0098・鋼と鉄
「確かに五感を奪って暗い部屋に閉じ込めるっていう拷問があるのは聞いた事あるよ? 感覚剥奪とか感覚遮断って言うんだったと思うけど、それによって狂ってしまうって奴でしょ。確か1日か2日で発狂するんだっけ?」
「そういうのを何かの漫画で見たことあるけど、ガチで発狂するかは流石に俺も知らねーよ。ただ、それが分かってて使うってどうなんだ? 流石に危険だと思わなかったのか?」
「言いたい事は分かるんだけど、最初の時に掲示板が使えるのは分かったから、そこまでじゃなかったかなあ。感覚が無くなっても思考だけで使えるものはそのまま使えるし」
「ああ、それで問題無いのか。感覚剥奪って基準となるものが無くなるから狂うんであって、掲示板なんかが使えれば自分を認識する事は出来るだろう。だったら……ってなるか?」
「ぜんぜん? どう考えてもおかしい。というより五感が無くなっても冷静に考えて掲示板とか探るっていう思考がまずおかしい。高速で回復出来るスキルだから敢えて拷問みたいにしてるんでしょうけど、あっさり順応してる時点でおかしいからね?」
「そんな事を言われてもねえ? 何か問題がある訳じゃないし……ただこのスキル、レベルが低いからか通常とあまり変わらない気はする。何というか、普通に休んでいる時と同じぐらいにしか回復してないんじゃないかな?」
「何だそれ? もしかしてセルフ拷問用スキル?」
「ヤなスキルだねぇ、それ。そうじゃなくて、レベルが上がると回復時間や回復量が上がるみたいだから、育てないと駄目なタイプのスキルだと思う」
「あー、育てたら化けるけど、育てるまでが大変なスキルね? ……そんなのが初クリア者特典っていうのも、運営は何を考えているのかしら。何というか、特典じゃなくて単なる罰ゲームよね。それ」
「まあ、今はそうかな? そもそも五感が剥奪されるうえ、全回復しないと起きられないっていうか解除されないんだよ。おかげで色々考えて、問題無いのを確認してから使わなきゃいけない。考えを纏めるのには都合が良いけどね、集中しやすいから。っと。またMP足りなかったか」
僕は再び【昏睡眠】を使うべく横になったけど、トモエとユウヤには呆れられた。ま、呆れられようがどうしようが、有用そうなので鍛える事に変わりはないんだけどね。
昏睡中に色々な掲示板を見て回って気付いたんだけど、一定数の人に格闘武器の需要があるみたい。だから格闘武器も作って流そうと思う。あとプレイヤーマーケットも操作出来るから、僕の作った物を転売しているヤツを見つけてブラックリストに入れたりしてる。
何で無意味な事をするのか知らないけど、使わないなら買わなきゃいいのに。そもそも何の為に転売なんかしてるんだろう? 自分で値段設定出来ないんだから高値で売る事もできないのにね。嫌がらせ目的なんだとは思うけど、どうなんだろ?。
注目されればされる程、妙な嫉妬とか受けるのはいつもの事だ。強い人とか先へ進んでいる人に嫉妬して嫌がらせする奴って本当に多い。昔から結構な嫌がらせをされてきたからさ、よく分かるんだよ。
よし、そろそろ回復するから、起きたら金属作りを終わらせて物作りを始めよう。
―――――――――――――――
サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました
―――――――――――――――
ちょうど金属にし終わったらレベルが上がったな。銅と錫だけど、錫の方が少ないから青銅はお預けにして、まずは銅で鍋を作ろう。料理人も結構居るし、彼らになら売れるだろう。【変形】を使いつつ僕は色々作っていく。
―――――――――――――――
<道具> 銅鍋 品質:4 レア度:1 耐久80
銅製の鍋。熱伝導率が良いと言われるが、それ以前に柔らかいので注意。それと焦がさないように火加減にも注意しよう。
―――――――――――――――
―――――――――――――――
