0656・死王の欠片討伐戦 その2
僕達は<死王の欠片>との戦いを始めたが、前回のボスとは違うのか簡単にはオーラが削れてくれない。というか、オーラの量が回復しているように見える。どこまで回復するのか分からないけど、これは簡単には勝てそうもないな。
もしかしたら前回は聖人の人達がオーラも相当に削ってくれていたのかもしれない。まさかここまで厄介だとは思わなかったな。それはともかく、今は死のオーラを削るしかない。アレを減らさない事にはダメージも碌に与えられないし。
「【セイントクリア】はある程度は効いているみたいなんだけど、【セイントエリア】は効果が無いか殆ど効いてないね。むしろ【セイントバレット】の方がマシかもしれない。そう思えるくらい酷いよ」
「確かにね。周りのプレイヤーも【浄化魔法】を使ってくれてるけど、<死王の欠片>を見ると効いてるのかすら分からないわ。前に出た連中も今は下がってきたし」
「それはそうだよ。だって効いてないし、ボスに触れたら死んじゃうし、あんなの接近したら駄目でしょ。よく聖人の人達って近くで戦えてたよね? 前回あの人達って普通に接近戦してたもん」
「確かにそうでしたね。生命力を使って身を守る事が出来るとか、もしくはレベルが違うから? または何がしかの防ぐスキルを持っているのかもしれません。<死王の欠片>の力でも即死しない何かを」
「その可能性はありそうだけど、今は持ってないし無理をしても仕方ないって感じ。更にプロゲーマーも撤退したって事は、そういうスキルが覚えられた訳でも無いんだろうね。それにしても削れないなー」
そう愚痴を言っていると、後ろから【セイントバレット】が飛んでいった。おそらくオウカさんが飛ばしたのだろうが、これで【浄化魔法】は覚えられただろう。【薙刀術】に関しては攻撃できる相手がいないから無理だけど、後でユウヤが付き合ってくれるでしょ。
そのままボス戦が推移するかと思ってたんだけど、後ろから更に参戦してきたプレイヤーが次々に【浄化魔法】を撃ちこんでいく。その甲斐もあったのか、ゆっくりと<死王の欠片>が纏っているオーラが減ってきた。
「よっしゃー! あのオーラが減ってるぞ! アレを減らさなきゃダメージが与えられないんだから、頑張ってオーラを減らせー!!」
誰が大声を出したか分からないけど、その声の後から【浄化魔法】の飛ぶ数が増えた。僕達は飛んでくる黒い波動を切りつつも、ようやく増えた【浄化魔法】に安堵する。何故急に増えたのかと考えていると、第4陣は戦い方を知らないんじゃないかと気が付いた。
ゲーム内でも圧倒的に数が多いのが第4陣だ。誰かが大きな声で言ってくれないと、未だに第4陣は倒し方すら分からないままに参加しているだけになっていたね。っていうか僕達が前で黒い波動を切ってないと、バタバタ死んでた可能性もあるのか。厄介なボスだなぁ。
あの黒い波動を喰らった人達は状態異常に掛かってたし、確定ではないだろうけど波動を受けて状態異常だと、この人数じゃ相当の犠牲者が出てただろうね。そう考えると<死王の欠片>の欠片って強すぎない?。
定期的に波動を出してくるし、それで状態異常を喰らいまくったら戦線があっと言う間に崩壊しそうだけど……。運営は何を考えてるんだろう? 勝てないボス戦をさせたりはしないだろうし、もしかして追い詰められてからじゃないといけないギミックでもあるんだろうか?。
そんな事を考えつつ戦っていると、<死王の欠片>のオーラが随分と減ってきたので【回復魔法】を放つ。キャスティも【回復魔法】を放つものの、効いているのか効いていないのか分からない。オーラもまだ残ってるから効きが悪いのかな?。
そう思い、<死王の欠片>のオーラを削りきる事を優先する。ずっと回復し続ける訳でもないと思うんだけど、今は【回復魔法】がより通るようにしないとね。
