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0551・魔女の会合




 「皆それぞれに弟子を持ってるんだけど、そもそも弟子を連れてくる事は滅多にないのよね。あくまでも私達魔女の会合だし。必ず弟子を自慢気に連れてくる<ク・ディヴォラ>がおかしいだけで」


 「毎回ですか? それも自慢気に?」


 「そうなのよ。よほど気に入ったのか、それとも同じ穴のむじななのかは知らないけどね。とはいえ弟子の方も何だか似たり寄ったりな気がするし、あの師にしてこの弟子ありって感じかしら?」


 「お主とトモエは随分と違うがな。意外と言ったら何だが、お主は可愛い物好きのロマンチストじゃからの。トモエのモフモフ好きとは同じではない」


 「ああ、師匠ってやっぱりそっち系だったか。サキュバスの癖に変だなとは思ってたんだけど、今納得した!」


 「しなくていい!」


 「それは横に置いておくとして、会合というのは急がなくても良いのですか? 師匠がいきなりここへ飛んだという事は、急ぐ必要があると思うんですけど……」


 「会合の時間は明確に決まっているが、早めに来ておいただけじゃ。それに今回は弟子を連れてくる事になっておる。とはいえ全員の弟子が稀人なので、無理な者は連れて来れぬがの」


 「まあ、遅れると五月蝿いヤツとか居るから、流石にそろそろ行きましょうか。向こうに行ってからも色々とあるし」


 「仕方ない。面倒だが潰しに行くか」


 「いや、潰す必要は無いでしょ。そもそも喧嘩なら誰かが止めるわよ」


 「そうではない。どうせ自分の弟子が一番強いんだとかいう話になろう。そうなれば他の弟子を叩き潰さねばならんし、妾にまで喧嘩を売ってくるなら容赦はせぬ。どうせ稀人は死んでも生き返るしの。きっちりと躾をしておかねばな」


 「言いたい事は分かるけど、そこまで愚かかしら? <破滅>の名は伊達ではないと思うんだけどね?」


 「知らん者は知らんのだ。そして知らんから理解せぬ。世にどれほど愚か者が居ると思うておる。もし愚か者が居らぬのなら、妾は<破滅>などと呼ばれたりはせんわ」


 「ま、それは確かにね。私も含めて他の魔女は自分の領分が付いてるのに、貴女だけは<召喚>でも<死霊>でもなく<破滅>だもの。どれだけ愚か者が関わり、どれだけ滅ぼされてきたかよく分かるわ」


 「全て妾がやろうとした事ではない。そもそも妾は愚か者にかかずらうほど暇ではないし、いちいち面倒な事などしとうもないのだ。それなのに阿呆どもが、いちいち無駄に関わってきおって……!」


 「どうどう。私の屋敷で怒られても困るわよ。そのうえ思い出してキレられてもね。とりあえず壊される前にさっさと行きましょうか」



 そう言って師匠とサインさんは僕達も含めて転移させた。次に見えた場所は広い庭であり、そこに真っ白なテーブルや椅子が並べられている。既に来ている人達がお茶をしながら喋っているようだが、こちらに気付いたのか声を掛けてきた。



 「やっと来たわね。まだ決めていた時間には早いとはいえ、ギリギリになってやっと来るとは……。いったい何をしていたのかしら?」


 「なに、サインの屋敷でダラダラと話しておっただけじゃ。もちろん唯の雑談であり大した意味は無いぞ?」


 「………」



 師匠の言葉に対し、額に青筋を立てるという返事をしたリューウェさん。あの人は<氷獄>と呼ばれてるけど、師匠はあっと言う間に沸点間近にしたね。師匠の力量を褒めるべきかとも思うけど、迂闊な事は言わないでおこう。


 魔女の人達は魔女の人達専用のテーブルに集まるらしく、僕達は弟子用のテーブルに座るみたいだ。僕とアマロさんの2人が来たからか、椅子が1脚足りない。なので僕は椅子を引いてアマロさんを座らせる。


 アマロさんは怪訝な顔をしているが、僕が椅子を引いているので椅子の前に移動し、アマロさんが座る際に少し前に椅子を出して着席させる。トモエが僕をジト目で見てくるが、僕の狙いが分かったんだろう。とはいえスルーさせてもらうけど。