<道具> 銅のフライパン 品質:4 レア度:1 耐久80
銅製のフライパン。熱伝導率が良いと言われるが、それ以前に柔らかいので注意。振ってぶつけると歪む事もあるので注意されたし
―――――――――――――――
うーん……品質が悪い。そして品質が悪いから耐久も低い。プレイヤーマーケットには流すけど、これは売れないだろうな。まあどんどん作っていこう。錫を混ぜて青銅を作る事は出来ないけど、鉄はあるからそっちの練習は出来る。
鉄は武具に使うから、銅は普通に料理道具で問題ないね。他に銅で作る物ってあったかな? ……銅線? いやいや、そんな物を作って何の役に立つのさ。普通に料理道具だけ作ってればいいや。
………よし、終了。次は鉄だけど、これは何の武器にしよう。……まずはセナの武器かな? ファルは鉄のメイス持ってるし。それと焼き入れと焼き戻しだけど、僕には分からないのでユウヤに丸投げだ。
―――――――――――――――
<格闘> 鉄のトンファー 品質:3 レア度:1 耐久230
カタカナの「ト」のような形をした攻防一体の格闘武器。元は農具から派生したと言われるが、真偽の程は定かではない
攻撃力10 破壊力2
―――――――――――――――
―――――――――――――――
<格闘> 鉄のヌンチャク 品質:3 レア度:1 耐久230
2本の棒の間を縄や鎖で繋げた武器。元は農具と言われるが、真偽の程は定かではない。暗器として使われてきた過去がある
攻撃力10 破壊力3
―――――――――――――――
んー……品質が悪い所為で耐久が低い。それでも攻撃力と破壊力が高いので鉄製を持たせるけど、出来れば早急に品質を改善したいなー。それでも品質1よりはマシだけどさ。後はそれ以外に適当に作ってレベル上げだな。
こっちも鍋とかフライパンとか包丁でお茶を濁そう。流石にこの品質じゃ、プレイヤーマーケットに流す気にもならない。適当に簡単な物から作って素材に慣れていこう。
―――――――――――――――
サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました。
―――――――――――――――
それはいいけど素材が終了だ。後は寝て回復したら、一旦師匠の家に戻って昼食だな。途中でトモエが鉄のチェーンを頼んできたから作ったけど、やっぱり品質が良くなかった。ユウヤでも鉄の品質は2~3ぐらいらしいし、僕が下手な訳ではないようだ。
焼き入れや焼き戻しでも練習になるらしく、ユウヤはむしろ鍛冶師のレベル上げの為に積極的にやってくれている。ちなみにユウヤいわく、僕が作った鉄は何故か微量に炭素が含まれているらしい。ゲームだからかな?。
鍛冶師が作る場合はちゃんと炉で鋼鉄をつくらないといけないらしく、鋼と鉄でちゃんと分かれてるんだって。鉄を作る場合にはしっかり鉄を作らなきゃいけないらしく、普通に作ると木炭の影響なのか、鋼鉄か失敗作のゴミになるそうだ。
一応この世界にも有刺鉄線があるらしく、それを作る時には鉄が要求されるらしい。有刺鉄線って風情が無いなー……と思ったけど、魔物の被害から身を守るにはそれぐらい必要かとも思い直す。
僕が鋼鉄で物作りをする場合は、ユウヤに鋼鉄を作ってもらって、それを武器に加工するしかない。なかなかに厄介だけど、錬金術師であって鍛冶師じゃないから仕方ないね。
よし、回復したから一旦戻って昼食だ。午後からは適当に石と木で物作りをして、プレイヤーマーケットに流すか。1日に一度しか素材の採取や採掘は出来ないから、こればっかりはしょうがない。
師匠の家に戻った僕はファルに料理を任せ、その間は休憩する。何故かちゃかりと食事は一緒にとるラスティア。どうも温泉に入った後、適当に寝てたらしい。温泉の中じゃなかったそうだけど、温泉で寝るのは危ないから気を付けなよ?。
まだ頭がフラフラしてるって事は、微妙に起きてないな。ま、放っとこう。




