0563・カップルリング取得
2000年 12月30日 土曜日 AM6:48
麓の家で過ごすのも今日の朝で終わりだ。大型アップデートは2日掛かったらしく、それは昨日の時点でスマコンで調べたら出ていた。おかげで椿は大喜びで襲ってきたけどね。
今は帰る準備をしている最中だけど、何故か抱き付いてきて離れようとしない。
「もう一日無理? お義父さんとお義母さんは明日だって言ってた。だからもう一日愛し合える筈」
「はいはい。いつまでも居ると堕落するからね、ちゃんと当初の予定通り帰ろうか。それに帰ってカップルリングの申請とか色々としないと、お正月になったらログイン出来なくなるよ」
「むう……うちの旦那が淡白で困っています。どうしたらいいでしょうか?」
「なんで相談風なの? ついでにこの2日はビックリするほど濃厚だったじゃない。淡白なところなんて欠片も無かったよ」
「それは確かにそう。何回もタマに襲われたし、もうお嫁に行けない」
「もう椿は僕の嫁なんだから、今さらじゃん」
「//////」
「照れるなら、「お嫁に」とか言わなきゃいいのに。いや、むしろ言われたいから敢えて言ってる?」
「………」
どうやら聞きたかったから敢えて言ったらしい。まあ、それは良いんだけど、そろそろ運転手さんも来るしダラダラしていられないんだよね。7時までに椿にも服を着てもらわないと。
「椿、そろそろ運転手さんが来るから服を着ようか。今回も迷惑を掛けるのは流石に駄目だからさ」
「……仕方ない。いつかは終わるもの。残念だけど、またあるかもしれないから、その時を期待する」
「連続で休みの日が続くなら大丈夫かな? 流石に日帰りでは色々とキツいし、ゆっくりできないからね」
「確かにそう。ここに来てるのに慌ただしいのはちょっとイヤ。出来るだけゆっくりしていたいし、両親が使わせてもらうのも分かる。ベッドもお風呂もそうだけど、色々と充実し過ぎてて凄かった」
「まあ、ウチだけじゃなくて、使う人達が色々と考えてお金を出してカスタマイズしたらしいからね。お金持ちの人は多いし、自分なりにアレンジしたかったんじゃない? ついでに他の人のも見れるし」
「何となく分かる。こういうのも良いっていう発見になるというか、だからこの2日は楽しかった。アレを付けたの誰とか、コレを付けたのは誰だろうと考えたし」
「そこはスルーしてあげようよ。深堀すると自分の両親に当たる可能性もあるからね。そうなると色々とダメージ受けると思う」
「むしろセンスが同じな可能性もある。それだったらGJと言いたい。そして姉さんにもここの事を教えておく。<FUJIYAMA>もウチも堂々とホテルは使い難い。変な噂をされるかもしれないし、そんな時にここは便利」
「まあ、元々その為の場所なんだけどね」
「ここなら友哉が暴走しても、ありあまるリビドーを発散出来る筈。ただし姉さんが怒らなければ」
「桜さんが椿と似てるなら、全部受け入れそうな気がするけどね? 誰かさんは僕より積極的に色々としてたじゃん」
「………」
「こらこら。目線を逸らさ「ピンポーン」ない。って、来たよ。戻ってくるまでに服を着てて、僕は出る準備が出来てるかもう一度確認してくる」
ガスよし、水道よし、電気……は僕達が居た部屋くらいだね。よしよし、全て終わってる。椿も準備が出来ていたようだから、玄関を出たら鍵を掛けてっと……。よし、これで全て終了。それじゃ、帰ろうか。
家に着いたのは良いんだけど、離れたくないからか車内でも濃厚に絡んできたなぁ。あの運転手さんから使用人の人達に伝わるのは間違い無いね。椿は大丈夫かな?。
「ただいまー」
家に入って鍵を掛けると、父さんに白山の麓の家の鍵を渡す。すると、母さんとすぐに準備をし始めた。どうやら今年は30日から行くらしい。まあ、お好きにどうぞと言ったところかな。
「静はもうゲームしてるみたいだから、後はお家の事お願いね。それじゃ!」
