0626・ビスティオとエルフェリアの戦争 その4
妖精の持つ負の側面をエルフにやらせてるんじゃないかという疑惑はともかくとして、倒すべき敵は倒す事に変わり無し。目の前に敵として現れるうえに、人間を拷問死させて武器を作るクソレイシストどもに手加減など無用だ。
当然ながら叩き潰すし、容赦など一切しない。する意味も無ければ理由も無いので、確実に丁寧に始末していこう。汚物どもこそ根こそぎ滅ぼさねばならないだろうし、その手を止める訳にはいかない。
そう思いながらも歩いて皆を探していると、二足歩行の獣がゾンビとして目の前に現れた。ビスティオの誰かが瘴気結晶でやられてしまったのだろう。僕は【浄化魔法】の【セイントクリア】を使い、目の前のアンデッドを弱体化させる。
流石に倒す事は出来ないが、これだけでも相当に楽になるだろう。瘴気結晶を使われたという事は、ある程度の実力者の筈だし、ここは手加減無しで戦った方が良い。フォグとエストが【セイントジャベリン】を使うと、あっさりと勝利した。
そこまで強い人じゃなかったのか、それともアンデッドになって弱体化したか、もしくは誰かにある程度の攻撃を受けていたかな? 【セイントクリア】の弱体化で一気に弱くなったのかもしれないけど、そこまでではない気もするしね。
「さて、亡くなった方の物が落ちたんだが、これはビスティオ側に届けるべきだろうか?」
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<剣> 獣牙のククリソード 品質:10 レア度:6 耐久850
獣王国ビスティオで採用されている標準的な剣。ビスティオの兵士は獣である事を活かして戦うので、くの字に曲がったククリを大きくした剣を叩きつけるように使う。獣のように動きながら繰り出される剣撃は強力で、ビスティオ特有の獣剣術も存在する
攻撃力26 破壊力1
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「思ってるより強力だけど、獣牙って出てるから何かの牙で作られてるんだろう。でも何で作られてるかの検討がつかないな……。他には何も落ちずに消えていったし、これを届けようか。柄にアクセサリーがついてるし、それで誰のか分かったら良いんだけど」
そんな事を呟きつつ僕達は一度ビスティオ側のベースに戻る。他のプレイヤーも居るかもしれないし、皆も一度戻ってるかもしれないからね。可能性としてはあまり高くないだろうけど、届けるついでに探そう。
戻るまで敵に遭う事もなく、すんなり戻れた僕はビスティオの兵士を探す。救護所のような場所に行けば居るだろうと思い、近付くと近くの兵に威嚇された。
「ここは我らビスティオ軍の救護所だ! お前のような魔人が使える場所ではない。さっさと立ち去れ!」
「僕は治療をしてほしい訳ではありませんよ。誰かビスティオ軍の上の方を紹介して下さい。この剣を持っていたゾンビが居たので、話に来たんですよ」
「なに!? 我が軍にゾンビが居るとでも言うつもりか! 貴様、愚弄するとはふざけおって! ここで成敗してくれる!!」
ビスティオ軍の兵士が僕に対してククリソードを抜いたけど、僕は特に脅威を感じていない。というか制圧するのは容易いんだけど、いちいち面倒な争いをする気も無いんだよ。ある程度の役職にある人でいいんだけど、鬱陶しい事になったな。
仲間達には手を出さないように言い、僕は攻撃を避け続ける。力は強いんだけど、軌道が非常に読みやすいので簡単だ。流石に下っ端だろうけど、獣剣術とやらは大丈夫かと思ってしまうね。
そうしていると騒ぎになってきたのか、やっと上の立場っぽいのが現れた。いちいち無駄に時間をとられたな。
「こんな所でいったい何をしている!! 救護所の傍で争うとは何事だ!!」
「申し訳ありません! すぐにこいつを倒します!!」
「僕は上の立場の人を呼んでくれと言っただけなんだけどね? ビスティオ軍ではこれが挨拶だとでも言うわけ?」
「貴様! 我が軍を舐めるなぁ!!!」
「待て! 止まれ! ……立場が上の者を呼べとはどういう事だ?」
「このククリソードを持っていたゾンビが居たんですよ。その説明に来たのに襲われたって訳です。こちらの話をまったく聞こうともしないので、攻撃を避けて誰か来るのを待っていたんですよ」
「貴様……相手の話も聞かずに何をやっているのだ。まずは話を聞いてからであろう。そんな当たり前の事もできんのか?」
「い、いえ! し、しかしこの者が嘘を吐いているかもしれませぬ!! その為に私はこの者を「まず、聞くのが先だろう」倒しそのうえで……」
「愚かすぎて聞くに耐えんわ。貴様はもういい、口を閉じろ。で、説明とはどういう事だ?」
口を閉じろと言われたからか黙ってるけど、物凄い形相で睨んできてるね。全然怖くないし、負け犬の遠吠えみたいな行動だけど。そもそも掠りもしなかったのを忘れたんだろうか。
「森の中でゾンビになっている獣人を発見したんです。【浄化魔法】で送ったんですが、そのゾンビがこのククリソードを持っていたんですよ。ビスティオ軍の標準装備だと鑑定に出ましてね、それで持って来たんですが」
「ふむ。確かに我が国の者に支給されている、ククリソ………これを何処で手に入れた!?」
「ここから西に行った場所でです。もしかして、お知り合いの物ですか?」
「ああ。私の20年来の友人の物だ。ゾンビと言ったな、本当か?」
「はい、本当の事です。………エルフ兵の一部、おそらくある程度より上の立場だと思いますが、その者達は瘴気結晶を持っています。その事はネクロマンサーである僕が確認していますので、おそらくそれを使われた所為でゾンビになってしまったんでしょう」
「瘴気結晶………おそらく瘴気が濃く固まった物だと思うが、そんな物が?」
「ええ。持ち運びたくもないので置いてきましたが、それだけじゃありません。エルフェリアのエルフは人間を拷問死させると共に、瘴気結晶を使った呪物のような武器を使っています。状態異常付きの武器を持っているのを確認しましたので」
「拷問の果てに作りだした武器か。正気かと言いたくなるが、エルフ以外を見下している連中だと聞くし、本当に碌な事をせぬ連中だな。それで、その呪いのような武器は?」
「ここから西です。エルフの死体が持ったままですね。残念ながら敵の物ですから、稀人である僕が取ると窃盗になる恐れがあるので取れないんです。ククリソードは味方陣営に返すから問題ないのでしょうが……」
「成る程、君らも何らかの制限を受けているのか。それはともかく呪物のような武器を持つというのはかなりの問題だな。早めに敵に使われぬように確保せねばならんし、悪用させん事も徹底しておかねば」
「エルフは瘴気を悪用してきます。ある程度の人数で行った方が良いと思いますけど、僕達がついて行きましょうか?」
「そうか。帰りは一気に帰ってくれば良いだろうし………よし、私も行こう。ついでに小隊を連れて行くか。ここで少し待っていてくれ」
「分かりました」
「お待ちを! そこのヤツなど信用なりません、ここは是非とも私を連れて行って下さい。一挙手一投足を監視し、少しでも疑い「連れて行くわけなかろう」のある行動をとれば……」
「功を挙げたいのかもしれぬが、勝手な事をする者など軍には要らぬ。兵士は命令を遂行する者ぞ。お前のような好き勝手をしようとする者は、優秀な兵士にはなれんし期待も出来ん。少しは反省しろ」
「………」
またこっちを睨んできたよ。面倒臭いヤツだね。




