0628・ビスティオとエルフェリアの戦争 その6
子犬みたいにプルプルしている人達を引き連れて、僕達はビスティオの魔法陣近くにあるキャンプ地まで戻る。そこまで西に進んだ訳でもないのに、あれほど呪いの武器を持つエルフが居るという事は、この戦争フィールドにはかなりの人数が居ると思っていいね。
確か両国共に7000人の枠があるんだから、ビスティオもエルフェリアも3000人しか自国の軍を出していない事になる。もちろん3000人っていう人数は多いけど、本気の戦争をするならこんな人数じゃない筈だ。
この人数なのは戦争フィールドでの戦争だからであって、違うのであれば人数はもっと多く掛けるだろうし、戦略も色々と変わってくる。そもそも地形を自由に決められたり、開始地点を自由に決められたり、人数の制限がある戦争なんておかしいしあり得ないんだよ。
そんな変則的な戦争だからこそ、エルフェリア側はあんな物を持ち出して来たんだろう。とはいえ、そんな物を戦争フィールドに持ち込むなんてバカの所業だと思うんだけど……そんな事すら考えなかったんだろうか?。
そもそも戦争フィールドを作って管理するのは大天使と大悪魔だよ? 監視されているという事ぐらい、何となく想像がつくと思うんだけどね。にも関わらず呪いの武器なんかを持ち込む。何故か奪われる事も考えずに。
………それとも奪われたらビスティオの所為にするつもりなんだろうか? 持っていたのはビスティオ側だと主張して、責任を相手に押し付ける………って事ぐらいはやってきそうだな。どっちに転んでも得をするとか思ってそう。頭が悪いし。
そもそもレイシストって視野狭窄を起こしやすいし、マヌケな事でも根拠なく正しいと思い込んだりする。そういう連中なんで、自分達は間違ってないとか思ってそうだ。本当のマヌケはどっちかっていう話なんだけどさ。
結局エルフに襲われる事もなくキャンプ地に着いた僕は、ビスティオの軍の人達と別れて再び西へと向かう。双方が一万人ずつ参戦させられるという事は、少なくとも二万人の人員が戦える広さになっている筈だから、戦争フィードは想像より大きい?。
皆に会えないのも仕方ないレベルで大きい可能性も浮上してきたし、ちょっと頑張って西に向かってみよう。仲間達にもそう声を掛けて僕達は西に向かって歩いていく。
途中で下っ端エルフなどと交戦したけど、瘴気結晶を持っている連中ではなかった。やはり瘴気結晶を持っているエルフはそこまで多くないのだろう。そんな事を考えつつ進んでいると、何やら大きな声が聞こえてきた。
どうやらプレイヤーっぽいので急行すると、プレイヤー同士が争っている場面に遭遇した。それも片方にはゾンビが居る? もしかしてネクロマンサーかな? とりあえず【セイントエリア】を使っておこう。……あ、ゾンビが殺された。
「助太刀します!」
「すまない、助かる! ……ってネクロ氏じゃないか!?」
「おおっ! 援護がネクロ氏なのは助かる!!」
「チッ! 面倒なのが来たな。7番、相手してやれ!!」
「えっ? 私がですか!? 新リーダーの11番が相手をすれば良いでしょう! こっちに言って来ないでちょうだい!」
「じゃあ5番がやれ!」
「はぁ? 言いだしっぺのお前がやれよ! 弟君と戦ったって死ぬだけだっつーの! 今回エルフェリアで参戦したの絶対に失敗だぞ。オレ達と検証班しか居ねえじゃねえか」
「クソが! お前らそれでも<道化師>かよ! 日和ってんじゃねーぞ!!」
「日和ってんのはテメーだろうが! 文句があんなら自分でやれや!!」
「チッ! 仕方ねえ。エルフから貰ったコレでも喰らいやがれ!!」
「ネクロ氏、気を付けろ! コイツらは妙な物「カキン」を投げつけて……」
おそらく11番ピエロだろうけど、彼から投げつけられた瘴気結晶をセナがヌンチャクで打ち返した。それは物の見事に11番ピエロに直撃して悶絶している。
「うぐぐぐぐぐぐ………くそ、てめぇ!」
「オマエガヤロウトシタコト。ジゴウジトク」
「まったくもってその通り。それを私達にやれと言っていたのですから、最低ですし自業自得ですよ」
