0607・合成と戦争の話
ソファーの部屋で色々と話していたら、ファルが呼びに来たので食堂へと行く。師匠は既に居たので助かるけど、何故か今日に限ってマリアさんが来てる。何かあったのだろうか?。
「マリアが来ておるのは、ちょっとした事情からだ。それともマリアに何かしら用でもあったのか?」
「いえ、用があるのは師匠にです。暗闇ダンジョンの60階まで行ったんですけど、そこで<デッド草>と<ヘヴンズクラッシュ>という草を手に入れたんですよ。向こうで捨ててきた方が良かったんでしょうか?」
「ああ、あの危険な草か。………ふむ、捨てるのも勿体ないから妾が引き取ろう。妾の別宅を使うておる代金としてもらうから、手に入ったら持って来るがいい」
「それは構いませんが、いったい何に使うんですか? どう考えても危ない物ですよね?」
「確かにそうだがの、<デッド草>の方は危険な毒に対する解毒薬の材料なのだ。実際に解毒薬の多くは毒を材料に使うておる。こればっかりは仕方がない事でもあるし、強力な毒であればあるほど、強力な解毒薬も作れるのだ。残念ながらな」
「成る程。解毒薬に使うのであれば必要な素材ですが、私も使う事になるのでしょうか? 鑑定結果には薬師の中にも死人が出るとか……」
「それは扱いが下手な者か、それとも単なる粗忽者かじゃ。皮手袋などをして肌に触れんようにして扱えばよい。横着するから死ぬのだ。そもそも死ぬような危険な毒草の扱いを、素手でやるような阿呆は死んでも仕方あるまい」
「それは確かに。危険だと分かったうえで素手でやるのは、自殺願望があるとしか思えない。流石にそれはあり得ない」
「うむ。まったくもってその通りよ。中には皮手袋が破けていたとかあるかもしれんが、それもしっかりと確認をしておらぬ阿呆が悪いだけよ。誰の所為でも無いわ」
「それともう1つ聞きたいんですけど、白結晶と聖結晶を混ぜ合わせるにはどうすれば良いんでしょう? おそらく魔鉄と同じく【合成】を使うんだと思うんですけど……」
「そうじゃの。そもそも白結晶と聖結晶の【合成】はそこまで難しくもなければ材料同士の相性も良い。必要なのは両方の素材とスライムの抜け殻ぐらいだ。ただし両方の結晶を一度粉にし、スライムの抜け殻と混ぜ合わせて【融合】の後に【合成】。そして【均質】を使ってから【変形】で整えるのだ。それで完成となる」
「はぁ……。なかなかに大変そうですね」
「それはそうであろう。魔鉄などよりは遥かに難易度が高い。代わりに完成すれば暗闇ダンジョンで役に立つであろう。お薦めは鈍器に使う事じゃの。60階という事は、暗闇の造魔が出てきておる筈じゃし、アレはちと厄介だからな」
「エンリエッタさんがそこまで言うほど? 確かにレベル107と高かったけど、そこまで言う程とは思えないんだけどなぁ」
「おぬしらは、まだあまり進んでおらんのであろう? 65階まで行ってみよ、暗闇の造魔はどんどんと増えていくぞ? 60階の下の方は少ないのだが、階層を進む度に敵の数はどんどんと増えていくのだ。69階など大量にウジャウジャと居るから気をつけよ」
「「「「うわぁ……」」」」
アレが大量とか流石に嫌すぎる。流石は60階から先の難易度を押し上げてるだけはあるね。それに進んで行けば、どうせ更にレベルが上がってるんだろうしね。69階では120を超えてても驚かないよ。
「それにしても、なかなか良い物を手に入れられてるんじゃないかしら。聖結晶なんて簡単には手に入らない物よ? どれだけの魔法でも問答無用で切り裂いてしまう、ある意味で魔女の天敵とも言える武器だものねえ」
「まあ、妾達は魔女と言われるだけあって、一応は魔法の方が得意だからの。と言っても、妾はネクロマンシーであって通常の魔法ではないのだが」
