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0632・天使と悪魔と雑談と




 「私の慈悲は女性に対してのものだからね。男性は自分で何とかすればいいのだよ。少しは苦しんで女性の事を理解するといい」


 「本当にいつも通りだけど、アンタの持ってる【慈悲】って偏ってるのよねー。正しく【慈悲】の部分もあるんだけどさ。そういうタイミングでないと、本当の意味での【慈悲】を発揮しないのは変わらずか」


 「【慈悲】の天使が【慈悲】と称して始末しに行ったりしますからね。まあ、一思いに殺ってしまうのも確かに【慈悲】ではあるのですが、それを当たり前のようにやるからズレていると言われるのですよ」


 「それは幾らなんでも心外だ。【純潔】の天使とは思えないほどのセックスアピール力を持っている君に言われたくはないな。君の方が【純潔】からは程遠いだろうに。ついでに種族的にも程遠いじゃないか」


 「種族は関係ないでしょう。失礼ですね!」


 「いやいや、関係あるとも。唯でさえ蛇系の種族は<謀略><裏切り><束縛>に塗れているというのに、ハーフとはいえ君はラミアー種だよ? ラミアーと言えば<愛欲>と<淫蕩>の種族だろう」


 「そうよねえ。キャスティはそれを制御できたから大天使は【純潔】の天使だと認めたんでしょうけど、それとは別に全く隠しきれてないのよ。というか【純潔】の天使として強くなればなるほど、アンタのアピール力も増大してるからね?」


 「そんな事はありません。私はそういうものを捨て去る為に、自給自足をしながら生きてきたのです。土に塗れた農家の娘がそんなものを持つ筈ないでしょう」


 「ラミアーを農家に含めるのは止めたまえ。彼女達は確かに土に対する適正が非常に高いが、農家の男を惑わせる存在ではないか。確かに土に塗れた者は野暮ったいかもしれないが、だからこそ男を惹き付けたり、年端も行かない少年の性癖をゆがめてきたのがラミアーだろう!」


 「性癖をゆがめるって凄いわねー……いや、ほんと」


 「それはそうだろう。田舎の純朴な少年の前に、豊満でムチムチなうえセックスアピール力が異常に高い美女が居たらどうなる? 健全な少年ほど狂うに決まっているじゃないか!」


 「貴女はいったい何を口走っているのですか、エウリティア!」


 「いたって普通の農村の常識だが? 天使の星にもラミアー種は生きているが、その殆どは農家の男性の取り合いになる。基本的にラミアー種は美人が多く、大地の加護なのか胸が大きい女性が多い。そんな女性が農家の嫁として求められないとでも?」


 「いや、まあ、そうかもしれませんが……」


 「エウリティアは、農家の事に詳しい?」


 「詳しいというか、私は元々騎士爵の娘なのだ。一代限りとはいえ、父は村を2つ与えられていたのだよ。その両方の村にラミアー種の女性が居たのだ。どちらも農村に居るのがおかしいと思える美人母娘でな、それで村の男の取り合いになっていた」


 「へー……。でも、それって周囲から猛烈な嫉妬を受けると思いますけど、大丈夫なんですか?」


 「先程言ったろう? ラミアー種は<愛欲>と<淫蕩>が基本だと。だから夫となった者は毎晩搾り取られるのだ。そういう意味で男性から拒否される事もあるのがラミアー種でもあって、女性達の嫉妬もそこまで酷くはならないのだよ」


 「毎日やつれている男性を見たら、流石に嫉妬よりも大丈夫かって心配するんでしょうね」


 「ついでに男性もそれを見て尻込みする者が出る。だからこそ女性達の嫉妬も治まるのだろうな。それでも気に入らないとへそを曲げる者は居たが、そもそもラミアー種は浮気しないからね。そこは問題ない」


