0556・家に戻ってログイン
微妙な空気になったもののホテルの前に車が来たので乗り込み、僕と友哉は適当に喋る。もちろん色々な言えない事は喋らないものの、当たり障りの無い会話に終始する。椿と桜さんは一緒の車で帰ったので、僕達が同じ車に乗る事になったんだ。
友哉を下ろした後で僕の家に行き、下ろしてもらったら挨拶して家の中へ。帰ってきた時には既に8時を過ぎていた。確認してみると何もされていなかった為、僕は洗濯や掃除を始める。
昨日も両親が帰って来ていない筈なので、今日の朝に洗濯物を置いて仕事に出たんだろう。御蔭で大量の洗濯物が置いてある。それらを洗濯機で洗いつつ、僕は1階から掃除機をかけていく。
いわゆるロボット掃除機、円盤型のアレはウチには無いんだよね。理由は僕が掃除するからと、それなりに段差とか色々あるから使い勝手が悪いんだよ。アレを使うとなると、わざわざスペースを広げなきゃいけないしさ。
掃除機の為にレイアウトを変えたりするの? って考えたら、自分で掃除するよねってところ。
掃除をしている最中に洗濯が終わったので、先に洗濯物を出してから2回目の洗濯を始める。一度で終わらない量だったので2回に分けたんだけど、2回に分けると少ないと思う量だった。こういう時って納得いかない微妙な気分になってくるんだよね、仕方ないんだけどさ。
1回目の洗濯物を干し終わったら掃除を再開し、終わったのでゆっくりしていると2回目の洗濯が終わる。それも干し終わったら、もう10時前だよ。随分と時間が掛かったなぁ。
終わったものの微妙な時間なので、<レトロワールド>にログインするもののマイルームで皆と訓練をする事にした。こんな時間からだと素材の収拾にも行けない。
ログインした僕は、すぐに訓練場に移動しようと思った段階でメッセージを受けた。何かと思ったらイルからで、すぐにソファーの部屋に来るようにと書かれてる。何かあったのか、それとも皆からの追求を逃れたいのか。ま、行くしかないね。
一応ラスティアとキャスティとファルに声を掛けておき、僕はソファーの部屋へと移動する。
「やっと来たわね。それにしても随分と遅かったんじゃない? いったい何してたのよ?」
「とりあえず3人を呼んでからね」
僕は3人を召喚し、ファルには早いのでこの部屋で待機していてもらう。
「遅かったとか言うけどさ、大量の洗濯物とか放置したままだったんだけど? トモエがしてくれていたらすぐにログイン出来たろうけど、それらを終わらせなきゃいけないんだから、すぐにログイン出来る訳ないじゃん」
「………さて、何の事やら」
「トモエに女子力が皆無なのはいつもの事だけど、流石に放ったままで何もしないのはどうかと思うよ?」
「適材適所よ、適材適所。だって洗濯機の使い方とか、洗剤の分量とか知らないし。後、干し方も色々あるんでしょ? そういうのも全く知らないから、私にやらせようとしても無駄よ無駄」
「………よく考えればですけど、トモエはコトブキさんが自分の下着を洗ってても気にならないんですか?」
「全然? 全く気にならないけど? そもそも型崩れしないように洗うとか、やり方全く分かんないし」
「……なんだかイメージと違う気がしますけど、気のせいでしょうか?」
「トモエは昔からこんなもの。特に気にもしなければ、むしろ周りの方が気にする。堂々とし過ぎな者が居ると、自分の方が間違ってるんじゃないかと思うけど、そんな感じ」
「そもそも堂々とサキュバスを選ぶんだから、その辺が繊細って事は無いよね。むしろ非常にトモエらしいかな?」
「褒めてないような、それとも褒めてるような……。よく分からない感じですね」
「私の事はいいのよ、私の事は。それよりコトブキとユウヤよ。どっちも詳しい話を聞かせなさい。ずっとイルは逃げてるのよ、そんな事は許されないわ!」
「誰目線なうえに何でさ? 許すも許さないも無いと思うけど、何故そこまでトモエが突っ込んで来るのか不思議だよ。他人の事だから楽しいんだろうけど、あんまり聞くのはどうかと思う」
