0600・暗闇ダンジョン50階へ
魔隠穴を出た途端、猛烈なランクアップ・インフォが駆け巡ったけど、ようやく治まった。皆も同じような事が起きたのか、特にトモエとアマロさんは情報の洪水に四苦八苦している。僕は詳細に把握する気が無いから何となくで覚えておくだけだ。
「いやー、魔隠穴を出た途端に一気に来るとは思わなかったぜ。俺も最凶ダンジョンとか行ってた所為で、スキル関係の事は動かなかったのが原因か? それとも上限が取っ払われても、ある程度はスキル経験値を稼がないと上がらなかったのかね?」
「どっちかと言えば経験値を稼ぐ必要があったんだと思うよ? ギリギリで止めるより、ほんの少し下で止める方が安全だからね。何かあった時に対応出来るように、ちょっと少なめで止めておいたんじゃないかな?」
「その可能性が高そうね。それより仲間達が大量に上がったから大変よ。いったいどれだけ止められてたのかと思うくらいにランクアップしてるし、一気に中級と上級になってる」
「でも中級になった割には何も覚えなかった。今までならショボいアクティブスキルを覚えてたのに、それが無い。という事は、これからはまともなスキルを覚える?」
「まともと言うか、それっぽいスキルは覚えんじゃね? ただしそれが使えるかどうかは定かじゃないけどな。ここの運営なら色々やらかしそうな気がするし、もしかしたら基本の方が使いやすいかもしれないぜ?」
「ああ。クールタイムがやたらに長い、もしくは使用後の硬直が長いとかのタイプね。特に硬直が長いと使い難いのよねえ、アクティブスキルは。完全に隙だし動けないし、どう足掻いても誰かさんならスカして首を刈りに来るから」
「PvPじゃ使えないのは仕方ないし、だいたいどんなゲームでもPvPにスキルを持ち出したりしない。魔法だって使っても最下級。でないと隙が大き過ぎてまともに戦えないし、その隙で簡単に殺される。それはコトブキ相手だけじゃない」
「まあ、そうね。プロゲーマーも同じところは狙ってくるし、ゲームによってはモンスターでさえ狙ってくるもの。クールタイムならまだいいけど、硬直は色々とマズいわ。それが大きいヤツは使えない子認定しておかないと」
「ま、とりあえず覚えてからだろ。今はランクが上がっただけ良しとしないとな。それより豪雪山に行こうぜ。向こうの素材も採っておかないといけないだろ。特にトレント」
「あそこのトレントは未だに使えるからトレントだけにしようか。バイゼル山の鉄とか銅なら良いけど、白曜石とか既に使われてないから碌に売れないし、4陣相手に商売しなくてもいいしね」
「それはそう。あそこの石とかを掘るくらいなら、ウェズベア森に行ってウェルズベアーを狩る方がまだ売れる。コトブキの作ったライダースーツを模倣しているプレイヤーも居るぐらい、まだ売れ筋」
「何だかんだと言って防御力も魔法防御力も高いからな。そのうえインナーというか、上から防具も着けられる。そう考えると十分な防御力だろ。4陣まで含めて欲しがるヤツは多いさ」
「錬金術師か皮革師だけが作れる、完全一体型のライダースーツですからね。思っているよりも需要が減ってませんし、着ている人もそれなりに居るそうです。なかなかにチャレンジャーだとは思いますけどね。ラインが出るので」
僕達は一旦師匠の家に戻り、マイルームで防寒着に着替えてバイゼル山へ。ユウヤと合流したら豪雪山へと行き、久しぶりのトレント退治だ。ここにはアイススライムも出るので、魔鉄関係の為にも倒しておく必要がある。
ラスティアが面倒臭がって【ファイアウェーブ】を連発するもんだから、イルも【ファイアウェーブ】を使って根こそぎ攻撃し始めた。御蔭でブレスを吐かれて臭い思いをする羽目に。