「本当にな。アレを他人にやらせようっていう根性が気に入らねえ。オレ達<道化師>はPKだが、筋の通らない事はしない筈だろうが。自分の手を汚す気が無いならリーダー止めちまえよ」
「先代の方が遥かにマシだったぜ。テメェは上に居るの向いてねぇわ。これ以上鬱陶しい事してっと引き摺り下ろすぞ」
「んだとテメェら、ふざけやがって! オレの強さをみせてやんよ! 死ねや、ネクロども!!」
そう言って11番ピエロは瘴気結晶を大量に投げてきたけど、仲間達は全て綺麗に打ち返した。そもそもアレって使うと悪人になるんだけど、理解してやってるのかな? あの11番ピエロ、これからまともにゲームは出来ないんじゃ……。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ、ぐううううう、うおぉぉぉぉぇぇぇぇあがぁぁぁぁ!!!」
「おいおい、打ち返されて自分がアンデッドになってるじゃねえか。そんな方法があったのか! オレ達のパーティーメンバーをゾンビにしてくれたヤツだからな、いい気味だぜ!!」
「ってか<道化師>のリーダーって、少し前に変わったばっかじゃなかったっけ? こいつ最初のリーダー戦でド派手な失敗したんじゃね」
「いや、確実にしてるだろ。元リーダーの1番ピエロって、確かゲームのし過ぎで倒れて検査入院だっけ? その所為で帰って来れなくなってのリーダー争奪戦だろ? 勝ったのはコイツだけど、性格が腐りきってたんだな」
「PK標榜してるからって、何やっても許される訳じゃねーのにな。何を勘違いしてやがるのやら」
そんな話の最中に自分の悪行度を調べてみたけど、どうも上がってないね。つまり投げられた物を打ち返すのは問題ないらしい。おそらく投げてきた向こうが悪いって事だろう。投げなきゃ打ち返される事も無かった訳だし。
僕はゾンビに変わった11番ピエロに【セイントクリア】を使って弱体化をさせる。その状態で放っておいたんだが、どうやらまともに動く事すら難しいらしい。あまりにも動きが遅いゾンビに成り果ててる。亀のような歩みだ。
「コレ……どうします?」
「亀よりも遅い歩みで必死に動こうとしてるな。っていうかネクロ氏の仲間が更に【浄化魔法】を使ってるじゃん。それもダメージ受けないヤツ」
「絶対にワザとだし、容赦がねえなあ。これ多分だけど、死ななきゃ元に戻れないだろ」
「………放っとくか。それが1番の罰になるだろ」
「それ以前に瘴気結晶を生きている人に投げつけるって、悪人になるんですけどね? もしかして鑑定結果を見てないで投げたのかな?」
「ゲッ!? 悪行度が上がるの? マジで!?」
「あっぶねえ! もうちょっとで使うトコだったぜ! ………オレの鑑定結果には悪人になるって書いてねえけど?」
「え? 僕の鑑定結果には書いてありますけど? 雑談スレに鑑定結果のSSを貼りますから見てください」
そう言って雑談スレに鑑定結果のSSを貼ると、一斉に<道化師>の面々が驚く。自分達の鑑定結果には悪人になるという部分が見えないそうだ。
「何でだろうな? オレ達もネクロ氏と同じように見えてるぞ? 生きている人に使ったら悪人になるって書いてあるの分かるし」
「もしかしてエルフェリアに所属してると見えないんじゃね? だってこんなもん作るような連中だろ。あれだ、鑑定を便利に使ってると騙されるぞって事だと思う」
「良い事か悪い事かぐらい、自分で判断しろって事か。もしくは瘴気って書いてあるのに警戒しないバカが悪いって事だろ」
「ぐうー、あがーーぁぁ」
そのバカは既にゾンビでまともに喋れないけどね。そのゾンビを少し眺めた後、全員が一斉に離れた。<道化師>はエルフェリアでの参戦を止めるらしく、掲示板に情報を出すだけ出して、明日からはビスティオで参戦するらしい。
襲われていたプレイヤー側も関わりたくないとして離れたし、僕達もゾンビを無視して西へと進む。自業自得のバカは全会一致で放っておく事に。これで反省するか逆恨みをするかは知らないけど、この先大変だろうね。
どれだけ悪行度を稼いだのかは知らないし興味も無いから、さっさと移動しよう。