「逃げてもそれなりには話してるから、既に微妙な気もするけどね。少なくともユウヤ君がサプライズで告白したのは聞いたから。そういえばコトブキ君は告白した? まさかせずにスルーしたりしてないよね?」
「ちゃんとしたよ。ね?」
「//////」
「おっと、コレはじっくり聞かねばならんのぅ」
「へっへっへっへっ、お代官様もなかなか悪うございますなぁ」
「何で急に寸劇が入るのかな? 明言したのはアレの最中だったから、イルからは話し難いんだよ。だから僕が言っておくけどね」
「………それはどうなんでしょう? それって告白って言いますか?」
「そもそも子供の頃からイルはずっとそうだったからね。僕がどうこうじゃなくて、イルから突撃している形だから何とも言えないかなぁって感じ。今さら僕からしても、形にはなるだろうけどインパクトが無いんだよね」
「ああ、分かる。普通なら「付き合って下さい」があるんだけど、イルは子供の頃からコトブキしか見てなかったし、違う女の子が近付くと即座に威嚇するのよねー。蛇みたいに「シャーッ」って感じに」
「私は蛇じゃなくて猫みたいに感じてたよ、だって毛が逆立ちながら威嚇してる風に見えてたから。私は許婚が居たから特に何も無かったけど、居たら威嚇されてたかも?」
「流石にナツを威嚇する事は無かった、と思う。うん、それは無い。多分……」
「自分ですら、そうしてなかった保証が出来ないんだもんねー。コトブキに女が近付いた瞬間、必ず反応するしさ。昔何度も止めたもの、ナツと2人で」
「そうそう。学校に登校する日はイルが暴走しかねない日だったから、本当に大変だったよ。VR授業じゃなく、昔と同じように学校に通わなくちゃいけなかったら、きっと私達は疲れきってたと思う」
「とにかくコトブキに好意がある女の子が近付くと気付くのよ、意味不明な勘で」
「それが絶対に当たってるから、余計に抑えるのに苦労したの。思い込みだとか、たまたまだとか言えないんだよ? 全部当たってるから」
「………」
若干アマロさんが引いてるね。とはいえイルは昔から変わらないし、気にしなくていいんだけど。
それよりユウヤの方に向かなくて良かったよ。自分の居ない所で話をされるのも嫌だろうしね。
「ま、コトブキとイルはそれでいいとして、ユウヤの方はどうだったの? パーティーにサプライズで登場して告白したんでしょ。その後はどうなったの? 付き合う事が決まったまでは聞いたけど……」
「……その後はパーティー会場になってるホテルの一室に消えていった」
「あらら。それを、さ……あの人が納得したって事よね?」
「うん。というより母と話し合ってサプライズを決めたみたい。うちの母とユウヤの両親とユウヤしか知らなかったって」
「という事は、ほぼ両方の親の公認でサプライズをやって、そのまま用意されていたホテルの部屋に入ったと……。相当にお膳立てされてるじゃない。ちょっと面白くないわね」
「それにズルいと言ってたら、次の日の一日分ホテルをとってくれた。そこで私とコトブキも1日中してた」
「あっそ。そういう生々しいのはどうでもいいわ」
「今日の朝にホテルの部屋を出たら、エレベーター待ちをしてた姉さんとユウヤに会った」
「何でそのタイミングなんですか!?」
「いやー、そんな面白タイミングだなんて、やっぱりイルは〝持ってる〟わねえ」
「どちらかというと、持ってるのはコトブキだと思う。朝起こしたのはコトブキだし、その後に襲ったらその時間になったから」
「その言い方だとイルが襲った事になるけど?」
「そう。朝から襲った」
「それ普通は逆でしょうよ。まあ、イルならやらかす気もするけどさ」
そこは納得されるんだね。アマロさん以外は全員納得してるし。というかラスティアとキャスティが納得してるのは何故?。
556話の誤字報告、ありがとうございました




