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0057・ユウヤと屍人の森へ




 僕達はゼット町に着き、門番に話して中に入る。その際にシャルロットさんの種族名が<オリジン・ジャイアント>である事を知った。途端に門番がかしこまり、うやうやしい態度をとったのにはビックリしたけど。



 「どんな種族でも同じだけど、一定以上のレベルに達すると種族として高位になっていくの。その最高峰が始祖と同じになるという事なのよ。一応かつての私も<オリジン・サキュバス>だったのよ? 今やその欠片も無いけど」


 「そうなの? 短剣に封印されるとそこまで弱くなるのかー。……それとも大悪魔がそうしたのかな?」


 「大悪魔のヤツでしょうね。ま、もう一度鍛え上げれば済むとも言えるんだけど、ゆっくりでいいわ。もしかしたら面白い事も見つかるかもしれないし。それより何処で盾を売るの?」


 「えっと、防具を専門で扱ってるトコがあるらしいんですよ。コトブキの師匠が紹介状を書いてくれまして、一見いちげんじゃ売り買い出来ないトコらしいんですけど……地図ではあそこですね」


 「倉庫……?」



 唯の大きな倉庫を指差すユウヤ。……うーん、海外の倉庫を流用した大型店舗って感じなのかな? 雑多に物が大量にあるのか、それとも区画毎に整理されているのか。入ってみなきゃ分からないけどね。


 そう思って僕達が近付くと、「なにもんじゃ、おのれら!!!」とデカい声で怒鳴られた。どうやら大きな声の主は巨人族らしい。その声の主はシャルロットさんを見た途端、地面に土下座を始めちゃったよ。



 「申し訳ございません!! 始祖の方とは知らず、とんだ無礼を!!!」


 「あー、あの……師匠はちょっと人見知りでして、弟子の自分が仲介します。で、<エンリエッタ>さんから紹介状を貰って来たんですけど……」


 「うぇあ!? 魔女様からぁ!? ……ワシの命はここで終わりでしょうか?」


 「いやいやいやいや、俺達は師匠の作った盾を売りに来ただけなんですよ。今までは山に来る商人の人にだけ売ってたんですけど、それじゃあ流石に少ないって事で……」


 「山? ………ふぉあぁぁ!? それってもしかして、バイゼル山に住まれている<不沈のシャルロット>様じゃないですかい!! ど、ど、どうぞこちらへ!!」


 「いつの間にか<不沈>なんて二つ名までついて……随分時間が経ったのねえ」



 何だか懐かしんでるけど、お婆ちゃんみたいに見えるから止めた方がいいよ。もちろん口に出しては言わないけどね。それはともかくとして、中に入って色々と話した結果、シャルロットさんの盾を買い取ってくれる事になった。


 シャルロットさんの盾を見せてもらったけど、品質は当然のように10で、木で作られただけの盾も異常な耐久力をしていた。あれが本職の盾なんだなと、ハッキリ理解わかる程とんでもない物だったよ。


 十分な金額を稼げたシャルロットさんはホクホク顔だったが、ユウヤは何と言っていいか分からない顔をしていた。まあ、とんでもない金額だったしねー。そう思っていたら違ってた。



 「盾の値段は師匠の作った物だから当然だ。それよりも、その鉄製のメイスだよ。その大きさで2万だろ? ……たっかいなー、ビックリする程に高いんだけど、耐久力を見たら納得ではあるんだよ。破壊力も」


 「まあ、破壊力7は魅力的だよねえ。棍棒系は攻撃力よりも破壊力だし、相手を壊すという意味では凄い武器だからさ。僕も槍と棒を使うから、破壊力の高さはよく分かるし」


 「そういえばコトブキは剣とか刀とか使わねえの? 色んなヤツが刀を探してるけど見つからないそうだけどな」


 「やっぱりね。僕がラスティアに作った薙刀も、この世界には無いって書かれてたよ。グレイブはあるのかもしれないけど、薙刀は無いみたいなんだ。だから刀も無いんじゃないかと思ってた」