十分に削りきったと思えたくらいで【回復魔法】に切り替えてダメージを与えていると、遂に第2段階になったのか、狂ったエルフがワラワラと溢れ出してきた。何処から出て来たのか知らないが、こちらに【木魔法】を連発してくるので聖結晶の短剣で切る。
ただし<死王の欠片>の近くや後ろからだけではなく、プレイヤーの真っ只中からも出てきたので、現在様々な場所がパニックになっている。僕らも前から来たのに対処しなきゃいけないので、残念ながら周りは気にしていられない。
エルフ相手に生命力を篭めた一撃を見舞い、順調に倒していく。ラスティアやキャスティにエウリティアさんやアルゼルも生命力を篭めてるね。そんな中、遂に生命力を篭められる人が現れた。何故かナツだけど、成功したらしい。
「やった! 【生命力操作】を手に入れたよ! これで倒しやすくなった!!」
「って事は、俺もメイスに持ち替えてこいつらに攻撃しなきゃな。ちょっとシグマに盾を任せて、俺も【生命力操作】を習得させてもらおう」
「習得していない人からどんどんと習得していこう。もしかしたらイベント補正で習得しやすくなってるかもしれないから、今の内に頑張っておこうか。ここで習得しておけば後が楽になるだろうからね」
「そうだね、ここで習得しておけば楽になると思うよ。私とコトブキ君は既に習得してるから、ラスティアやキャスティと一緒に黒い波動と【木魔法】を切ろう」
「そうね、そっちはお願い。こっちは何とかエルフを倒しておくから。それとオウカさんに【死気感知】を教えておかないと」
確かにオウカさんは始めたばかりだから碌にスキルも持ってないけど、何とかして【死気感知】は習得しておいてほしいところだ。後でとなると大変だし、習得出来る場所があるかも分からない。
僕は既に習得したナツと一緒に前で敵の攻撃をなるべく防ぐ。と言っても敵の攻撃を切って無くしていくだけだ。【浄化魔法】を使ってオーラを削りながら戦線を維持する。皆が習得する時間稼ぎが主な理由だけどね。
そうやってボスにダメージを与えず時間を稼いでいると、オウカさんに対して敵が攻撃してきたらしく、イルが焦った声を出した。
「あっ、マズい。姉さん何とか動いて」
「えっ? たあっ!!」
オウカさんの声と共に「ガンッ!」という音がしたので振り向いたら、オウカさんが薙刀で相手の顎をカチ上げていた。接近距離なのだが、上手く回して顎を直撃した石突。そこから下ろした薙刀の石突が、今度はエルフの体を押し倒した。
「はああああっ!!!」
そのエルフに対して上段から刃の方を振り下ろしたんだけど、何故か薙刀がちょっと白い。アレどう考えても生命力が篭もってるよね? 何故かは分からないけど、僕はすぐに【回復魔法】でオウカさんを回復する。生命力を篭めすぎて死ぬ恐れも無い訳じゃない。
直撃した薙刀は大してダメージを与えられなかったみたいだけど、横からキレたユウヤが白く輝くロングメイスを振り下ろした。
「てめぇ! 俺の女に何しようとしてやがる!!」
その一振りは「ドゴッ!」という音と共にエルフの頭を潰して倒した。それは良いんだけど、オウカさんの目がハートマークになってユウヤに釘付け状態なうえ、雰囲気があまりにアレ過ぎるので、触れない方が良いと思った僕はボスに向き直る。
「<死王の欠片>と戦ってるのに余裕ねえ。とはいえ新しくきたあのオウカっての、生命力を使うの早すぎない? あっさり習得してるっぽいんだけど」
「むしろ何も考えずに全力だったから出来たという感じでしょうか?」
「ついでに彼もそんな感じだったね」
「お菓子食べながら見る分には、ちょうどいいかなー?」
アルゼルはお菓子を食べながら戦ってたのか。まあ、プレイヤーも沢山居るし、そこまで集中する相手でもないんだろう。




