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0070・首刈り兎の尻尾




 2000年 8月12日 土曜日 AM8:29



 今日もログインするんだけど、行く場所にちょっと迷っている。それはダンジョンの15階まで行ってもおそらくボスが倒せないであろう事だ。それと、武具の破損も目立ってきた。鎧などはそこまででもないとはいえ、靴の耐久力の減りが大きい。


 おそらくは鋲を酷使し過ぎなんだろうと思う、スパイクも。もちろんその分に比例して威力も高いのだから、仕方がない部分も大きい。とりあえずゼット町に行って、武具を修理してもらおうっと。


 ログインして朝食をいただいた僕は、ラスティアを連れて<屍人の森>の浅層を歩く。木を伐り、石を拾っては武器の修復を行いながら、ダンジョンの15階の話をする。流石にラスティアは何を聞いているのかすぐに理解してくれた。



 「確かにそろそろ私達の実力じゃ厳しいかもね。かつての私なら鼻歌でも歌いながら片手間で倒せるでしょうけど、流石に今の弱さじゃねえ……。とはいえ、今以上の実力になるのも一足飛びには難しいし」


 「少しずつ実力を磨いていくしかないと言われればそれまでなんだけどね。でも何処でレベル上げをするのかと考えると難しいんだよね。<屍人の森>の深層は無理だし、ダンジョンの15層は無理そうだとなると……」


 「確かに近場に丁度いい場所がないわねえ。あの山も大した魔物がいる訳でもないし、仮に他の国に行くにしても、何がしかの情報がないと動くに動けないわね。今はアンデッドを倒して地道にかしら?」


 「それもあるけど、今日は武具の修理を終えたら物作りの日かな? 錬金術師としての修行は、ここ最近してないんだよね。ダンジョンに掛かりっきりだった所為でもあるんだけど」



 そう言いつつ木と石を集めたら、師匠の家に戻りお金を持ってゼット町へ。着いたら鍛冶師の店に行き、全員の防具を修理に出す。皆はちょこちょこ遊んでいたりして暇を潰し、ラスティアには適当なお菓子を渡した。今日は塩煎餅だ。


 ダラダラしている横で石と木のモーニングスターを作り、それをプレイヤーマーケットに流す。そんな事を繰り返しながら腕を磨いていく。



 ―――――――――――――――


 サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました


 ―――――――――――――――



 それなりに作っていると、近くで見ている人が居た。何かと思ったら同じ錬金術師の先輩で、錬金術師・中級のNPCだった。NPCをNPC扱いすると好感度が下がるゲームなどがあるので、きちんとこの世界の住人扱いする。


 向こうの話を聞くと、どうやら同じ様な物を作って売ってもいいかという事だった。何故そんな事をと思ったが、どうやらモーニングスターのような武器はゼット町には無いらしい。更には、僕のように石と木で作ろうとした者も居ないようだ。


 ゼット町の狩人も、これで多少はマシな武器を持てるだろうというのと、ダンジョン街からこちらに買いに来る客も居るかもしれないので売り出したいとの事だった。僕はOKを出し、好きにしてもらう事にする。


 仮にお金儲けの為に適当な奇麗事を言っているとしても、僕の悪行度が上がる訳でもないので問題無い。それにこの錬金術師の人は、前に無理を言ってトンファーを作ってもらった人なので、お礼の意味も籠めてだ。


 防具の修理が終わったので受け取って装備し、お金を払ってゼット町を出る。外で石を拾いつつ戻っていると、またもや喧嘩をしているネズミとウサギを見た。まあ、放っておくのが一番かと思いスルーしていると、ネズミを倒したウサギが一瞬光る。


 何だか嫌な予感がした僕は、ウサギを素早く鑑定した。



 ―――――――――――――――


 <首※り※> 魔物 Lv1


 非※に危険な※サギ※魔※。噛※付き※撃には※注※。※な※れ※首※刈ら※る


 ―――――――――――――――



 あれ? 鑑定が中途半端に効いてない? ヤバい魔物なのか、それとも単に【総合鑑定】の問題なのか。うん? あのウサギこっちに気付いて……! くっ、速い! 間に合え!!。



