0082・肉の部位
15階のボス扉前で休憩しつつ、皆に説明をしておく。それはオーク玉を投げる事に関してだ。今回トモエ達が居ない為、前回と比べれば戦力不足である事。なので15階のボスと正面から戦って勝てるか分からない事。
そういった事を説明すると、渋々ながら使用に許可が出た。ただし使っていいのは勝てない場合であり、それまでは普通に戦うとの事。僕も好き好んで使いたい訳でもないので了承。誰かが死ぬよりはマシ、その形で使用する事が決まった。
正しくは好き好んで使いたい訳じゃなく、使って早く無くしたいというのが正直な気持ちだ。流石にレアアイテムっぽいので使わずに捨てるのも嫌だし、売るのも憚られる。となると使って無くすしかない訳で。
とりあえず出てくる魔物は分かっているのでファルを先頭にし、ボスが出てきたら僕が前に飛び出して【ダークウェーブ】を連発する。何故かラスティアも加わるらしいが、余程オーク玉が嫌なんだなぁ。気持ちはよく分かるけど。
とにかく範囲魔法を連発し、それが終わったら各個撃破していく流れとなる。それを確認し終わったので、いざボス戦へ。
ボス部屋の中に入り、魔法陣が輝いて魔物がせり上がってくる。そして魔法陣の輝きが消えた瞬間、【ダークウェーブ】を連発する僕とラスティア。双頭の犬10頭も流石に連続で魔法を受けているので動けないらしく、このチャンスを逃さず連打する。
MPが無くなる前にまさかの全頭死亡という結果になり、あっさりとボス戦は終わった。何とも言えないものの、4分の3ほどはMPを消費したので、やはり相当強かったのだとは思う。悲しいぐらいに一方的にやられてたけど。
とりあえずフィーゴに16階の魔法陣を登録させ、僕達は魔法陣で脱出、ダンジョン街へと戻った。まずは雑貨屋に行って革を買う。細工なり鍛冶に使うので革そのものは売っている。僕はそれを1枚買い、再びダンジョンへ。
仲間達は理解できていないが、僕達はそのまま16階へと移動した。16階で○たぽた焼きをラスティアに渡し、僕はセナの剣帯を改造していく。やったのは差し込む場所を沢山作っただけで、セナに剣帯を返す。
その後、その差込口に合うように石球を石の杭に変えていく。簡単に言うと棒手裏剣であり、セナ用の投擲道具だ。僕はインベントリがあるからいいが、セナには無い。だから最初から投擲武器を用意しておく必要があるんだ。
その為の剣帯改造と石の棒手裏剣となる。分かった?。
「ボリボリ、成る程ねえ……急に小さい杭なんか作り出したから、頭がおかしくなったのかと思ったわよ。パリッ、棒手裏剣っていうの? ボリボリ、なかなか面白い武器だと思うけど、パリッ、どれぐらい役に立つのかしら?」
「僕達の元の世界では昔使われていたっていうから、実績はあるんじゃないかな。十字手裏剣が一番威力が高いんだっけ? そんな記事を読んだような気がするし。結構な深さまで突き刺さるらしいよ」
「へー……ボリボリ」
まあ、ラスティアは放っておこう。ゆっくりしている間、【憑依】を解除してフォグとフィーゴに【浄化魔法】と【闇魔法】を教える。すると2人ともあっさり習得した。アンデッドでも【浄化魔法】が問題なく使えるんだね?。
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召喚モンスター:フォグが【闇魔法】を習得しました
召喚モンスター:フォグが【浄化魔法】を習得しました
召喚モンスター:フィーゴが【闇魔法】を習得しました
召喚モンスター:フィーゴが【浄化魔法】を習得しました
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さてそろそろと思った時、何故か目の前にウィンドウが出た。
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召喚モンスター:ドースが【風魔法】を習得しました
