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0587・第五回公式イベント その11




 管槍の柄は約2メートル、穂先は20センチ程と小さめだが分厚い。突き刺す際の威力を考えると、穂先の長さはそこまで必要ないんだ。人間なんて10センチも穂先が刺されば、後は出血で死ぬ。


 そもそも10センチも刺されば内臓が傷付く可能性が高いし、内臓が傷つけられただけで重傷、もしくは重体だ。その時点で死亡確率は極めて高い。ま、ゲームだから人間相手の物が効くかは別だけど。


 その管槍を敵に向かって構える。叫んで濃密な殺気をぶつけてきたものの、落ち武者は右手に太刀を下げているだけで動かない。ただし動かないだけで、隙は極めて少ないね。前のマップのドラゴノイドもそうだけど確実に強者だ。


 それもお仕置きモンスターとは違う、1対1に特化した強者。何故かは分からないけど、元々マップに隠れてたんだろうか? それとも2日目から解禁された? 掲示板にも隠された武器を見つけたとかの書き込みは無かったような……。



 「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 目の前の落ち武者が動き出した。僕は管槍の圏内に入った落ち武者に対して即座に槍を突き出すが、それは落ち武者に弾かれそうになる。しかしそれを引き戻してスカし、再び落ち武者に突き出す。今度は首下だ。


 しかし落ち武者はギリギリで回避して右に跳んだ。相当の反射神経をしてる。鬼一法眼よりは遅いけど、<BUSHIDO>の中でも速い方に分類されるだろう。思っているよりも強敵かもしれない。更に気を引き締めよう。


 落ち武者は刺さったままの矢や鉄砲の穴が見える顔を狂気に染めてにじり寄ってくる。反対に僕は静かに待つ。その内に殺意をたぎらせながら。


 再び落ち武者が叫びながら向かってくるものの、僕は再び槍圏内ギリギリで突き始める。今度も胴の中心だ。最速の突きで攻撃するものの、速度を優先にした手打ちの突きなのを読まれたらしい。今度は弾こうともせず突っ込んで来る。


 落ち武者の鎧に弾かれた穂先は横に滑るが、それを素早く引き戻しつつ、僕は槍を縦に持ち落ち武者の斬撃を流す。実はこの管槍の手管はガードが付いている物で、西洋剣のように手を守る事が出来るようになっている。


 流した僕は落ち武者に対して左肩から体当たりをして転倒させ、槍を向けて即座に突く。首か顔を狙ったものだったのだが、落ち武者は太刀で逸らしてから転がって逃げる。予想以上に冷静に動く奴だな。これは長期戦になるかも。


 離れた落ち武者は壁が近くであった為、すぐに僕に向かって太刀を水平に薙いできた。しかしバックステップで離れた僕は再び構えて敵の動きを待つ。元々リーチはこちらの方が長い。で、ある以上は後の先をとった方が有利に戦える。


 なので僕からは先に動かないんだけど、何だか落ち武者が狂気の顔で笑い始めたね? 何かイヤーな感じがしてきた。



 「カカカカカカッ! ケヒィ!!」



 変な笑い声を出した瞬間、今までは<無行の位>のように構えていた落ち武者が、いきなり八双の構えをとり始めた。いや、それを更に上に上げて左足を前にして構える。これって間違いなく<蜻蛉の構え>だよね? っていうか示現流の人だったの!?。



 「キャァァァァァァァァァァァ!!!」



 まるで女性の叫び声のような<猿叫>を上げて振り下ろされる太刀。嫌な予感のした僕は即座に太刀の先から逃れるように横っ飛びで跳ぶ。すると落ち武者の太刀の先から稲妻が走り、僕の居た所を通り過ぎて本堂の壁を直撃した。


 爆発などは起きていないけど、何あれ!? 幾らなんでも反則でしょうよ! 僕も<水刃の小太刀>を持ってるから他人ひとの事は言えないけど、水と稲妻じゃ速さが違い過ぎる! かなり速めに跳ばないと回避できない。



