0640・ビスティオとエルフェリアの戦争 その14
プレイヤーと悪魔のラブコメ劇場を見ている気分になったし、色々とお腹いっぱいになった僕達は二人と別れ、さっさと先へと進む事にした。ヘイホー氏はマイルームに帰って【嫉妬】の悪魔ことヴィダと特訓をするらしい。
「男二人で特訓のうえ、片方はツンデレ子犬系。ちょっと滑って二人はもつれ合いながら倒れこみ、そのまま絡み合って「アッーーーー」」
「言いたい事は分かるし想像もつきますけど、笑わせるのは止めて下さい。何と言いますか、先程の二人を見ていると笑いにしかならないんですよ」
「分かる。アレ系がどんなのか知らないけど、さっきのは男女を替えたラブコメの一幕にしか見えなかったしね。配役が男か女かの違いしかなかったもの」
「そういう感じに見えたのは見えたが……。やっぱり何が面白いのか分からないな。ま、分かる必要も無いんだけど」
「それより、そろそろ進もう。あの二人はそっとしておく方がいいし、関わらない方がいいと思う。【嫉妬】を向けられても困るしね」
「そうだな。それにしても、あの【嫉妬】が何も考えずに助けを願うとは……。あまりにも珍しかったので助けたけど、封印されていた間に僅かなりとも変化があったのだろうね。かつてのままなら気にもしなかったろう」
【慈悲】の天使ことエウリティアさんがしみじみ言ってるけど、それを見て微妙な顔をしている【暴食】の悪魔ことアルゼル。何かあるのかもしれないけど、いちいち口を挟んでも良い事はなさそうなのでスルーしよう。
そのまま進んで行き、何人ものエルフを倒していく。その殆どは下っ端なので、北方面は下っ端が中心なのかもしれない。罠が多少はあったものの少なく、そこに罠があると分かっていれば踏んだりなどはしない程度だ。
そんな罠もエルフを放り込む事で強引に潰し、無理矢理に無くしておく。このまま罠があっても面倒だし他の人の邪魔になる。流石に気付いた以上は解除というか無くしておいた方が良いだろう。厄介な罠ばかりだし。
「厄介な罠っていうか、ゾンビかスケルトンにする罠しか無いんだよな。普通の罠の類が一つもないのは、むしろ不思議だけどよ。そういうのを混ぜた方が、罠に嵌まりやすいと思うんだが……」
「まあね。危険な罠だらけって警戒してくれって言ってるようなものだし、普通はそんな事をしたりはしない筈だよ。それでもやってるって事は、罠の基本も知らない奴が命令しているのか、それとも<死の欠片>で狂っているのか」
「<死の欠片>で狂ってるなら分かりやすいんだが、レイシストだからなぁ。単に何も考えていない可能性もあるし、答えは出ないんじゃないか? 高を括ってるなら、色々な罠を散りばめたりしないのは分からなくもない」
「……もしかして、あの<死の欠片>とかを使った罠の方が安上がり? だからその罠ばっかり多用してる? だって多用出来るぐらい持ってるって事だし、そうなるとコスト的に安いんじゃないかって思う」
「ナツの言う事にも一理あるかもしれない。相手が一撃で殺せて、しかもコストが軽いなら多用する。ビスティオ側から真っ直ぐ北西に行くと大量にバラ撒いてあった。あんな風に使うぐらいにはコストが軽いと考えれば、多用してくるのは当然」
「まあねえ。でも、そうなると相当にヤバいわよ。こっちはエルフどもを放り込まないと解除できないのに、向こうは簡単に設置できるじゃない。それ……あれ?」
「エルフどもは沢山設置しても損なままだよー? だって入ってくる数が少ないんだしー。一切戦闘をしなくても、ビスティオの側が勝っちゃうねー?」
「確かに言われてみればそうだな。戦闘をしなくても大量に入ってくるビスティオの方が絶対的に有利だ。今日もエルフェリア側は3000ぐらいしか居なかった。7000人の枠があったから間違いない」
「となると、罠を大量に設置しても意味は無いわね? そもそも数で負けてるんだし、だとすると何の為かしら?」
「<死の欠片>なんだから、よくある事としては生贄? 特に黒いので腐り落ちるのはそれっぽい感じがするけど……」
「「「「それはない」」」」
「天使と悪魔が揃ってないって言うって事は無いんだろうけど、一応聞くよ。何故?」
「そもそも<死王>や<死王の欠片>自体が、そのようなものを欲する存在ではないからです。アレは紛う事なき死に誘う存在そのもの。生贄などを欲するような意識すらありません。周りに死をバラ撒くだけです」
「そうそう。それ以外に全くといって良いほどに何も無い、そういう存在なのよ。だからこそ生贄を捧げたら治まるなんて事は無く、全てを死に誘うまで止まる事は無いわ。そもそも死を与える以外に何かあるのかしらね?」
「無いだろうね。アレはそういう存在であり、そもそもそれ以外には何も存在していないだろう。全てを死なせれば、最後は己を死に誘うのだろうが、そんな事をされては堪ったものではないからね。ヤツだけ死ねばいいものを」
「本当にねー、すっごい迷惑。まだまだ沢山食べたいのにさ、死んだら勿体ないよー」
「それはあんただけでしょうけど、とにかく生きている者を死なせようとするのよね。そういう意味ではアンデッドに比べて無味乾燥しているヤツではあるわ。感情が無いっていうか、本当に死だけなのよ」
「生きている者に対する怨みとか、そういったものも全く感じませんしね。あるのは生きている者を死なせるというだけです。まあ、それこそが困りものなのですが」
「とりあえず話し合いは終えて、そろそろ進もう。エルフが居ない以上、罠は放置するしかない」
僕がそう言って、皆も先へと進み始めた。それにしてもこのままじゃ負けるのに、何でエルフ側がこんなにも罠を設置するんだろう? やはり掲示板でも予想されてた通り、罠で死んだ人達に何かあるんだろうか?。
再びエルフが居たので殴り飛ばし、罠の上に放り込む。そうやって倒しながら解除していると、エルフの集団が居る場所を発見した。どうやら向こうはこっちに気付いているらしい。
「向こうに多くの精神を感じるから、おそらくエルフの前線基地か何かがあるんだと思う。向こうは既にこっちに気付いているみたいだけど、森の中じゃこっちに有利な場所は無いからね。このまま迎え撃とう」
「それしかねえか。それにしても何でエルフがこんな所で固まってんだ? それも闘気や魔力を感じないって事は<死の腕輪>をしてやがるな。面倒な連中だぜ」
「そろそろ来るぞ。準備したまえ」
「散開しても仕方ないから、魔法は宜しくー」
「そうだね。僕とラスティアが前に出て、敵の魔法を破壊しよう。たとえ偉そうなエルフが居ても、<暗闇の造魔>よりはマシでしょ」
「そういえば聖結晶があるという事は、君達は60階まで進んでいるのか。あそこを、そこまで行くとはよくやるね。私なんて50階で諦めたよ、面倒で」
「ボクもだねー」
「ちょっと待て、となるとまた50階から進まなくちゃなんないのかよ。仕方がないけど、急いで突破するしかないな。って、来たぞ!!」
前からゾロゾロとエルフが来たけど、そいつらは目が虚ろだった。いったいどういう事かと思ったら……。
「「「「「「「「「「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス……」」」」」」」」」」
勘弁してよ。エルフの姿のままだけど、黒い骨になっちゃったヤツと一緒じゃん。




