0550・クリスマスイベント?
知り合い達の事はさて置いて、僕達は朝食を食べた後いつも通りに出発する。魔隠穴に行って掘り進めていき、素材をゲット。帰って豪雪山に行って回収したら、戻ってバイゼル山へ。そこも終わったら師匠の家で昼食の準備。
僕はその間に精錬などを終わらせ、後は昼食が出来るまで雑談をしながら待つ。
「既にレベルは頭打ちだから後は自分で何とかするしかないんだけど、なかなか上手くはいかないね。魔鉄といえども品質10にはならないよ。これが当たり前なのかどうかも分からないから難しいところだけど」
「品質10は簡単には出ないでしょうよ。最初の方の素材なんかを使えば簡単に出るけど、今使うような素材だと、やっぱり最高品質なんて無理ね。実際にコトブキから買った魔鉄でチェーンを作って使っても、最高にはならないし」
「元にしている魔鉄が最高品質ではないのですから、最高品質にはならないのでは?」
「そうなのよねえ。とはいえ出回っている魔鉄ってもっと品質悪いしさ、それに比べればコトブキの方がマシなのよ。その品質の低さもあって、鍛冶師と錬金術師が対立してるらしいわね」
「鍛冶師も錬金術師に比べれば落ちますからね。錬金術師は精錬や合金のプロっていう位置付けです。代わりに鍛冶師は武具への加工のプロですから、イメージ通りではあるんですけど……」
「そうなんだけど、鍛冶師の方が錬金術師に文句を言うのはねえ。遅かれ早かれ起きていた事でもあるし、今になったのは多くが我慢してたからかしら? それとも何か原因があって爆発した?」
「鍛冶師板とか見ても、特に爆発してる感じはないけどね。もしかしたらプレイヤーマーケットの方だけなんじゃない? 1人でも多くに売りつけたいからって、ブラックリストに入れない人とか居るから」
「コトブキは今でも解除してないし、面倒なのは未だに放り込んでるわよね?」
「そりゃね。僕の場合は「嫌なら買うな」で終わるから当然だよ。そもそも文句言わずに去ればいいだけなのに、文句を言うから出禁になるブラックリスト入りになるのさ。わざわざ文句を言わなきゃ気が済まない人って何なんだろうね」
「さあ? 私も嫌ならさっさと離れるタイプだし、理解は出来ないわ。その文句を言う為のエネルギーを別に振り分けた方が良いと思うもの。それに売りたい奴等はスルーしてるみたいだしね」
「それが一番良いのは間違い無いですよ。どれだけ書き込まれても本人が無視していれば良いですし、そうしていれば勝手に相手の悪行度が上がりますしね。ギリギリを攻めているのかもしれませんが、ギリギリなら痛くも痒くも無いと思います」
「悪行度が上がった連中は本当に地獄らしいからねえ。とはいえ運営にしてみればゲームを荒らす奴等は害虫でしかないし、そりゃ駆除するわよ。駆除されて当然の事をしたんだから、怒るのは筋違いだし」
「カンカン」
おっと、ファルが来たので昼食に行こう。今日は3人も居ないから午後からどうしようかな。無理に暗闇ダンジョンに行かなくても良いし、2日だけだから適当に過ごしてもいいか。レベルもキャップまでは上がってるんだし。
「今日はあの3人が居らぬが、午後からはどうするのだ?」
「居ないので暗闇ダンジョンもなー、と思っています。適当にマイルームで訓練しても良いですし、どうしようかちょっと悩む感じでしょうか」
「そうか、ならばちょうど良い。サインのヤツが呼んでおるので行くぞ。妾も行かねばならんのでな」
「はあ、分かりました」
何だかよく分からないけど、師匠がついてこいと言うんだからついて行くか。暇だし。
昼食の後はソファーの部屋からマイルームへと戻り、ログアウトして現実へと戻る。昼食の用意をしているとシズが下りてきて話しかけてきた。
