ難しいだろうなあ。プレイヤーマーケットで木を買うにしたって、作る物によっては……というか大半の物じゃ赤字だし、そうなると丸太を買うのも難しい。
世界観的には木の無い場所から始まったりはしないだろうけど、万が一もあるし、難しいところだ。おっと、物事を考えてないで真面目にやるのを忘れてた。しっかり丁寧に作らないと。慎重に繊細に魔力と魔法を使って………。
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<格闘> 石と木のトンファー 品質:10 レア度:1 耐久280
カタカナの「ト」のような形をした攻防一体の格闘武器。元は農具から派生したと言われるが、真偽の程は定かではない
攻撃力8 破壊力2
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<格闘> 石と木のヌンチャク 品質:10 レア度:1 耐久280
2本の棒の間を縄や鎖で繋げた武器。元は農具と言われるが、真偽の程は定かではない。暗器として使われてきた過去がある
攻撃力9 破壊力3
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おめでとうございます。全プレイヤーの中で初めて最高品質の物を作成しましたので、称号【最先端の職人】を獲得しました
おめでとうございます。全プレイヤーの中で初めて錬金術で最高品質の物を作成しましたので、称号【賢者の意思】を獲得しました
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賢者の石ならぬ【賢者の意思】ねえ。今回手に入った称号も微妙に有用なものだった。
【最先端の職人】は作成した物の品質が良くなりやすいという称号で、これからの事を考えると地味にありがたいものだ。ただしこういうのは大した効果がないものが多い。
【賢者の意思】は錬金術に関してのみ、消費MPが軽減される効果だった。こちらもこれからの事を考えるとありがたいが、大した効果はないだろう。多少でも効果があるだけ有利だと納得しよう。
それからも物作りを続け、色々な物を作ってはプレイヤーマーケットに流す。夕方になったので切り上げようと思ったら、ギリギリになってレベルが上がった。
やはり【昏睡眠】を使っているからか回転率が高くなってる? もしくは銅と鉄の効果かも。難しい物に挑戦した方がスキルレベルの上がりは良いみたいだ。
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サブ職業:錬金術・下級のレベルが上がりました
新たな錬金術スキル【合成】を習得しました
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【合成】……ああ、想像した通りだ。これで青銅が作れるようになったけど、まずは品質を上げるのが先か。せっかく銅と錫を【合成】できるようになったのに、肝心の銅や錫の品質が低いんじゃねー。
明日からも錬金術のレベル上げに勤しもう。それじゃファルに頼んで料理の手伝いに行ってもらい、僕は完全に回復するまで【昏睡眠】で寝てようかな。せっかくならスキルレベルを上げておかないと損だからね。
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2000年 8月23日 水曜日 AM8:31
今日はちょっと遅れたけど、今からログインだ。ソファーから起き上がる前にギンを横にどけ、プレイヤーマーケットの売り上げを木箱に入れる。いつもと変わらぬギンを抱き上げ、僕はソファーに戻ってギンと遊ぶのだった。
昨日プレイヤーマーケットに売り出しておいたのは全て売れていたが、今日も売ってほしいという書き込みがあった。どうこうしろと指図するものではなく、誰かが格闘武器を買い占めたようで、その所為で買えなかったという書き込みだ。
誰が買ったかの履歴を見られるので確認したら、出した物の大半を買っている奴が居た。なのでコイツをブラックリストに送って終了。他にもちょこちょこ買い占めていると思われる奴をブラックリストに送りつつ、僕は食堂に移動する。
「今日もコトブキは錬金術か? ラスティアにゴーストを預けておるので自力で頑張っておるようだが、良い事ぞ。ゴーストの助力があると腕が磨かれんからな。腕を磨く際はその尻尾も外しておけ」
「あっ、はい。分かりました」
成る程、能力値のプラスがあってもスキルは伸びにくくなるのか。予想外だったが、自分の力だけでやった方が確かに訓練にはなるだろう。となると着けない方が良いとなるんだが……困った。着ける者がいない。
「コトブキ。誰も着けないなら貸して、その尻尾。私まだ細工で上手くいかない事が多いからさ、それ着けて成功感覚を身につけたい」
「うむうむ、それも良い事じゃ。成功の感覚を覚え、それを無い状態でも出来るようにする。それも修行の方法の1つじゃからの」
「今日は暇だから、あたしもコトブキに付き合うわ。昨日みたいにお酒ばっかり飲んでてもねー。シャルロットは巨人族だからか飲んでも問題無いんでしょうけど、私はキツいのよ。ペース合わせるの」
まあ、向こうとは体の大きさが違うから無理だろうと思うよ。そんな話をしつつの朝食も終え、シャルロットさんの所に行ってユウヤと合流。昨日と同じように採掘しつつの世間話。
昨日はユウヤも結局上手くいかなかったようだ。青銅は3~4、鉄は2~3。未だにこの状況を抜け出せないらしく、昨日も四苦八苦していた。鍛冶師という自分の指先を動かして物作りをするのは大変だろうなぁ。
僕の場合は【魔力操作】の応用だから、そこまで難しくはないというか、魔法を使っていても錬金術を使っていても鍛えられる。そういう意味では有利なんだとは思う。もちろんユウヤには言わないけど。
3ヶ所で素材を掘り、終わったのでシャルロットさんの家へ。途中に出てきたクソヤギは、ラスティアが【ダークヒール】で混乱させていた。勝手に崖から転落していき、昨日と同じでユウヤは大爆笑。僕達は温い気持ちでスルーしてあげた。
鍛冶場に入り、ユウヤは炉で鉱石を溶かしつつ、僕は昨日と同じく横で【分離】。銅と錫と鉄を手に入れた。多少の炭素を含んでるらしいけど、鋼っていうか鋼鉄とは表記されないんだよねえ……。
木炭を借りて炭素を【合成】してみたら上手くいかないかな?。




