0624・ビスティオとエルフェリアの戦争 その2
三人のエルフは別に怒っている訳じゃないみたいだが、後ろの偉そうなエルフがキレているので、命令に従っているだけのようだ。僕達は気にせず戦いを始めたが、すぐに蔓草でラスティアが拘束された。
その後、茨で出来た鞭のような物がラスティアに振り下ろされる。叩きつけられた茨の鞭は、ラスティアに多少のダメージを与えたらしいが、その殆どは露出している顔の傷だ。ワザと狙ったんだろうけどね。
「いったいわねえ! 私は痛めつけられて喜ぶ趣味なんて無いっての!!」
「【木魔法】の【ソーンウィップ】ですね。そこまでレベルの高い魔法ではなかった筈ですが、気をつけて下さい」
「乱せ」
また何か偉そうなエルフが指示を出したようだけど、その偉そうなエルフは後ろで動く気配が無い。スモールソードを抜いて右手に持っているけどそれだけだ。何もしていない訳じゃないと思うんだけど、何をしてくるか分からない。
前の三人のエルフはそこまで強くないのか、嫌がらせ魔法を使いつつ付かず離れずで接近まではしてこない。それでも仲間達は意図的に前に出ないようにして戦っている。何となく前に出ると罠に掛かりそうなんだよね。それぐらいはしてきそうだし。
そんな戦闘を続けていると、一人のエルフにウォーハンマーが直撃した。そしてその一撃で頭が潰れたらしく、夥しい血が噴出する。勢いよく噴き出す命。それに気付いた前衛のエルフの一人は半狂乱になった。その隙を見逃さずに一気に攻める。
頭を潰されたのは真ん中のエルフだったのだが、半狂乱になった左のエルフに驚いたのか、右のエルフは一瞬動きを止めてしまった。その瞬間に振り下ろされるヌンチャクとメイス。この2つで左右のエルフは脳天がカチ割られ、血の噴水を撒き散らす。
それを見た偉そうなエルフは「チッ」とした舌打ちした後、いきなり前へと出てきた。狙いはセナのようで、腰に着けた小さなバッグから何かを取り出すと投げつけてくる。僕は素早く【浄化魔法】の【セイントエリア】を使用したが、直撃したセナが苦しむ。
「ウグ、ググググガ………」
「チッ! 1個では足りんかったか。まあいい、穢れたゴミなどさっさと腐れ」
そう言って再び小さなバッグに手を突っ込んだエルフに対し、僕は持っていた棒を全力で投げつける。流石に重結晶製の棒が飛んでくるとは思わなかったのだろう、慌ててスモールソードで防御するも棒全体を防げず左肩に直撃を受けた。
「ぐぅ! 汚らしい魔人如きが「死ね」ち」
僕は最速最短で接近すると、抜き打ちでエルフの首を刎ねた。無駄口を叩いている暇があったら動きの一つでもすればいいものを、所詮は見下す事しか出来ない無能か。
フォグやエストの【浄化魔法】でセナは助かっているが、何を投げられたか分からないので、僕は首を刎ねたエルフの死体を探る。
すると、腰に着けている小さなバッグの中に硬い物があったので、取り出して【鑑定】してみた。
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<特殊> 瘴気結晶 品質:10 レア度:4
瘴気を集めて結晶化したアイテム。アンデッドを回復させる効果があるが、ネクロマンサーの召喚アンデッドには猛毒となるので注意。敵に使用されるとロストの可能性もあるので、慎重に対応しよう。鍵は【浄化魔法】だ。尚、生きている者に使うとアンデッドになるので止めよう。たとえ敵でもそれをすれば悪人だ。
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「瘴気結晶。これが対ネクロマンサー用のアイテムか。ぶつけられたセナが苦しんでたから瘴気系のアイテムじゃないかと思ってたけど、案の定そうだったとはね。それにしてもエルフェリアは面倒な事をしてくれるよ」
「ワタシヲクルシメタヤツハドコダ!! イマスグコロス!!」
「どうどう。セナ、既に僕が首を刎ねたから死んでるよ。それに助かった事をまずは喜ぼうか? 何で助かった最初の言葉が敵を探す事なんだろう。ちょっと好戦的すぎない?」