 「確かに<雲燿うんよう>って稲妻のようにって事だけどさぁ! 本当に太刀から稲妻が出るっておかしいでしょうよ!!」


 「キェェェェェェェェェェイ!!!」



 あーあー、示現流の人で薩摩の人ならこうもなるだろうさ。くっそ、敵の想定が甘すぎた。示現流か薬丸自顕流か太刀流かは知らないけど、尋常じゃないよ。コレには本気で戦わないとおそらく勝てないだろう。なんでこんな頭のおかしい人を用意するんだろうね!。


 僕は再び<蜻蛉の構え>から袈裟に振り下ろそうとした落ち武者の、その手を狙って突く。相手が始動してからでも素早く突ける管槍だからこその攻撃だ。それは狙いをあやまたずに直撃し、相手の攻撃を止める事に成功した。


 すると落ち武者は槍の穂先が刺さっている左手を鬱陶しそうに払いつつ、右手一本で突きに来た。確かに落ち武者だから死んでるだろうけどさ、不死性をもって戦うのはズルくない!?。


 僕は体を半回転させて落ち武者の突きを回避すると同時に、抜いた槍を掬い上げる形で石突側を使って足を薙ぐ。それは直撃したものの、落ち武者を転倒させるには至らなかった。


 接近戦状態ではあるが、落ち武者は更に接近して頭突きをしてきたが、これに対して僕も頭突きを返した。そうそう好きにはさせないよ!!。



 「ギヒィ!!」


 「痛いなぁもう!!」



 僕が前蹴りで落ち武者を蹴ると、流石に落ち武者も後ろへ下がる。その瞬間を狙い定めたかのように僕の槍が首下に突き刺さるも、そのまま太刀を突き出してくる落ち武者。だからそれ卑怯でしょうが!!。


 僕は槍を斜めに押し出すように使い、落ち武者との距離を空ける。斜めだったのが功を奏したのだろう、落ち武者の太刀は空を切り僕にチャンスが生まれる。それを捨てるような僕じゃない。


 穂先を抜くと同時に槍を捨てた僕は、<水刃の小太刀>で抜き打ちをしつつ【水刃】を使う。首を狙ったのが上手くいき、僕の攻撃は落ち武者の首を刎ね飛ばす。そのまま残心していると、落ち武者は消えたものの太刀と鞘だけが残った。


 僕は槍を拾い上げ、小太刀を右腰に差し、落ち武者の太刀を左腰に差す。丁度そのタイミングでウィンドウが出現、僕の勝利が確定したようだ。



 ―――――――――――――――


 おめでとうございます。マップに隠されたモンスター、<雲燿うんようの薩摩隼人>を討伐しました。ここからは死亡しても<嵐の管槍>と<稲妻の太刀>を無くす事はなく、持って帰る事が可能です。他にも隠された武器はありますので探してみましょう。


 ―――――――――――――――



 嵐ねえ……。相変わらずだけど、名前が分からないと使えないのは何とかしてほしいよ。



 「【嵐】!!」



 管槍を構えて突きながら使うと、石突から嵐の力で押し出されたかのようになり、前につんのめってしまった。コレ優秀だけど、扱い方を考えなきゃいけない。自分で制御出来ないほどのパワーで突く事になる。


 左手の手管に右手が当たるだけじゃなく、その右手で前に押し出されるんだから厳しい。敵に使うと刺さり過ぎて困った事になるかも。よく考えて使うべきだね。


 とりあえず分かったので本堂の中で時間が過ぎるのを待ち、僕はゆっくりと休憩する。それにしてもさっきの<雲燿うんようの薩摩隼人>は強かった。出来れば管槍で倒したかったけど、それが難しいレベルで強かったもんなぁ。


 正直に言って適正距離が噛み合ってなかったから苦労したけど、小太刀で戦ってたら非常に面白い事になってたと思う。管槍での戦いに拘るんじゃなかったと微妙に反省するくらいだ。


 本当に勿体ない事をしたよ。あそこまで楽しめる相手はそうそう居ないのにさ、槍しかないならまだしも小太刀を持っているのを忘れて集中するなんて情けない。戦いに集中し過ぎるのは良くないっていうのに、まったく。


 ………この調子で武器を集めると、何だか武蔵坊弁慶みたいになりそうだね。千本も集めたりしないし、あれ創作だけど。


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