「急に師匠のトコに行くって言われたけど、いったい何かしら? 何かがあったようには思えないんだけど……」
「さあ? もしかしたらクリスマス用のミニイベントかもしれないね。一応クリスマスのイベントは無い事になってるけど、今日は24日だし。師匠持ちだけ何かあるのかも」
「タマもアマロもエンリエッタさんが師匠だもんね。私も師匠持ちだし。……もしかして魔女が全員集まるとか?」
「あー、それはありそう。ついでに戦わされたりするかもしれないね。師匠の代理でやれとか言われるような気がする」
「ありそう、ありそう。ま、私はさっさとギブアップするけどね。流石に本気のアンタと戦う気は無いし」
「それでも善戦できる筈だけどね?」
「イヤよ。アンタと本気で戦うと、終わった後で頭が痛くなるのは確実だからね。それだけ集中して必死だったんでしょうけど、アレを何回も体験した以上はもう2度とやらないわ。ただ他のに負ける気はないけど」
「よいしょっと。お昼できたから食べようか」
「今日のお昼、妙にガッツリね。もしかして賞味期限?」
「そう。簡単で楽だからって冷蔵庫の奥にひっそり残ってた回鍋肉の素があったんだよ。流石に使わないとマズいから使ったんだ」
「ま、24日の夕食に回鍋肉は合わないわね。となると、お昼に食べるしかないか」
「そういうこと」
シズとちょっと重めの昼食を食べた後、雑事を熟してからログイン。既にマイルームに全員を戻してあるのでソファーの部屋へ行くと、師匠が既に居た。
「コトブキで最後だから全員揃ったな。それではさっさと行くぞ」
そう言って師匠は転移魔法を使ったのか、いきなり景色が変わる。しかしそこは見た事のある場所であり、サインさんの屋敷の庭だった。師匠は勝手知ったる他人の家と言わんばかりに進み、玄関のドアも勝手に開けて踏み込む。
鍵が掛かっていた気がするんだけど、どうやって開けたんだろうか? そのうえ一気にサインさんが居る部屋まで行くと、そこのソファーに堂々と座る。
「相変わらず遠慮の欠片も無いヤツね。他人の家の玄関を強制的に開けるわ、勝手にここまで入り込んでくるわ。少しはマナーというもの「いちいち五月蝿いわ」をねえ……」
「妾とそなたの間柄に、そのようなものがあった事などあるまい。そちらとて妾の本邸に勝手知ったる他人の家とばかりに入ってくるであろうが」
「本邸?」
「ああ、そなたらには話しておらなんだな。そもそも<屍人の森>にある妾の家は別荘のようなものじゃ。本邸は別にある」
「そうだったんですか。初めて知りましたけど、普段居なくて大丈夫なんですか?」
「大丈夫以外にある訳ないでしょ? 伊達に<破滅>と呼ばれてないわ、このマナーも無いヤツはね。本邸の方がヤバいアンデッドを放ってあるのは考えなくても分かるでしょう」
「赤い4本腕のスケルトンだけで十分にヤバいんですが?」
「ああ、あれ。稀人の今の強さを考えたら、アレで余裕でしょうね。それはともかく、今日は月一の会合だけど2人連れて行くの?」
「両方とも妾の弟子なのだから連れて行っても問題あるまい。片方は錬金術の、もう片方は薬の弟子だ。変な事ではなかろう?」
「確かに建前としては問題ないわね。まあ、貴女の弟子が勝って終わりでしょうけど」
「やはりそうなるか。つまらんの」
「<ク・ディヴォラ>が特に突っ掛かってくるでしょうけど、相手にする意味も無いしね。そもそも師匠の実力と弟子の実力は違うでしょうに」
「アレは己が一番でないと気に喰わんというタイプだからな、仕方なかろう」
<深淵の魔女>である<ク・ディヴォラ>さんって、確か厨二病の魔女じゃなかったっけ?。
549話の誤字報告、ありがとうございました