「コトブキそっくりだと思うけどね。コトブキだって同じようになってたら、自分の事よりも先に敵を探して殺すでしょうが」
「………」
「まあ、一切の容赦無しに殺すでしょうね。破滅殿もそうでしょうが、許す事などある筈がありません。それよりもさっさと進みましょう。そこのスモールソードも気になりますが、奪ったら窃盗ですからね?」
「せめて【鑑定】ぐらいはしていこう。何か良い物かもしれないし」
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<剣> 奪命のスモールソード 品質:10 レア度:6 耐久1000
拷問された人間の血と肉と精神、更には瘴気結晶を用いて作られた呪術的な剣。これで切り裂かれた者は強制的に生命力を奪われる。拷問の末に殺された者の痛みと苦しみと恐怖と絶望を宿す、強めて悪質な剣。作りだした者達は狂っていると言ってよい
攻撃力31 破壊力1 【ライフイーター】
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「これはSSに撮って後で皆に見せよう。僕が掲示板にあげなくても、誰かがあげてくれるだろう。それにしても酷いね、人間を実験の道具ぐらいにしか考えてないんだろう」
「エルフェリアのエルフだもの、当然と言えば当然でしょうね。連中にとってはエルフェリアのエルフ以外なんて動物みたいなものよ。何をやっても許されると思っているわ。いえ、そもそも考える事すらしないのでしょうね。だからこそ嫌われているのだし」
「ええ、しかしそれにしても酷い。人間を苦しませて殺し、それを呪術的に剣に宿すとは正気の沙汰ではありません。エルフェリアという国は狂っています。………これは大天使様に御足労を頂いた方が良いですね」
「それには及びませんよ」 「うむ、見ていたからな」
そう言って目の前に現れたのは、お久しぶりの大天使と大悪魔だった。その大天使と大悪魔は<奪命のスモールソード>を見て呆れたような溜息を吐いた。
「元々からして吐き気のするゴミどもだったが、輪を掛けて狂っておるな。我らは下界の物事に干渉はせんのが決まりだが、これは度を越しておる。とはいえ干渉はできんし、どうするべきか……」
「仕方ありませんね、聖人と魔女と天使と悪魔を集めてこの事を話しておきましょう。文句を言ったり動かぬ者は外して構いません」
「悪魔の中には外れる者が出そうだが……まあ、構うまい。我らの言葉を聞かぬ以上、剥奪される覚悟があると見做す。では行くぞ」
「「えっ!?」」
その瞬間、大天使と大悪魔とラスティアとキャスティが消えた。ついでに<奪命のスモールソード>も消えているので、証拠として押収したんだろう。
それよりも、今は戦争中なんですが、急に二人を連れて行くの止めてくれませんかね? 流石に戦力ダウンを強制的に起こされても困るんですよ。これってイベント中のイベントなのかな? もしかして他の天使や悪魔も召集されてる?。
考え事をしていると、ファルが重結晶の六角棒を回収してきてくれたので、太刀をインベントリに仕舞って六角棒を持つ。皆も今一度【浄化魔法】で綺麗にしてから移動を開始した。
「さっきのようなエルフが居る可能性があるから、皆も気をつけてほしい。ロストする可能性がある場合は強制的に送還するからそのつもりで」
「ワタシガキエルヨリモマシダカラ、シカタナイ。デモツギハ、ナゲラレルマエニコロス!」
「まあ、そうだね。先に殺せば終わるから殺すのもいいし、投げられたものをヌンチャクかトンファーで相手に弾き返してやればいいよ。なら相手が苦しむだろうからね。流石にその行動でアンデッドになっても悪人にはならないだろうし」
「ナラ、ウチカエス」
打ち返すって……まあいいけど、粉々に粉砕しないでね。多分それだと、さっきの苦しんでいた状態と変わらない結果になりそうだからさ。