 「ギィッ!? ギュィィィィッ!!!!」


 「うわ、怖!? さっさと袋叩きにして倒すぞ!!」


 「カタ!」 「ボコボコ!」 「ブル!」 「クー!」 「これって……」



 ラスティアが何か言いかけていたが、そんな事は気にしていられない。【セイントバインド】で拘束しているんだけど、すぐにも外しそうなぐらい暴れている。なので【ダークバインド】も駆使し、フォグには【アースバインド】を使ってもらっている。


 何とか拘束を維持し、最後には倒す事が出来たのだが、思っている以上に粘られた。おそらくは進化したんだと思うが、幾らなんでも強さの桁が上がりすぎだと思う。……っていうか何か出たな?。



 ―――――――――――――――


 <アクセサリー> 首刈り兎の尻尾 品質:10 レア度:7 耐久220


 首刈り兎の尻尾がそのままアクセサリーとなった品。持っている者はとても大きな幸運に恵まれるという


 ―――――――――――――――



 「いやいや。魔物は鑑定出来なかったのに、アクセサリーはガッツリ鑑定できてるんだけど? あのウサギ<首刈り兎>っていう名前なの!? 間違いなく首を刈ってくるじゃん! 名前からもアピールしてるじゃん!!」


 「ああ、やっぱりね。あの色と風格、<首刈り兎>だと思った。それにしても野良魔物の進化に立ち会うって、運が良いのか悪いのか。そのうえ進化先が<首刈り兎>とか凄い確率よね。あれって相当レアな魔物よ? おまけにそんなレア魔物から<神の贈り物>とか、どうなってんのよ?」


 「知らないよ、そんなの。って、あ!!」



 <首刈り兎の尻尾>は何故かセナに取られ、身に着けられた。まあ、本人は喜んでいるみたいなので別にいいが、いきなり引っ手繰るのは止めてほしいよ。奪われたと思ってしまって、若干心臓に悪い。


 それはともかく帰り道を歩くのだが、ラスティアいわく、野良魔物の進化の瞬間というのは珍しいそうだ。そんなタイミングで出会う事も無いうえに、その進化先が<首刈り兎>だった事は更に珍しいとの事。


 そのうえ、その珍しい魔物から<神の贈り物>が落ちるなど、どれほどの低確率か計り知れないそうだ。運を全て使い果たしたと言われても仕方ない程の幸運らしい。


 実際、古い時代のオークションでは、<首刈り兎の尻尾>に500万デルという値がついたそうである。それぐらい貴重なアイテムなので、知っている者が居れば狙ってくる可能性は十二分にあるようだ。……それを手に入れるって幸運かな?。


 何だか不幸のアイテムな気がするが、とりあえず師匠の家に帰ろう。そう思い、少し早足で帰還した。


 その後は石と木で武器を作ったり、それをプレイヤーマーケットに流したり、木が足りなかったので浅層や中層に行ってゲットしてきたりしていた。僕とファル以外は訓練をさせて、ラスティアに足りないところを指摘してもらっている。


 僕は石と木の刀であったり、剣であったり、槍であったりを売り出し、それなりに購入者が出ている。所詮は石と木なので高値にはならないが、だからといって安くもない。第二陣ではなく、少し余裕が出てきた第一陣に売れているらしい。


 今回も馬鹿な書き込みをする奴がいるのでブラックリストに入れ、夕方になるまで休憩しつつ錬金術を使い続けた。


 ―――――――――――――――


 サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました


 ―――――――――――――――



 今日はここまでだが、素材が悪いのかレベルが上がり難くなってきたなー。


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首狩りうさぎヴォーパルバニーあるあるよな
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