0584・第五回公式イベント その8
2001年 1月7日 日曜日 AM6:22
昨日は10戦目が終わった後でログアウトし、その後は夕食とお風呂などを済ませて再ログイン。カンダ○を周回してポイントを稼ぎ、川のランクアップを果たした。ダンジョンなども攻略しなきゃいけないのだが、それは後のお楽しみというところだ。
今はイベント中なので、通常ダンジョンにも運営ダンジョンにも行っていない。というか行く暇が無いと言った方が正しいね。そもそもダンジョンの新エリアだって去年の年末に追加されたばっかりだし、そんなに急ぐ事でも無い。
今はイベントを恙無く終わらせる事の方が大事だ。最後にどれだけポイントが残るか分からないが、川のランクアップまで出来たので、特に今のところ必要なものは無いんだよね。だから無理に稼ぐ必要は無い。
とはいえ油断して倒されると腹が立つから、全力で抗うけど。それはともかく、そろそろログインしておこう。このままダラダラと考えていても仕方ないし、今日もイベントだから昨日と同じく早めに雑事を終わらせたからね。
ログインして準備をし、今日も終了まで必死に逃げ回ろう。武器を持たない方が良いかとも考えていたけど、最初のピンクゴリラは武器の無い方を追いかけたりしていたし、たぶん武器の有無は関係ないんだと思っている。
特に最後のステージも同じだった。あそこも武器の有無は関係なく襲われたし、そこに色も何も関係が無かった。なので平等に近いヤツから襲われるんだろうね。もちろんそれぞれのお仕置きモンスターで挙動は違うんだろうけどさ。
マイルームでウダウダ考えつつラスティアとキャスティとファルに召喚する事を伝え、ソファーの部屋に移動したら召喚。ソファーに座るとすぐにイルが腕を絡めてきた。
「昨日、コトブキは黒チームだった?」
「申し訳ないんだけど、それはノーコメントかな? その時点で分かるだろうけど、一応ね。喋ってポイント減らされたりとかは嫌だからさ」
「おそらくコトブキは一度も殺されてない。このままだとポイント総取りになる可能性が高いから、なんとかするべき」
「なんでさ。僕が何とか逃げ回って得たポイントなんだから悪くないでしょ。そもそも結構な苦労をしたんだよ? それだけのリターンはあって然るべきだよ」
「私は昨日1死で突破したけど、イルのその言い方だと結構死んだのね」
「………」
「私は昨日ピンクゴリラにやられたのがちょっとイヤ。あのゴリラ最低なのはキスしてくるし、抱きついて抱き締め潰してくるんだよ。碌なゴリラじゃない」
「そもそもゴリラに対して碌なやつ云々と言ってもしょうがない気はするけどね。お仕置きモンスターが居る以上は逃げ回るしかないでしょ。小さなイベントだって言われれば確かにそうだけど、擦りつけ合いは喧嘩に発展しやすいわねえ。もちろんワザとこんなイベントにしたんでしょうけど」
「擦りつけるっていう行為が既に嫌がらせですもんね。アレをやりあうイベントっていうのも、なかなかに捻くれてると思います。私なんて昨日1日で4回も死にましたよ。本当に酷い目に遭いました」
「師匠や聖人の人達も居たんだろうけど、いったい何処に居たんだろうね? 結局見かける事は無かったなぁ」
「カンカン」
ファルが呼びに来たのですぐに朝食にし、終わったらソファーの部屋からマイルームへ。昨日でどうなるかは分かっているので、マイルームに3人を引き上げさせてから個室で待つ。すると昨日と同じくウィンドウが出た。
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貴方のチームカラーは金に決まりました。頑張って下さい!
