0555・まさかのサプライズ その2
2000年 12月25日 月曜日 AM8:26
昨夜は椿の愚痴に散々付き合ったから、ちょっと眠いかな? まあ、愚痴に付き合ったのもあるけど、VRの観光ソフトでデートしてたからでもあるんだけどね。ちなみに身体的接触は多少できるけど、手で触るくらいしか出来ない。
そんな中では物足りなかったかのか、必死にキスしたりとか色々としようとしてたけど、途中で断念して諦めてたね。よほど桜さんの事が羨ましかったのか、頻りに「姉さんはー」って言ってたんだよ。御蔭で宥めるのに苦労した。
さて、雑事も終わったし「ピンポーン」そろそ……誰? こんな朝早くから。流石に「ピンポーン」いや、出るからちょっと待ってくれますかね?。
「朝から急にどうしたの? 今日もパーティーで忙しいんじゃなかった?」
「姉さんだけズルいし納得できないって昨日散々言った。そしたら母がホテルの部屋をとってくれたから、今から行く」
「え? 今から? ……ちょっと待って、今日のパーティーはどうするの?」
「パーティーは休んでいい事になってるし、姉さんも友哉も休み」
「そうなんだ。とりあえずシズに説明してくるよ」
「その間、中で待たせてもらう」
「どうぞ」
僕はすぐに2階に上がり、ログインしてたシズを起こして事情を説明。そうすると適当に食べるから構わないと言われたので、部屋で着替えてから1階に居た椿と合流。外に出る。
いつもの運転手さんに挨拶し、車に乗り込むと何処かへと走って行く。何処のホテルかは知らないけど、きっとお高い所なんだろうなぁと思っている。そもそもホテルに泊まった事すら数える程しかないから、良し悪しとか分からないんだよねえ。
物凄くお高そうなホテルの前に車が止まり、顔が引き攣りそうになるけど何とか踏ん張る。とはいえ椿に腕を組まれて引っ張られているので、そのままに連れて行かれた。既に部屋はとってあるので、わざわざフロントで名前を書いたりしなくて良いらしい。
至れり尽くせり状態なのが怖すぎるけど、ここで臆した姿を見せるのは情けない。それにしても、さっきから鼻歌が聞こえてくるんだけど、それほどまでに嬉しいみたいだ。しかしその鼻歌が結婚式で歌われる有名な曲なのはどうなの? 早過ぎない?。
そんな事を考えていたら、とってある部屋についたので開ける。中は……広いなあ。正直に言って、この部屋自体に落ち着かないよ。
「タマが落ち着かないって顔をしてる」
「そりゃそうだよ。人生で数回しかホテルに泊まった事なんて無いし、しかもやたらに豪華な部屋なんだから仕方ないでしょ」
「これでもランクは低め。ロイヤルスイートじゃないし」
「そんな部屋は入りたくないのでお断りします。ってそれはいいんだけど、鼻息荒くない? どれだけ期待してるのさ。逆に期待が高すぎる!」
「大丈夫、心配ない、最初だけ」
「それ言うの男の方! しかも僕が言いそうにないセリフじゃん!」
「ふふふふふふ……」
「はははははは……」
何だかおかしくなって2人で笑ってしまったけど、僕の緊張を解そうとしてくれたらしい。とはいえ椿の方も緊張からの興奮がちょっと落ち着いたみたいだ。朝からホテルに居るって不思議だけど、男は気合いと根性。
とにかく女性に恥を掻かせないように頑張ろう!。
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2000年 12月26日 火曜日 AM5:37
………ああ、そうか。昨日からホテルに泊まりっぱなしだったんだっけ? そろそろ出る準備をしなきゃマズいから椿を起こそう。
「椿、椿! そろそろ起きよう。早めにチェックアウトしなきゃ大変だから、そろそろ起きて。椿!」
「………」
うつぶせに近い格好で寝てたけど、僕が起こしたら僕の方を向いて唇を突き出してきた。相変わらず可愛い事をするね。だからこういう事をされるんだよ?。
