0546・雑談と暗闇ダンジョン50階
トモエの片付けを終わらせてから、急いで食事をとる。その後に雑事を素早く終わらせてログイン。当然いつもより遅いので、ソファーの部屋へと行った後に皆に謝る。
「いやー、ゴメンね。部屋の中を片付けるのに、ちょーっと時間が掛かっちゃってさあ。御蔭で昼食も遅れるわで大変だったのよ」
「どうせ昼食を作ったのも部屋の片付けを手伝ったのもコトブキに決まってる。っていうより、毎年の風物詩みたいに必ずやらかす。どうしてそれまでに片付けておかないのか不思議で仕方がない」
「そうなんだよね。毎年イルが23日に泊まりにくるのに、毎年ギリギリまで片付けずにバタバタするんだよ。風物詩はイヤだから、そろそろ何とかしてくれないかな?」
「……あれ? 泊まるのは分かるんですが、イルだけなんですか? ナツとかユウヤ君は?」
「私もユウヤ君も忙しいから無いかな? この時季になるとパーティー多いし。子供の頃ならともかく、今もお泊りするのはイルだけだね。24と25は色々なパーティがある所為でさ、私達は毎年出席しなきゃいけないんだよ」
「へー……。そんなパーティとかがある家に生まれたんですね? 私みたいな庶民の家の者には分かりませんが、何だか隔絶した何かがありそうです。唯の想像ですけど」
「私やコトブキを混ぜないようにね。ウチは至って普通の家だし、イルやナツにユウヤみたいなお金持ちの家じゃないから」
「その割には普通に話したり、何やら関係がありそうですけど……?」
「単に近所に住んでるってだけよ。同じ町に住んでるなら知り合いではあるでしょ。家は近いし」
「私の家もナツの家もトモエやコトブキの家も、古くから同じ町に住んでる。その昔、唯の集落や村だった時代から変わらない。特にトモエとコトブキの家は古い時代、神社の神官だった家系。だからとても古くから住んでる」
「へー、神官ですか。白衣を着て袴を履いて………その格好で殺気を撒き散らすんですか?」
「違う、違う。多分うちの家系でこうなったのはコトブキだけ。流石に代々のご先祖様にも、こんなのは居なかった筈」
「こんなのって言うの止めてくれる? 後、戦国時代なんかは神官も普通に戦ってた記録あるから、御先祖様が戦ってた可能性はあるんだよ。もちろん僕と同じかどうかは知らないけどね」
「コトブキの先祖が神官、神に仕える者の家系ですか? ………代々、破壊神を祀っているので?」
「違うって。それにウチはもう神社から離れてしまってるし、神官もやってないよ。あくまでも神官の家系だっただけ。でも一応は正統な神官の家系だよ。今神官をやっているのは分家の方なんだけど、もうそっちが本家かな?」
「コトブキの家の方が正統なら、そっちが本家なんじゃないの?」
「そうも言えるけど、あくまでも血筋だけの話だからね。確か7代前に分家に譲った筈で、以降はウチから神官になった人は居ないよ。だからもう正しい手順とかも何も分からないんだ。教えが断絶してるからね」
「あらら……それでは本家とは言えませんね。もう言う気も無さそうですけど」
「そうだね。ウチの祖父もそんな気はないし、御山の側の家はもう住んでもいない。だから本家というか、かつて神官だった家ってだけだね。記憶というか、記録にあるだけって感じ」
「成る程ねえ。まあ、時間が経てばそうなる事もあるでしょ。ずっと続けられるものでもないんだしさ。大事かもしれないけど、生きていくにはお金が要るから仕方ないわよ」
「神に仕えるというのは大変でしょうからね。天使の国にも悪魔の国にも神に仕える方は居ますが、なかなか暮らし向きは大変ですよ。神々は滅多に何も言ってきませんしね」