「ラスティア。久しぶりだからって調子に乗ったんでしょうけど、貴女が始めた所為でとんでもない悪臭です。反省して下さい。あと、前に来た時に比べてトレントが増えてませんか? 御蔭で酷い目に遭いましたよ」
「確かにトレントが増えてると思う。実際に調べた訳じゃないけど、体感ではこんなに多かった記憶は無いかな。何がしか増えてる理由があるのかもしれないけど、ちょっと分からないね。何故だろう?」
「単なるアップデートで増えただけじゃない? それよりさっさと向こう側も狩りに行きましょう。このままダラダラしてても無駄に時間を使うだけだし」
確かにそうなのでトモエの言う通りに移動し、反対側のトレントも全て倒す。終わった僕達はバイゼル山に戻って鉄を掘る。未だにプレイヤーマーケットでも鉄の需要は落ちていない。
魔鉄に使うからだけど、それだけじゃなく4陣は鉄として使ってる。なので需要が落ち辛いんだよね。値段を上げたり下げたりは出来ないけど、代わりに需要予測をしっかりしておかないと売れない在庫が山積み状態になる。
僕みたいな錬金術師は売れない在庫を適当に【錬金術】で使えばいいんだけど、そういう人ばかりじゃないからね。だからこそ売れないと困るんだよ。特に値段を下げる事も出来ないから安売りで在庫を吐き出す事も難しい。
結果として売れない物をNPCに売りに行く人も多いって、大分前に掲示板に書かれていた。おそらく今も変わっていないと思う。流れとしては変わるものじゃないしね。
バイゼル山での鉱石掘りを終わらせた僕達は、師匠の家へと戻りマイルームへ。ソファーの部屋にファルを呼び出した後、僕はマイルームへと戻って精錬作業を始める。錬金部屋に行って作業をすると、今までに比べてスムーズに出来た。
これが良い事か悪い事かは分からないけど、とりあえず品質は上がったので意味はあったんだろう。僕は錬金部屋でついでにイルの小太刀を作ると、全ての作業を終えてソファーの部屋へと戻った。
それからお昼の時間まで雑談をし、昼食を食べたらマイルームへと戻ってログアウト。リアルでも昼食を食べたら、雑事を熟してからログイン。今度は暗闇ダンジョンへと行く。皆も聖結晶が気になっているらしい。
僕達は素早く駆け抜ける事を決め、再び50階から始める。流石にそろそろここを突破しておかないと、いつまでも50階付近で足踏みも困るんだ。イベントとか色々あった所為で長い期間、停滞し続けているしさ。
せめて60階まで行ってから各ダンジョンに潜りに行きたい。皆も似たような事を思っているみたいだし、60階のアイテムも知りたいみたいだ。聖結晶以外にも有用な物は出るかもしれないし気になるんだろう。
出てくる魔物は変わっていないので、僕らは倒しながらさっさと進む。星兜だけはナツが狙ってるけど<幸運のハチマキ>は出ないみたいだ。やっぱり一度逃した物は簡単に出たりはしない。
今までのゲームでもそうだけど、逃がした獲物ほど大きいって事だろう。それでも今までよりは楽に敵を倒して進めている。おそらく<屍人の森・深層>でのレベル上げが効いているんだと思う。それと仲間達の訓練場での練習、これも大きかったみたいだ。
連携が上手くなっているのと、隙が大きく減っている。今までは力押しの部分もあったんだけど、そこが無くて素直に引くようになっているんだ。特にセナが。
「アイツ、マエニデルダケジャタオセナイ。ダカラ、ダメナラニゲル」
「うん。それは正しい。押して駄目なら引けって言葉もあるけど、無理なら無茶はせずに下がる事も重要だよ。そもそも戦ってるのは1人じゃないんだしね」
「影の剣士3体を1人で討伐は無理なんだから、駄目なら下がるしかないわな。流石に誰もが無茶すんなって怒るぞ」
無茶なんだろうか? いちいちやる気は無いけど、暴走してる僕なんだから上手くやれば倒せる筈だけどなぁ……。