「……!? ……………。こういうのはズルいし、朝からディープなのは求められていると私は考える。だからこう!」
「うわっ、と。唇を突き出してたんだから、普通にはしないよ。それとも普通が良かった?」
「………!」
更に力強く襲い掛かってきたけど、反論しないって事は正解だったって事だね。でも昨日の今日で大丈夫かな? とはいえ椿が治まりそうにないし仕方ない。でも、出来るだけ優しくしないと。
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「ふぅ。そろそろ本当に着替えて出ないと駄目だから、服を着ようか?」
「……名残惜しいけど仕方ない。昨日卒業したばかりの私にはまだ早かったみたい。タマが満足してくれたから安堵したけど」
「女性の体は大変だからね。本当に大丈夫?」
「心配ない。明日か明後日になれば痛みも引いてる筈。それに悪い意味の痛みじゃないから、気にしなくていい」
男には全く分からないからね、心配にはなっても分かってあげる事が出来ない。できるだけ色々と話して気を紛らわせるくらいしか無理だ。よし、僕の方の準備は完了っと。
椿の方の準備も完了したので、そろそろ部屋を出よう。
「最後に……チュッ」
「………♪」
椿は機嫌よく僕の腕に自分の腕を絡めて腕を組む。そうして僕らは部屋を出たんだけど……。
「こんな事って普通なかなか無いと思うんだ。どれぐらい低い確率を通ったんだろうね、〝友哉〟」
「本当にな。まさかここでタマに出会うなんて思ってもなかったぜ。っていうか、もしかしなくてもそうだよな?」
「昨夜、椿とVRの観光ソフトでデートしてたら教えられてね。それでズルいと連呼してたらホテルの部屋をとってもらったんだって」
「で、同じトコだったと。何と言うか…………何と言うか……」
「言葉が出そうで出ない気持ちでしょ。よく分かるよ、本当。それよりそっちは大丈夫だったの? 今までそんな素振りっていうか、感じじゃなかったのに。……あ、おめでとう」
「ありがとう。タマの方は順当すぎる程に順当だよな。そうなって当たり前っていうか、当然の結果に落ち着いた感じか。俺の方はお義母さんに話を通してて、桜の事も聞いてたからさ。今年、一世一代のサプライズをする予定だったんだよ。俺の両親と俺とお義母さんしか知らないから、態度からバレないかと冷や冷やしてた」
「それはまた……。大変だったね」
「まあな」
「それで、姉さんの方は大丈夫だった? 友哉だと暴走してる可能性が高い。長年待たされて拗らせてるから野獣のように襲ったに決まってる」
「ちょっと待て! 流石にそれは酷いだろ。それより早くエレベーターに乗ろうぜ!」
「必死に隠そうとしているところが怪しい。やっぱり野獣だったに違いない、だって友哉だし」
「俺だからってどういう事だよ?」
「まあまあ。椿はそんなに言っちゃ駄目よ。友哉君も緊張してる中で頑張ってくれたんだし、ね? タマちゃんも同じでしょ?」
「相変わらず桜さんは僕の事をタマちゃんって呼びますよね。別に悪くはないですけど、その呼び方をするのは桜さんだけですよ?」
「タマは友哉と違って早くなかったけど?」
「本当に待て、流石にそれは聞き捨てならないぞ。桜は俺の事を一言もそんな風に言ってないだろ。悪意があり過ぎる解釈をするんじゃない」
「そういえば桜さんの事を呼び捨てにする事にしたんだね? 恋人になったから?」
「まあ、そうだけど……それがどうかしたか?」
「うーん……。もしかして桜さんって、耳元で名前呼ばれるのに弱い?」
「何でそれを……って、もしかして椿の方もそうなのか? 姉妹揃って?」
「「//////」」
友哉が桜さんの名前を呼んでる時に微妙に挙動不審だったから、もしかしてと思ったんだよね。まさか本当に姉妹揃って弱点が同じとは……。