 「蛇って浮気性のイメージがあるけど、そんな事は無い?」


 「搾り取れるなら、最後まで搾らないと勿体ないらしい。だから浮気はしないそうだ。死んでしまったら……その時は御愁傷様というところだろう」


 「「「「「………」」」」」


 「うんうん。それでこそラミアー」


 「どういう意味ですか!?」



 男の入りにくい会話をしてるなぁ。こういうのは巻き込まれるのも困るし、ジッとしているのが一番だね。とはいえ流石にそろそろ止めてほしいんだけど……。そう思っていたらファルが来たので、僕はすぐに食堂へと移動する。


 食堂には既に師匠が居たが、何やら険しい顔をしていた。



 「エルフェリアのエルフどもは流石にやり過ぎだからのう。それを考えておったのだ。今回決まった事の中では、妾を含めた魔女に出番は無い。今回は天使の星の者がやらかしておるから向こうが主体となる」


 「つまり聖人と天使ですか。そもそも人間を拷問死させて生み出した呪いの剣なんですけど、その人間を何処から調達してるんでしょうね? エルフェリアってエルフしか近づけない国の筈です。平地には畑もあって他の種族も居るらしいですけど」


 「居るなら、そこからじゃないのー?」


 「さすがに自らの足下ではやらんじゃろう。それをすれば国内のエルフ以外に気付かれるし、そこが逃げ出せば他の国に露見しかねん。奴等としては致命的な事ではあろうからの、他種族から見下される事実がバレるのは」


 「確かにエルフェリアのエルフならば、絶対にそんな事態は避けるだろうね。アレらはとにかく他者よりも優位な位置に行きたがる。たとえそれが虚構だとしても」


 「虚構でも無理矢理に事実だと言い張り、相手を見下そうとするでしょうね。それぐらいは当たり前にやるのがエルフェリアのエルフです。最悪はゴリ押ししてでも自分達は間違ってないと言ってきますよ」


 「そうだね。ただ、今回は大天使様も大悪魔も知っている。流石に御二方が出てこられるとエルフェリアのエルフも認めざるを得ないだろう。それこそ両方の星から圧力が掛かれば行き場が無い」


 「そうですかね? 実は下っ端エルフの幾つかが、真っ黒な霧が出る罠を仕掛けていたんですよ。そしてソレを浴びた者の中でこっちに憎しみを持っていた者は、黒いスケルトンに変貌しました。「殺す殺す」と呪詛を吐いていましたけどね」


 「黒いスケルトンな。コトブキは何だと思う?」


 「生命力が非常に良く効いたんで、もしかしたら<死王の欠片>かと」


 「バカな!? アレは大天使様と大悪魔が封印している筈だろう! 現世うつしよに出てくるなどあり得ない!」


 「ならば、それに近い何かではありませんか? 一度目は肉が腐り落ちてスケルトンになり、二度目は憎しみも合わさって真っ黒になったんです。そういう罠を仕掛けてきているのは間違いありません。流石に二度使われてますからね、見間違いとかいう事もないです」


 「ふむ。何処かの封印を破って手に入れたか、それとも封印を破って出てこようとしたのを追い返したものの、汚染されたのかもしれん。可能性としては無いとも言い切れんでな」


 「現に生命力が良く効くとなると、どうしてもアレの可能性が出てくるものねえ。前にコトブキ達は戦ってるらしいし」


 「そうだね。とはいえあの時は聖人の人達が居たからこそ勝てたと言えるかな。僕達プレイヤーだけなら負けてたよ。レベルがあの頃とは違うけど、それでも簡単な相手じゃないからね。今はどうだろう?」


 「戦うかどうかではなく、<死王の欠片>の力かどうかを調べるしかないだろうね。そういう意味でも、私達が行った方が良い」


 「どのみちついてきてもらうのは確定だから、午後からで分かるんじゃない?」



 とにかく黒い霧みたいなのを出してくる罠を見つけるしかないね。簡単には見つからないだろうけど、エルフを探せばそのうち見つかると思う。


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