 「そっちの少年が何故居るのかは知らないが、オレの名はバーン。業炎の魔女であるフラムに弟子入りしてる」


 「私はコーリス。そこの脳筋バカとは違うから勘違いしないでね、弟君」


 「オレはガイア。農業志望で土魔法を使ってたら、何故かスカウトされた。正直に言って、危険な魔法よりは農業に使えそうな魔法の方が良いんだがな」


 「ボクの名前はトリアー。こっちも同じで風魔法を使って飛べないかと試行錯誤してたらスカウトされたんだ。ちなみにボクッ娘なのはロールだから勘違いしないでね」


 「私はイカヅチ。そのままの名前で、雷魔法を探ってた際に声をかけられたの。で、そのままズルズルと来て今がある。師匠は魔法を教えてくれるけど、それだけじゃお金が稼げなくて苦労してるトコ」


 「オレの名前はダークマターだ! コトブキ! やっと合えたな。今度こそは貴様を叩き潰し、オレの闇の世界に染めてやるぞ!!」


 「「「「「「「「………」」」」」」」」



 師匠に弟子入りを拒否されて邪魔だと転移させられた割には、今も厨二病のままだったんだね。それはともかくとして、深淵の魔女に弟子入り出来てたのか。おそらく大丈夫だとは思ってたけどさ。



 「そもそもネクロで始めて師匠のトコに来たら弟子入りを拒否されて、逆恨みで僕を襲ってきて殺されたのはそっちだろ? あれだけの悪行をやっておいて、未だに僕の所為ってどういう事さ?」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「ち、ちょっと待て! 昔の事を言うなんてズルいだろう!!」


 「昔の事も何も、やらしかたのはそっちじゃないか。被害者は僕だっていうのに、何でそっちが怒ってるわけ? 意味が分からないんだけど。挙句デスペナ受けてるのにまた来て、背後から魔法を撃ってきたよね?」


 「最低だな、こいつ。叩き潰されなきゃいけないのはお前の方だろ。プレイヤーを後ろから襲うって完全にPKじゃねえか」


 「ち、違う。オレはPKじゃない!!」


 「でもチャラ男とか集めて襲ってきたのはそっちだよね。そのうえ最初の死亡はチャラ男に裏切られて刺された結果だったでしょ」


 「「「ダッサ……」」」


 「お前ぇぇぇぇぇっ! 絶対に許さないからな! 決闘だ!!!」



 何故か古風に手袋を投げつけられたが、キャッチしてペイッと投げ返しておく。喧嘩を売られたのは良いんだけど、どうやって戦おうか? そう考えていると、1人の魔女さんがこっちにやってきた。



 「早速やり始めるみたいだな。大いに結構だが、戦いは向こうに行ってやれ。ああ、私は<暴風の魔女>であるハリアトだ。こちらに流れ弾でも飛ばそうなら覚悟はしておけよ? 分かったら、とりあえずついてこい」



 ダークマターが怯えてるけど、もしかしてキレやすい割には小心者なのかな? それとも小心者だからキレやすいのか。まあ、どっちでもいいけど、ハリアトさんについて行こう。


 お茶会の場所から距離をとるとハリアトさんは僕とダークマターに離れるように言う。言われた通りに離れ、僕とダークマターは相対した。



 「さて、離れたな。それでは魔女の決闘におけるルールを説明する。ルールはたった1つ、それは<ルールなど存在しない>事である。殺し殺されるのも自由であり、そうやって魔女は交代してきた。全てを出し尽くす戦いをせよ。では……始め!!」



 ダークマターが魔法を使おうとするも、僕は一気に接近する。僕がそう来ると分かっていたのだろう、ダークマターは後ろへと後退しながら魔法を放つ。



 「【ブラックボム】!!」



 既に使われた事のある魔法だから、対処の方法は分かっている。僕はインベントリから棒を取り出して投げつけ、【ブラックボム】を手前で爆発させる。予想と違ったのかビックリしたダークマターはその場で顔を覆ったようだ。


 戦場で隙を晒すとは、随分と殺されたいらしい。


 僕は左手に太刀を取り出すと、右手に槍を取り出す。そのまま走りながら槍をダークマターに対して投げ、それを見たダークマターが慌てて杖で防ぐ。その時にはもう一足の間合いまで来ていた。


 僕は踏み込むと同時に左手で持った太刀を抜き打ちにし、その一刀で首を一閃。ダークマターの首を落とす。首が断たれたプレイヤーが生きられる筈もなく、即死で幕を閉じた。


 僕は槍と棒を回収しながら戻るも、魔女さん達のテーブルから拍手が聞こえてくる。そっちに頭を下げた後、僕はトモエとアマロさんが居るテーブルへと戻った。


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