「言ってきたら言ってきたで、大きい事から小さな事や下らない事まで言ってくるしね。色々な意味で疲れると思うわよ。儀式だって色々あるらしいし、それも絶対にしなきゃいけないみたいだしさ」
「そういうのが全く分からないから、ウチはもう本家とは言えないんだよ」
「こんな話をしてないで、そろそろ暗闇ダンジョンに行きませんか? 流石に終わってると思うんですけど?」
「……何か駄目みたい。ユウヤ君の方が遅れてるね。来ないからって鍛冶を始めるから余計な事になるんだと思うけど、暇だったから仕方ないのかな?」
「確かに私達が悪いんだけどさ、それとユウヤが遅いのは関係ないわよ?」
「シレっと僕を含めるのは止めてくれないかな? トモエが部屋を片付けてないのが悪いんだし、僕は部屋をちゃんと片付けてるよ」
「あっ、ユウヤの方が終わったみたいね。そろそろ家の外に出て待ってましょうか」
「「「「「………」」」」」
トモエがそそくさと師匠の家の外に向かったが、皆はそのトモエをジト目で見た後、溜息を吐きながらも後に続く。僕達が遅れたのは完全にトモエの所為なんだから、少しは反省してくれないものかな。本当。
ユウヤが来たので説明すると「毎年の事だな」と笑っていたけど、もっと言ってやってほしいよ。ま、いつまでも怒っていても仕方ないから、気持ちを切り替えて暗闇ダンジョンへと行こう。
50階から再び始めるんだけど、前回から1ヶ月近く期間が空いてしまってる。なので、ほぼ間違いなく地図は役に立たない。また一から描くとしますか。
地図を描きつつ進んで行くと、早速とばかりに暗闇ソードと暗闇シールドが出てきた。僕達は気にせずボコっていき、あっさりと勝利。やはり<屍人の森・深層>と比べれば弱い。
「向こうは弱体化するとはいえレベルが高いからな。それに【ブラックボム】や【ダークバースト】にブレスや【木魔法】と、気をつけなきゃいけないのが沢山ある。それに比べりゃ簡単なのは仕方ないだろ」
「そうなんだけど、こっちだって首狩りとかあるから厳しい部分はあるよ。それでも気をつけていれば対応は出来るんだけどさ。それよりレベルが上がってるのも大きそうだね」
「それはある。やっぱり能力値の差は何だかんだと言って大きい。だからこそレベルを上げる訳だけど」
「そりゃねえ。何の為にレベルを上げるんだって問われたら、強くなる為としか言えないもの。他に理由は無いわよ」
「生産が上手くなる為とか、上のランクに上がる為とか色々とあるけどね。それでも強くはなるから変わらないかな?」
「前も適当に会話しながら戦ってたけど、仲間のモンスター達が強いから凄く楽になってる。御蔭でちょこっと魔法を撃ってるだけで勝てたよ」
「【光魔法】が使えると楽なのよねえ。どうしようか悩んだけど、今のところは保留にしてる。後で覚えたい魔法とか使いたい魔法が出てくるかもしれないし」
「私もそうですね。それでも【木魔法】と【幻惑魔法】は持っておいた方が良いんじゃないかと思ってます。そもそも【木魔法】なんて知らなかったですし、これから先に新しい魔法が出てくる虞もありますから」
「それはねえ。確かにあるのよ。とはいえ、そんなに多くはないでしょうけどね。多分出ても1種か2種だと思う。そもそも普通の魔法でさえ、まだ下級止まりだし。これから強力な魔法が出てくるでしょうしね」
「上級まであるとしても、まだ下級だから、とてもじゃないけど先は長いよ。いつになったら中級になるのかは知らないけど、段々と覚える魔法は少なくなりそう」
「いつものパターンだな。レベルは上がるが何も覚えない。仕方がないとはいえ、強力な魔法を覚えるようになる以上は気長に待つしかないしな」
頭打ちなのも含めて、気長に待つしかないね。