 「薙刀は無かったのか……槍はあるんだよな? 槍は西洋にもあったからか? となると東洋の武器が存在しない?」


 「だったらユウヤは大刀でも振り回せば良いんじゃない? 鍛冶師なんだし自分で作ってさ。もしくは戟でも良いんじゃないかな? 狼牙棒とか流星錘とかのマニアックな物でも良いとは思うけどね」


 「いや、何を言ってるのかサッパリ分かんねえ。それって、いったい何なんだ?」


 「流星錘は鎖の先に錘が付いてる武器だよ。つまり鎖分銅みたいな物。そして狼牙棒っていうのは、棍棒の先にトゲがいっぱい付いてる武器だよ。オオカミのキバの棍棒だから狼牙棒」


 「ああ、モーニングスターみたいな物か。違うのは西洋か東洋かってぐらいなんだろうけど、なかなか威力のありそうな武器だな? 試しに作ってみてもいいけど、面倒臭そうな武器でもあるなあ」


 「小さい金属の筒を作ってさ、それを使って金属で作ったトゲを打ち込むってどう? 山型のトゲの下を円状にしておけば、筒先でトゲを回避して打ち込めるじゃん」


 「成る程な。しかし、木の棍棒に金属のトゲを付けるのか? 何か値段が跳ね上がりそうだなぁ……。そんな金無いし、金が貯まったら金属製のメイスを作る方が良いと思う。流石に木の棍棒も壊れる時はあっさり壊れるし、何より修理できないからなぁ」


 「修理できるのは僕達のような錬金術師だけだろうねえ。流石に鍛冶師に木の棍棒を修理できるとは思えないし、そもそも武器として考えれば修理する必要があるのか疑問でもあるし」



 そんな話をしながら道を戻って行き、師匠の家の前まで来ると、唐突にユウヤが言い出す。



 「師匠。コトブキはここで戦ってるらしいので、俺もちょっとコトブキに付き合いたいんですが良いですか?」


 「ああ……構わない」


 「あ、私もシャルロットについていって温泉に行くから。<破滅>も行ってるみたいだしね」



 そう言ってラスティアも転移陣に乗って移動していった。僕とユウヤは顔を見合わせ苦笑すると、<屍人の森>へと入っていく。そのまま真っ直ぐに中層へと向かい、そこからは本格的な戦闘を始めた。



 「相変わらずだがエゲつねーなー。向こうが気付かない間に【身体強化】の投石で大ダメージかよ。不意打ちだから結構効いてるんだろうな、こんなにあっさり進化してる奴が倒せるんだしさ」


 「それもあるけど、ユウヤの木の棍棒の破壊力もあるでしょ。それ間違いなく危険物だよ。他の種族じゃまず持てない重量だろうし、正に物理攻撃そのものだろうからねえ」


 「だからこそ使ってるってのもあるんだけど、それにしてもスケルトンには効くなあ。ゾンビにも効いてるけどスケルトンはマジで簡単に倒せるぜ。どのみち金が稼げないなら、楽に倒せて経験値が美味い方が良いに決まってる」


 「そりゃそうだよ。とはいえ山って普通の生き物多そうだよね。僕なんてこの周辺だけだから、碌な生き物と戦った事ないよ。あるのはウサギとネズミだけだね」


 「それもそれで、何て言っていいか分からなくなるな。しっかしレベル上がるなぁ……ホント。骨の熊とかゾンビの虎とか、思ってる以上に経験値高いぞ。いやー、こんなのと戦ってたらそりゃレベル上がるだろうよ」


 「その代わり、最初の頃はビクビクしながら戦ってたけどね。ウィンドウに「危険ですけど進みますか?」って出たから、行けるかもって思って突入したんだよ」


 「危険だって言われてるんなら、行くなよ」


 「いやいや、最初は「高確率で死亡する」って書かれてたんだよ? それに比べれば危険は減ってるんだから、行くでしょ」


 「まあ、その状況なら行くか……」



 流石に最初から危険に突っ込んだ訳じゃないんだから、普通だと思うけどね?。


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