「いってらっしゃい。慌てて行って事故なんか起こさないようにね」
両親を見送った後、再び玄関に鍵をしたら、とりあえず洗濯物などを確認する。どうやら特に無いようなので掃除をしてから部屋に戻り、早速ゲームにログイン。久しぶりに皆に会うとするかな。
ゲームにログインしたら、すぐにメッセージが飛んできた。どうやらユウヤも含めてソファーの部屋に居るらしい。僕は訓練場に行ってファルに声を掛けると、ラスティアとキャスティの部屋をノックして外から声を掛ける。
それぞれの部屋から返事があったので大丈夫だったみたいだ。アップデートの2日間は無かった事になってるのかな? それはともかく、さっさとソファーの部屋に行こう。
移動した僕は3人を召喚すると、椅子に座ってゆっくりとする。ソファーが埋まっていて座れないんだよね。ユウヤも椅子に座って話してるくらいだし。
「ようやく来たな、コトブキ。イルよりも遅いってどういうこった? コトブキを先に下ろしてる筈だろうに」
「洗濯物の確認とか両親が家を出たから見送ったりとかしてたし、その後に掃除してた所為じゃないかな? 遅れたのは」
「あれ? 2人とも30日なのに行ったの? ………それって絶対2人の所為でしょ」
「ああ、コトブキんちの元の家な。山の麓の家だろ? ウチの両親も使わせてもらってるトコらしいけど、俺は行った事って無いんだよなぁ。まあ、用も無ければ相手も居なかったから」
「なら今度、姉さんも連れて行けばいい。きっと喜ぶ筈」
「あそこに行くって、確定で何しに行くか分かるじゃねーか。とはいえ他に場所あるかって言ったら無いんだけどさ」
「大丈夫。姉さんに話したら絶対に乗り気になる。私が全て話しておくから問題ない」
「問題しか無さそうなのは俺の気のせいか? だいたい無理強いしそうで嫌なんだよなー、イルの場合」
「心配は要らない。そもそも無理強いする必要が無いし、姉さんだって喜ぶ物が色々とあった。ああ見えて姉さんも似たようなところがあるから大丈夫」
「それならいいけどよ……」
「よく考えたら、恋人の妹が姉をそういう所に行かせようとするって凄い構図よね。他にも色々と話してるんでしょうけど」
「その話はそれで終わりね。ここでされても私やトモエは困るから。それよりイルはカップルリングを申請しなくていいの?」
「忘れてた。コトブキ、すぐに申請する」
「了解。えーっと………ここに許可を出せばいいのかな?」
「そう。それで私とコトブキで申請された。あとは受理されるまでだけど………なかなか通らない? もしかして申請してる人が多くて順番待ち?」
「そうじゃない? 大型アップデート明けだし、恋人が居るなら堂々と申請するでしょ。ドロップ率が上がるんだしさ」
「着けてる本人達だけらしいけど、それでもドロップ運が少しでも向上するならアリだよね。物欲センサーさんは強敵だし、ドロップ確率を増やせるなら欲しい物の確率も上がる筈」
「それでもカップルリングは厳しいわね。それなら<幸運のハチマキ>の方がまだ良いわ。アレなら手に入る可能性もあるし、暗闇ダンジョンはこれからも行くし」
「そうですね。そっちを装備すれば運も向いてくるでしょう。壊れなければ」
「あっ、来た。申請が通って送られてきたのがコレ」
「僕の方も来たね、このハートの石が付いた指環。左手の薬指にしか装備できないんだってさ」
僕達はさっさと装備すると、着けている手同士で握ってみる。するとピンク色に輝きながらハートが幾つも飛び散るエフェクトが出た。どうも握っている間はずっと出続けるらしい。
「冷静に検証しているのを見ると、シュールな絵面にしかならないな。しかも2人ともだし」
確かにシュールな絵面に見えるだろうなと思うも、イルが放してくれないのでこのままだ。2人とも左手だから握りにくいんだけど……ああ、もうちょっとね。了解、了解。




