0594・運営さん達38
2001年 1月6日 土曜日
「さて、今日からゲーム運営の仕事も再開だが、第五回のイベントの用意は出来ているな? セントラルに精査させていたから問題は無い筈だが、最後の確認だ。特に黒チームのマニュアルモーションが機能しているかは調べておいてくれ」
「問題ありません。先ほど2回目のチェックを終えましたけど異常なし。既に全てのチェックは終わっています。……流石に新年一発目でコケるのは勘弁してほしいですからね。皆も気合い入っていますよ」
「その気合いで空回りしたり滑らなきゃ良いんだけどな。ま、ここまで来たら信用するしかないんだが……。さて、そろそろプレイヤーが入ってくるぞ」
「ログインしてきましたね。こうして見ていると、新年明けても行けそうな気がしてきます。このタイプのゲームは本当に水物ですからね。人気がコロコロ変わっていきますから、急に過疎ったりするのがどうにも……」
「その辺りは運営会社の何処も苦労しているところだ。売り上げを上げなきゃいけないが、かと言って凡庸な物や高額の課金系ゲームはな……。離れるのも恐ろしく早いし、開発費の回収不能も多いんだよ」
「課金させるだけのゲームは、課金すれば誰もがストレスなく出来ますからね。代わりにストレス無さ過ぎてすぐに飽きますけど」
「そうだな。ゲームにはストレスがないとつまらない。昔のゲームの方がとよく言われるが、それはストレスが掛かるからでもある。そのストレスが抜ける時に人は快感を覚えるからな。言うなれば筋トレにハマる人と一緒だろう」
「ストレスが掛かれば掛かるほど、それが抜けた時の快感は大きい。だから難易度調整が大事になってくるんですよね。ストレスが掛かるだけで突破できないとクソゲーですし、簡単過ぎるとヌルゲーと化しますから」
「そう。結局のところ、ゲームにとって一番大事なのは難易度調整だ。これ1つで名作にも駄作にもなる。もちろんビジュアルとかサウンドとか色々あるが、ゲームの本質と考えれば難易度が全てだろう」
「そういう意味ではレトロゲームの方がストレスが大きいので、クリア出来た時の快感もレトロゲームの方が大きいんですよね。今の子供達だとクリア出来ないのでストレスが溜まるだけなんでしょうが」
「それでも最近はレトロゲームが見直されたりしているぞ? 攻略サイトを見れば攻略出来るというのも多いからな。あれらを作っている有志には頭が下がる想いだよ。その攻略サイトの御蔭でちょうど良いバランスになっているゲームもあるからな」
「知らない所にパワーアップアイテムがあったり、残機アップがあったりするんですよね。そういうのがあると楽になるので、クリアは難しくなくなりますか。後は3Dダンジョンゲーも、マップ見ながら攻略すると楽ですからね」
「自分でマッピングしながら攻略するのが楽しいのだが、それは最初だけだからな。歳をとってまたやるなら、攻略サイトのマップを見るのは当たり前だ。そもそも子供の頃に書いたマップなんて実家にも残ってない」
『プレイヤーネーム<コトブキ>が、最凶ダンジョンの9戦目を突破しました。もも○ろうを無事攻略したようです』
「おお! 前回まさかの敗北を喫した彼が、今回は勝ったみたいだぞ?」
「それ本人の前で言うの止めて下さいよ? 嫌味にしか聞こえませんから。それにしても<ろ○かくの術>を使われる前に倒すとは……。気付きましたかね?」
「さあ? 彼の実力なら隙があれば殺すだろうからなぁ。狙ったかどうかまでは不明だ。ただ、ももた○うは最後の一人にならないと<ろっか○の術>は使えない。だからそうなる前に勝てばいい」
「犬と猿は何も無いですけど、雉はも○たろうと2人だけになったら<いか○ちの術>を使ってくるんでしたっけ? <だ○ぢぢ>の術じゃなかったですよね?」
「アレは使ってきちゃ駄目だろ。<ど○かんの術>ぐらい駄目だと思うぞ?」
「忍者○ホイですか? そういえばあっちも用意してるんでしたっけ? 何の術が使えるかは忘れましたけど」
