0007・1日目の終わり
ポーン
―――――――――――――――
メイン職業:ネクロマンサー・見習いのレベルが上がりました
―――――――――――――――
「ふぅ……さっきので13匹目。途中でスケルトンが4体混じったから微妙だし、あの骨の犬の経験値が分からないから何とも言い辛いけど……とりあえずメインのレベルは上がったか」
レベル1から2だから、そこまで経験値は要らない筈だけど、多いか少ないかは微妙だなぁ。ベータの時より気持ち遅い気はするけど、誤差の範囲と言われればそんな気もする。それよりも上がった能力は……魔力か。
まあ、分からなくも無いけど、サブ職業でも上がったのは魔力だったんだよなー。このまま行くと魔力特化になりかねないのが怖い。魔力特化なんて使いにくくてしょうがないし、召喚系は召喚主が死ぬと終わりだからなぁ。耐久が欲しい。
まあ、今はレベル上げの方が先か。さっきから道を外れては道に戻るという事を繰り返しつつ、ザコ敵を倒してる。やはり武器があると違うね。師匠から貰った石と木の槍だけど、こんな簡素な武器でここまで違うとは……。
実際、槍を手に入れてから凄くゾンビが倒しやすくなった。逆にスケルトンはスカスカだからか、ファルの持つ棍棒の方が簡単に倒せる。やはり重量系武器は骨に強い。弱点なんだろう、物凄く簡単に勝っている。放っておいて良いぐらいだ。
「おっと、ゾンビとスケルトンか。ファルはスケルトンを頼む、僕はゾンビを倒すから」
「カタ!」
盾と棍棒を構えて「任せろ!」と言わんばかりの雰囲気を感じる。これがゾンビだと苦戦するので任せられない。体に受けず盾で守り切れればいいんだが、倒されると地面でダメージを受けるんだよ。なのでスケルトンにとって転倒は宜しくない。
だから僕がゾンビと戦うんだけど、僕にとってゾンビはカモだ。何故なら。
「ハァッ!! よし、左足の切断成功。師匠の槍が凄いのか、それともゾンビの体が脆いのかは知らないけど、足さえ潰したらこっちのものなんだよねー」
足を切断し、バックステップすれば倒れてくるゾンビの回避完了。後は頭をザクザク刺せば簡単にゾンビは終了です。これで速く動くゾンビとか出てきたら困るけど、この程度なら楽勝「ポーン」なザコでしかない。
―――――――――――――――
種族レベルが上がりました
召喚モンスター:ファルのレベルが上がりました
―――――――――――――――
おっと、ようやく種族レベルが上がった。それにしてもファルの能力というかステータスが全く表示されない。持っているスキルは表示されるし、レベルも表示されるんだけど、何故か見たい能力値が全くだ。
もしかして何がしかのスキルが要るんだろうか? ベータ版のサモナーでは能力値の確認は出来たのに……。まあ、どのみち召喚モンスターの能力値を弄る事は出来ないから、ある意味では見てもしょうがないんだけどね。
さて、種族レベルが上がった事で増加させられる能力値は2つ。2ポイントじゃなくて2つなんだよ。2つの能力を1ポイントと決まっていて、2ポイントつぎ込む事は出来ない仕様になっている。おそらく極振りを禁止する為だろう。
あんなの余程でないと賑やかしになるだけだしね。無駄な事をするなと言いたいんだろう。もしくは極振り勢にゲームバランスをメチャクチャにされたくないか。ああいうのを見ると僕は萎えるタイプだから、この仕様はありがたい。
さて……何に振るかな? ………よし、意志と感覚に振ろう。何というか、魔力の制御が思っているよりも重要な感じなんだ。それに必要なのが意志と感覚なんじゃないかと思う。もしくは器用。とはいえ、この辺りは上げるから気にしなくていいだろう。
考察は止めて再び魔物を探すか。今はレベルを上げる事だけを考えるのと、敵を素早く倒す方法を考えないと。作業は出来る限り素早く効率良く。それがVRMMOの基本だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それから20体ほどザコを倒して進むと、目の前にウィンドウが現れた。
―――――――――――――――
ここから先は屍人の森・中層となります
種族レベルと職業レベルが低すぎる為、高確率で死亡します。それでも進みますか?
―――――――――――――――
「まさかレベルが低いから出直せと言われるとは……。中盤なら引き返させる為の罠って思うけど、ゲーム始めて1日も経ってないからな。どう考えても罠じゃない。流石に危険すぎるし、帰ろう」
僕は道の先に背を向けて来た方向に歩く。ゲーマーなのに調べないのかって? 今よりも強い所なんて、調べる間もなく殺される可能性が高い。そもそもアンデッド特攻とか持ってないんだから勝てる筈もないしね。
僕は基本的に最初の方は無駄な事などしない。無駄な事をするのは余裕が出てきてからで、余裕も何も無い序盤にやる事じゃないと思ってる。シズならやるだろうけど、僕はしない。
おっと、ゾンビ……? ゾンビ犬が出てきた。こいつは初めてだな。とはいえ、スケルトン犬と変わりなさそうだけど。
噛み付くタイミングを窺ってるなー……ふっ!!。
「ギャウン!?」
「よし、ファル! 殴れ! ボコれ!」
「カタ!!」
ファルに噛み付こうとジャンプしたゾンビ犬。それが空中に居る際に、横から槍で思いっきり突いてやった。どうも強制キャンセルになったらしく動けないみたいなので、その間にフルボッコにして倒す。
「ギャ!!」
「よっし、勝った! またもやノーダメだ」
「カタ!」
完全勝利と言っても差し支えないだろう。屍人の森の魔物はハメ殺しが可能らしい。こういうのを探すのもゲームの醍醐味なんだよね。とりあえず楽に勝てる方法も見つけたので、もうちょっとこの辺りの魔物を倒そう。
犬はゾンビやスケルトンより経験値が多そうなんだ。ノーダメで倒せる可能性高いし、魔石を稼いでおかないと買い物が出来ない。今はお金稼ぎも兼ねて戦いまくる時だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―――――――――――――――
種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・見習いのレベルが上がりました
召喚モンスター:ファルのレベルが上がりました
―――――――――――――――
「おっ、帰ってきたようじゃのう。随分と長い時間食事をせんとおったが大丈夫か、お主? 作らせてあった食事にも手をつけておらんし、食べておけ。お主は集中すると忘れるタイプみたいじゃからな」
「あ、はい。ありがとうございます」
そもそも食事が作ってあったなんて聞いてないし、たしかに空腹ゲージがヤバい。それに渇水ゲージもヤバいから食事をしないと……っていうか、そんな事も忘れて戦闘したっけ? ……空腹と渇水の警告がオフになってる!!。
くそう、ベータの時は初期からオンだったじゃないか! コレ絶対にベータプレイヤーを狙い撃ちにしてるだろ! 騙されたけど、とりあえずオンにしとこう。どうりで気付かなかった筈だよ、まったく。
僕は師匠に連れられて食事をした後、師匠の家の来客用ソファーでログアウトした。師匠は来客用のベッドを使っていいと言っていたけど、流石に住み込み弟子でそれは駄目だろうと思ったので断った。
今日1日でレベル3。速いか遅いかはイマイチ分からないけど、ゆっくりしていくゲームだし、こんなものだろう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「さて、今日のゲームも終わりだし、そろそろ洗濯物を入れないとマズいな。シズは大抵こういう事しないし」
僕はシズのやらない家事をやってから、夏休みの課題に取り組む。ある程度早めに終わらせておき、ゆっくりゲームを楽しみたいんだ。そういう性格だし。