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あれ? 今日も黒じゃないの? まあ、いいけどさー、何か嬉々として師匠が襲ってきそうな気がする。今日1日は特に気をつけて過ごそう。金色チームの控え空間に来たけど少ないな。もしかしたらポイントが多いプレイヤーが金色なのかも。
「何か嫌な予感がするんだけどよー。金色ってポイントが大量のチームなんじゃねえの? 昨日オレは1死もしてねえんだけど、お前らはどう?」
「こっちも1死もしてないな。もしかして他の連中もか?」
周りも全員首肯している。僕も首を縦に振ったけど間違い無い。だから今日はココに入れられたんだな。代わりに黒チームは増えてるかも。そういう意味でも嫌な予感が増してきたね。
その後は誰ともなく光の扉に入ってスタートしていく。幾ら同じチームとはいえ、情報を与えるような真似は誰もしない。共有したのも1死もしていない事だけだ。
僕も光の扉に触れて飛ばされると、目の前の景色は中世の町中だ。どうやら騎士が出てくるところに飛ばされたらしい。試しに建物の扉を開けようとしてみたが開かなかった。しかし入り組んだ地形なので逃げやすいかもしれない。
まずは武器を手に入れようと思ったら、早速青色のチームの誰かが僕に対して走ってきた。気配で分かっていたので右の拳を避けると、そのまま相手の股間を蹴り上げる。直撃を受けた相手は思わず股間を抑えて悶絶し始めた。
その隙にさっさと逃走し、僕は事無きを得る。昨日と違いコボルトではないので、流石に噛み千切って殺害はし辛い。無理に殺す必要もないので逃げた方が手っ取り早いだろう。追いかけてくる気配も無いし。
そのままウロウロしていると、路地にて箱を発見。開けて中を見るとスティレットが入っていた。まあいいかと思いつつ右手に持ち、これでようやく身を守りつつ敵を殺せると思っていると、早速「ガシャガシャ」音がし始めた。
悲鳴も聞こえる為、間違いなくプレートアーマーの騎士が巡回してるんだろう。しかしこれでスティレットとはね。お仕置きモンスターを殺せという事だろうか? それとも中世の雰囲気だからだろうか。
そう思いつつプレートアーマーの音からは遠ざかるものの、別の方向からも「ガシャガシャ」と音が聞こえてきた。どうやらオネエゴリラなどとは違い、ここのお仕置きモンスターは複数らしい。
路地が入り組んでいたりする所為だろうか? しかしお仕置きモンスターが複数とかマズい気がするんだけどね?。
「っと。まさかこんな狭い路地で会うとは、ね!」
僕は素早くお仕置きモンスターとは逆側へと走り、路地を抜けていく。周りにプレイヤーが居る通りへと出てくると、すぐに左手で引き摺り倒して逃げた。自分が助かる為には誰かを囮にしないと無理だ。
「ギャッ!!」
「ああ、悲鳴が短いのは切られたからか。オネエゴリラみたいに鯖折で苦しめたりしないからね。騎士だし、一気に首を刈って終了かな? とにかく僕は、っと、危ないね!」
走っていると目の前のプレイヤーが急に殴りかかってきたので避け、首にスティレットを突き刺し、捻りながら抜いて逃走した。その後はどうなったか知らないけど、僕は興味が無いからどうでもいい。
他にも金色が珍しいから向かってくるプレイヤーが居るが、僕は上手くかわして刺しつつ逃走を繰り返す。手を出してくるプレイヤーが鬱陶しいけど、騎士に対する生贄には使えるので微妙なところだ。
助かっている部分も多く、騎士の攻撃も剣での斬撃なのでかわしやすい。僕にとっては色んな意味で楽な地形だったと思う。今は金色チームの控えの場に戻ってきているけど、他の人達は随分と死んだようだ。
「くそ! 金色のチームなんて、どう考えても狙ってくれって色じゃねえか! 運営からの嫌がらせが過ぎるぜ!!」
まあ、簡単にポイントをくれないのは仕方ないんじゃないかな? それじゃ楽しくないだろうしね。………運営が。