「<き○ねびの術>だな。<ぴろ○んの術>はともかく、<ぶん○んの術>ぐらいは良かったと思うんだが、それじゃ攻略不能だったらしい。<ミラクルぶん○んの術>だったのが失敗だったんだろうな」
「ミラクルって一番上じゃないですか。そりゃ無理でしょ」
「そろそろ公式イベントが始まりますから、真面目にやって下さーい!」
「「了解」」
…
……
………
「一日目だから大した事も無く終わったな。サプライズ武器は2日目だから仕方ない。今日ので多くのプレイヤーは慣れただろう」
「ですね。明日からの隠し武器に誰が気付くか楽しみです」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2001年 1月7日 日曜日
「さて、今日からマップにサプライズ武器が登場するんだが……。誰かさんは朝からパイレーツを突破したみたいだ。まあ、彼なら近接戦を挑むのは当然だから、この結果は予想できていたがな」
「これで彼は最凶ダンジョンに限り一旦終了ですね。まだ通常ダンジョンや運営ダンジョンには手を出していないようですし、そっちの攻略を始めるでしょう。そんな暇があるか知りませんけど」
「ビスティオとエルフェリアの戦争1回目が始まりますからねえ。どこまでビスティオは頑張れるのかが見所でしょう。案外と彼は活躍しそうな気がします。【木魔法】の特性を知ってますし」
「………【純潔】の天使が選んだのか。まあ、特性を知っていても厄介な事に変わりはないんだがな。徹底的に嫌がらせをしてくるという、意地が悪く性格の捻じ曲がった連中だ。どれだけのプレイヤーのヘイトを集めるか楽しみでもある」
「そろそろイベント開始ですので、リアルタイムのチェックを各自しっかりお願いします!」
…
……
………
「やはり彼が一番最初に手に入れたか。しかも汎用性と攻撃力の高い<水刃の小太刀>を手に入れるとはな。アレのドラゴノイドは相当の難敵なんだが、まさか強引に目から突き込むとは……。こちらの予想していない攻略法だぞ」
「普通は他のところで手に入れてきた隠し武器を使って倒すんですけど……。完全に無視して、自力だけで突破しましたね。ワンチャン【水刃】っぽい言葉を言って発動するのは考えましたけど、自力は完全に予想外です」
「サプライズ武器は全部で6マップにあるが、火山が最初にくるとは運が無いと思ったんだけどな……。無理矢理にこじ開けるとは、天晴れと言うしかない」
…
……
………
「次は管槍か。アレを上手く扱うもんだよ。普通の槍に比べて難しいんだがな」
「あの薩摩隼人が凄い速さで狂いましたね。もちろん狂化状態になるのは設定されてるんですけど、ビックリする程に早かったのは想定外ですよ。その所為で難易度は上がってる筈なんですが……」
「彼にとってはそんなものだったのだろうな。これで太刀と小太刀と管槍か。また少々掲示板が騒がしいだろうが、すぐに落ち着くだろう。出会えるかどうかは運だし、そもそも倒さねば手に入らんからな」
…
……
………
「これでイベントは終了だ。お疲れ様だが、最後の戦いはメチャクチャだぞ。破滅は彼のデータを元に新たに改良した筈だろう? 何で彼は互角に戦ってるんだ。破滅の反応速度は人間を超えている設定なんだぞ」
『反応速度は遅くとも先読みで回避しておる。あの速度だと小手先の技が入る余地が無い。それはコトブキも分かっておるのだろう、それ故に妾の動き出しから動きを始めておるのだ。故に間に合う。体当たりは上手くいったが、その後が続かんかったのが答えじゃの』
「冗談でも何でもなくシャレにならないですね。今までもそうですけど、まだ手加減してたって事ですか?」
『そうではなく、VRだから限度があるという事じゃろうの。それでも少しずつ現実に寄せているのだ。問題は現実のスペックが非常に高い事であろう。こと殺し合いに関してのみはな』
「そう、だろうな。天兵氏が己の業を託した子供だという事が改めて分かった。そう思おう」




