0091・運営ダンジョン15階ボス戦
結構なモンスターがアナジゴクの穴に落ちて喰われたけど、どうも足だけで他はなかなか食べないらしい。なので足を食われた連中が身動きできなくなっているだけとも言える。僕達はそんな穴に落ちた連中を始末していき、その後はアナジゴクも殺していく。
アナジゴクがモンスターを殺すまではしなかったので、レベルが上がる個体はおそらく現れていないと思われる。仮にレベルアップしても進化しなければ強さに然したる違いは無いので問題無い。穴の中に魔法を撃ち込むだけで終わる。
稀に逃げ場の無い穴の中から出てくるが、そういう奴はファルかセナにボコボコにされて死ぬだけだ。それにしてもモグラ叩きの有様だなぁ。一面穴だらけの中、穴の中の奴を叩き潰して歩く。
他の魔物に見つかっても、そいつらも穴に落ちて苦しむだけ。安全にレベル上げが出来るのも事実だけど、運営は何を考えてこんな階層を作ったんだろうか? それとも落としたら駄目で、落ちるより早く倒す必要がある……とか?。
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種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・下級のレベルが上がりました
使い魔:ラスティアのレベルが上がりました
召喚モンスター:ファルのレベルが上がりました
召喚モンスター:セナのレベルが上がりました
召喚モンスター:ドースのレベルが上がりました
召喚モンスター:フォグのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
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皆でウロウロしているとレベルが上がったが、それほどウロウロしているのに階段が見つからない。少なくとも15階までは作られている筈なんだけど、何故か階段が見つからないな? ………まさか、穴の中に階段がある?。
ここの運営ならそういう事をやりかねないから困るんだよねー。1つ1つの穴をチェックするとか骨が折れる作業をしなきゃならないの? ………階段を探しつつ、穴の中も探すかー。
皆にも手伝ってもらい、穴の中にも注意して探してもらう。アナジゴクの居ない穴もあるので、階段を隠していても不思議じゃない。目を皿のようにして探していると「アッタ!!」というセナの声が聞こえた。
穴を避けて集まると、確かに穴の底の方に階段が見える。本当に面倒な作りにしてくれてるよ。そう思いつつ地上部分を壊し、階段を露出させる。やれやれ、これでようやく15階に下りられるね。
そう思い下りていくと、ボス扉があるので休憩。夕方も近い為、速攻で倒して帰る必要がある。どうせ最後の階なので派手に戦う事に決めた。ここのボスを倒したら後は帰るだけなんだし。
十分に休憩をとったら中に入り、扉が閉まると魔法陣が輝いてボスが出てくる。大きな体躯のボスが出てきたんだが、取り巻きも出てきたのですぐに僕とラスティアが前に出る。
「コトブキ、中央から出てきたのはオーガよ。棍棒持ちで体が大きいって事は少なくとも1度は進化してる。周りのオーガは普通の連中みたいだから早めに全滅させるわよ」
ラスティアが【ダークウェーブ】を連発しながらオーガの事を教えてくれた。僕も【ダークウェーブ】を使っているんだけど、威力が上がって消費量が減った感覚がある。今まで使っていたのが最低ランクだとすれば、今は少しだけマシになった感じ。
やはりスキルレベルが追いつく事に意味はあるようだ。おそらく正式に使い熟すにはスキルレベルを該当のレベルまで上げるしかないんだろう。今までも色々使い方を工夫してきたけど殆ど変わらなかったしね。よく出来たゲームだよ、本当。
僕とラスティアの【ダークウェーブ】の連打で取り巻きのオーガを倒す事は出来た。とはいえ丸太のような棍棒を持っているリーダー格のオーガはまだまだピンピンしてる。僕達の魔法が途切れたからか、ようやく動き始めた。
今まで棍棒を前に出して防御していたから、あの行動にも意味があったんだろう。貫通するんだけど、減衰はしてるのかな? ファルが前に出るのを止めて僕が前に出る。ファルはスケルトンなので、棍棒とは相性が悪い。
なので僕が前に出て注意を引こうとするんだけど、コイツ無関係に一番早く倒せそうなファルに向かっていった。ボスの挙動が今までのボスと違う為、一瞬焦ったが、冷静になって戦う事を思い出す。
ファルには相手の攻撃に集中し、上手く受け流すように声を掛ける。フォグにはファルがダメージを受けたら【ダークヒール】を頼み、2人は防御役に回す事にした。2人が頑張ってくれているうちに、何としても倒してしまわないと。
とにかく相手の攻撃を止めなきゃいけない僕は、人体の急所の1つと言われる<弁慶の泣き所>を思いっきり棒で殴りつける。闘気の【身体強化】まで使って殴りつけたのに碌に効いていないらしい。オーガだから違うのか?。
それでも何度も殴りつけていると、鬱陶しいのか僕の方を攻撃してきた。どうもこのボス、挙動がバラバラだ。棍棒でなら早く倒せそうなファルを優先したり、その割には殴りつけている僕に手を出してきたりしている。
にも関わらず、他のメンバーには目もくれていない。僕とファルとそれ以外のメンバー。いったい何が違うんだ? ……戦闘を続けていると体が大きくなり、更に皮膚の赤色が増してきた。このボスはいったい何なんだろうか?。
もしかして……そう考えて周囲を探ると、何も無い所に魔力反応を発見した。僕はインベントリから石球を出し、【身体強化】を使って投げつけると「ドゴォッ!!」という音と共に何かに激突する。
更にもう1つ投げてぶつけると、戦っていたオーガが棍棒を落とし、シュルシュルと萎んでいく。どうやら見えていたオーガは風船のような物で出来ていたらしい。死んだ奴が姿を現すと、いわゆるグレムリンみたいな見た目の奴だった。
「<妖精>が操ってた玩具だったみたいね。どうりで妙に手応えが無いと思ったわ。耐久力の高さは神に貰った玩具だったからかしら? コトブキは神が作ったダンジョンだと言っていたし」
「まあ、そうなんだけど……さっきのヤツって<妖精>って言うんだね」
「そうよ。天使の星には<精霊>がいるけど、悪魔の星には<妖精>がいるわ。<精霊>も<妖精>も恐れられてたり叩き潰されたりしてるわね。さっきの悪戯妖精みたいなタイプは度が過ぎれば殺されてるし、笑える程度なら受け入れられるわ」
「まあ、度が過ぎると許されないのは当たり前だよ。っと、開いたから進もうか。もう夕方に差し掛かってるみたいだし」
それにしてもグレムリンみたいな見た目なのに、小悪魔じゃなくて<妖精>の区分なんだね。このゲームでは<悪魔>というのが特別な意味を持つからかな? それに<悪魔>って悪って感じじゃないし。
ラスティアも堕落がどうとかいうけど、別に良識が無い訳じゃない。単に寂しくてやらかしただけみたいだしね。天使の星のスレを読むと、向こうは秩序でガチガチみたいだけど、悪魔の星も緩い秩序は存在する。
天使の星と悪魔の星に分ける必要性を感じないんだけど、その辺りにゲームの目的があるのかな? まあ、まだ始まって一ヶ月も経ってないんだから、ゲームの目的を考察しても仕方ない。こんな早くに出る訳ないし、どうせ止められてる筈。
ストーリー的なものは、まだ進まない段階だろう。進むとしたらサービスを開始して一ヶ月経ってからだろうね。それまでは準備段階だと思う。