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どうやらラスティアがドースに【風魔法】を教えていたらしい。ドースも魔法が使いたかったのかと思ったが、少し違うようだ。色々話してみて分かったが、ドースは更に速く走る方法が知りたかっただけだった。そこでラスティアは【風魔法】を薦めたみたい。
まあ踏みつけ以外の手段が手に入ったのは悪い事じゃないし、ドースなら上手く魔法を使ってくれるだろう。気性は荒いけど敵を倒す為には冷静になれるから、セナよりは安心していられる。
休憩も終わりにして、僕達は昨日ぶりの荒野に進む。発見したシャープホーンバッファローに対し、石球を投げて誘き寄せる。昨日と同じく【スモールピット】で転倒させたら、後は角を折りつつ滅多打ちにして倒す。
セナは渡しておいた鉄の短剣を右手に持ち、左手はトンファーでボコボコだ。ファルも角が折れたら剣に切り替えてるし、上手く武器を変えつつ戦えている。魔法は上手く当てて着実にダメージを与えていき撃破。意外に早く終わった。
幸先の良いスタートをきりつつ、調子に乗らずしっかりと相手を倒していく。ウロウロしつつ魔物を倒し素材をゲットしていくも、なかなか階段が見つからない。
もしかしたらここのダンジョンはこれで終わりなのか、それとも今はここまでしか解禁されていないのかもしれない。唯でさえ僕はレベルを独走しているらしいし、あまり急いでレベルばかり上げても仕方ないか。
とりあえずここで角を手に入れれば武器の修理や作成は容易いんだし、ここで十分と言えば十分ではある。もしくは何かの魔物を一定数倒すとか、そういう事をしないと階段が現れないギミックとかもありそう。
まずは魔物を倒して角を稼ごう。それと要らないアイテムはプレイヤーマーケットに流しておく。今も要らない物がそれなりに沢山あるし、何といっても肉の部位が多いんだ。こんなに要らないというぐらい沢山種類がある。
おそらくはファルが【解体】スキルを持ってるからだとは思うけど、それにしたってねえ……。肩、ロース、サーロイン、ヒレ、ランプ、バラ、すね、タン、ハツ、ハラミ、ハチノス、センマイ、ギアラ、レバー。どんだけあるのさ?。
聞いた事の無い部位とかあるし、何より専門家でもプロでもないんだから、何処のお肉をどうすればいいかとか何て知らないよ。それでも美味しそうな部分は頑張って持って帰るけどね。
聞いた事のあるロースとかサーロインとかヒレにランプは持って帰るけど、後は全部プレイヤーマーケットに流した。タンはともかく、ギアラという聞いた事もない部位が結構高値だったね。内臓らしいけど、儲かるなら何でもいいや。
それなりに角も集まったので帰る事にし、16階の魔法陣まで戻る。さっさと脱出しダンジョン街を出ると、またもや盗賊に襲われた。襲われたんだけど、様子が変だな?。
「おい、居たぞ! あいつがイベントの時に活躍してたヤツだ!! ここから始めれば必ず会えると思ってたぜ。調子に乗ってるヤツを叩き潰すのが<羅門会>だからなぁ!!」
「<羅門会>? ………ふっ!!」
僕はこいつらのグループ名を聞いた途端、オーク玉を投げつけて悪臭を撒き散らす。あまりの悪臭に耐えられなくなったんだろう、5人は「ヴォエェェー!!」と言ってえずいている。
当然そんなチャンスを逃す事も無く、僕らは近付く事なく魔法を連発。セナは棒手裏剣を投げて止めを刺した。気絶する事も無かったけど、猛烈に臭かったなぁ。とはいえ、しょうがないんだ。諦めてほしい。
全員消えていったけど、多少のお金は手に入った。高がそれだけとも言えるんだけどね。連中、絶対に大した金も持たずにPKしてるな。相変わらず碌でもない連中だ。
「何か理由があったみたいだから、それが納得できる理由だったのなら怒らないであげる。さあ、話してみなさい」
どうやら何も言わずにオーク玉を投げた事で、猛烈に怒っているらしい。僕は全員に【クリーン】を使いつつ、皆に話して聞かせる。<羅門会>の連中の事を。