「支配の魔女も似たようなものだけど、他の魔女は一応魔法の方が得意なのよねえ。それを切り裂かれるのは嫌がるでしょう。実際、少しでも切り裂かれると魔法全体が破綻するから厄介極まりないし」
「それならそれで、持っておる奴を先に殺すか、聖結晶の武器を破壊してしまえばよい。アレは魔法を切れるだけで、それ以上では無いからのう。そこまで危険な物でもない」
「まあ、それはね。それよりも私が来ている理由について説明しておくわ。ちょうど都合が良さそうだしね。私が来たのはビスティオとエルフェリアがそろそろ戦争を始めそうだから、その説明の為よ」
「説明ですか? ゲートを使って戦争をするのでは?」
「いいえ、違うわよ? それぞれの星内で戦争をするなら普通に戦争をするんだけど、ゲートの向こうと戦争をするには大天使と大悪魔にお伺いを立てなきゃいけないの。そして戦う場所は戦争フィールドよ」
「「「「戦争フィールド?」」」」
「大天使と大悪魔が神の力の一部を使って作りだした場所じゃ。ゲートに負担を掛けると問題での、その為に専用フィールドを使って争う事に決まっておる。それを大天使と大悪魔に申請せねばならん」
「そして防衛側が戦争フィールドの地形を決めて、攻め込む側が両者の魔法陣の場所を決める。その魔法陣から後続が出てくるから、この場所を何処にするかも重要なのよ。魔法陣の設置場所はある程度の範囲に決められてるらしいわ」
「昔、攻め込む側が両者の魔法陣を隣り合わせにしたらしくての、その時は血みどろの争いになったらしいわ。それ以降、両者の魔法陣は一定距離が離れておらねばならんと決まった筈じゃ」
「隣り合わせに置くって、相当に殺し合いがしたかったのか、それとも自信があったんでしょうね。それでも血みどろの殺し合いになったみたいですけど」
「まあ、唯の阿呆じゃろうよ。戦略性もへったくれも無いからのう。そんなものは戦争とは呼ばぬわ」
「確かに……。ビスティオとエルフェリアの戦争が起きそうなのは分かりましたけど、それと師匠に何の関係があるんですか? 知らせに来たと仰ってましたけど」
「ああ、それは薬よ。専用フィールドで戦争をするとはいえ、脱出する事も出来るもの。出て来た際に怪我を治す薬が必要でしょう? それに5日間もある以上は結構な怪我人が出る筈だし」
「死人も出るであろうが、それは妾に関係無いでの。それはともかくとして、そなたらはどうするのだ? 戦争に参加するか? 相手も精鋭を送ってくるだろうから腕は伸びるぞ?」
「僕達が参加しても良いんですか? ビスティオの戦争ですよね?」
「外部から雇い入れるのはよくある事じゃ。戦争フィールドでの戦争は5日間。1日で入れるのは双方それぞれ1万人ずつと決まっておる。しかし5日間もあるのでな、そうそう最初から最後まで1万人を動員し続けたりはせん」
「最高で5万人だけど、大体は1日で3000人~5000人ぐらいね。そこから上乗せするのは雇った者達なのよ。それをどれだけ積めるかによって、戦力差が出るって感じかしら」
「エルフェリアはどうなんでしょう?」
「…………外部の者を雇うのは無理じゃろう。そもそもあそこはエルフ至上主義の国じゃからの。余ほど追い詰められでもせん限りエルフのみ、それも自国民のみで戦うであろうよ」
「それしかあり得ないわよねえ。何たって〝あの〟エルフェリアだもの。どう考えたって誰もエルフェリア側で戦わないわよ。ビスティオ側に参戦するかも微妙だけどね」
「何故ですか?」
「エルフェリアのエルフは【木魔法】使いが多いのだ。あやつらはとにかく嫌がらせばかりする。そんな鬱陶しい連中と戦いたい者は多くない。ま、おぬしらなら丁度良い経験だとは思うがな」
「アレも経験してみないと分からないものねえ……」
何だか嫌な感じがするけど、でも経験しないと対処法も分からないし……。どうしようかな?。




