0542・強化浄玉製の武器
下らない思い出を語りつつ僕らは師匠の家へと戻る。帰ってきたらソファーの部屋へと進み、マイルームへ。ラスティアとキャスティとファル以外を召喚し、僕は囲炉裏部屋で新しいタワーシールドを作る。
氷怪木と魔鉄のタワーシールドが出来たので訓練場に居るシグマに渡して、耐久力の減った方は廃棄した。倉庫には廃棄ウィンドウがあるので、そこへドロップして廃棄ボタンを押せば完了だ。
やるべき事は終わったのでソファーの部屋へと戻り、僕も雑談に参加する。
「それにしてもレベルの上がる場所よねえ。流石は高レベルだと思うけど、アンデッドだから強さが比例してなくて助かるわ。それにまだ【浄化魔法】が効くみたいだし、その御蔭で楽にレベル上げが出来るわね」
「弱体化してくれるのは楽。でもそれに慣れると手酷い失敗もする。もっと高いレベルのアンデッドだと、そもそも弱体化しない可能性もあると思う」
「可能性じゃなくて弱体化しないわよ。それどころか高位のアンデッドになると、【浄化魔法】に対する耐性まで持ってるわ。それでも弱点である事に変わりはないけど」
「弱点なのに耐性を持つの?」
「ええ、そうですよ。元々弱点ではあるのです。だからこそ浄化属性で苦しんだりするのですから。ですが高位のアンデッドまでそのままという事はありませんし、あり得ません」
「それって結局どういう感じなの? 弱点だけど耐性があるから普通とか? それとも耐性が勝つ感じ?」
「そうではなくて、【浄化魔法】は弱点として受けます。ただしそれで怯んだり苦しんだりなどは一切無いのですよ。耐性の御蔭で」
「ああ、そっちな訳か。耐性で多少はダメージを減らせるけど、それ以上に動けないとかのバッドコンディションを受けなくするって事ね。つまり【浄化魔法】のダメージ自体は減っても、他の魔法よりは多いと」
「そうそう。他の属性魔法よりも十分に高いダメージは与えられるけど、それだけでしかないってところね。それでも高いダメージを与えられるだけマシなんだけど」
「そうでもなければアンデッドは厳しいですよ。そもそも瘴気を吸収して回復しますし、強力なアンデッドが居るところは大抵の場合において瘴気が充満してますからね。そういう意味でも厄介なのです」
「他の魔物でもそういうヤツは居るけど、アンデッドは特にそれが多いのよねえ。まあそういう奴等だとして諦めるしかないんだけど」
「カンカン」
ファルが来たので食堂に行き、僕達は夕食にする。未だイベントの期限は来ていないので、ポイントを新しい物に交換する事は出来ない。なので残したままだが、このままレベルを上げて行こうという事で一致した。
ソファーの部屋からマイルームに戻り、全員を召喚したらログアウト。現実での諸々を終えたら再びログイン。強化浄玉を作って必要個数になったら、初めての武器を作っていく。
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<格闘> 氷怪木と強化浄玉のヌンチャク 品質:6 レア度:6 耐久910
氷怪木と強化浄玉を使ったヌンチャク。持ち運びやすく威力がある武器。しかし魔物と戦うには工夫が必要。強化浄玉が使われている為、不浄の者に対して非常に高いダメージを与えられる。優秀な事は間違い無いが、修理できない事には気をつけよう
攻撃力28 破壊力5 浄化属性(大)
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なかなかの物になったね。特に浄化属性(大)が付いたのなんて初めて見たよ。この調子で作っていこう。
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<刀> 氷怪木と強化浄玉の太刀 品質:6 レア度:6 耐久980
氷怪木と強化浄玉を使って作り上げられた太刀。強化浄玉が使われている為、アンデッドに対して高い効果を発揮する。これで切りつけられたアンデッドは浄化される為、同時に弱体化も可能である。上手く使って戦おう
攻撃力32 破壊力1 浄化属性(大)
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サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました
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とりあえず今のところは2つだけだ。太刀は自分用だけど、ヌンチャクはセナに渡しに行こう。ついでに戦闘訓練もしてからログアウトするかな。
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2000年 12月9日 土曜日 AM8:24
今日もレベル上げの日だけど、昨日よりは楽になる筈だ。何といっても強化浄玉製の武器があるんだし、それだけ高いダメージが与えられるだろう。太刀の切れ味は然して変わらないかもしれないけど、回復の邪魔などは出来るので有利になる。
そういった武器を持たないと厄介になりつつあるのがアンデッドなんだよね。楽に倒せるようにはなったものの、それは【浄化魔法】を使ってるからであって、使わずにスケルトンソーサラーやドラゴノイドゾンビと戦うのは簡単じゃない。
特にスケルトンソーサラーは黒い壁を使わせないと、【ブラックボム】か【ダークバースト】を使ってきて危険だ。鑑定結果に脅威と書かれてたけど、あれはその通りとしか思えない。僕もあそこまで脅威とは思わなかったよ。
おっと、そんな事を考えている場合じゃない。さっさとログインしよう。
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使い魔:ラスティアのサブ職業:踊り子・下級のレベルが上がりました
使い魔:キャスティのサブ職業:農家・下級のレベルが上がりました
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まずは囲炉裏部屋で売り上げを回収して倉庫へ。次に売り物をプレイヤーマーケットに出したら声を掛けてっと。
ソファーの部屋へと行きラスティアとキャスティとファルを呼び出す。ファルを朝食の手伝いに送り出したら、ソファーに座って雑談を始める。
「今日もレベル上げだけど、昨日も結構上がったから今日も上がってくれると思う。後はそれを繰り返して、イベントが終わるまでに60到達。それが目標かな?」
「それでいい。目標はあくまでも目標だけど、おそらく達成できると思う。どうもイベントに時間が掛かってるのが多いのと、今になって始めた連中が居るみたい。だからこのままイベントはギリギリまで続くと思う」
「それだけじゃないよ。ちょっとやったら止めちゃってて、こっちに居るままの人も多いらしく、イベントが早く終わってほしい人達が怒ってる。そんな書き込みも多いよ」
「一応28日までだから、まだまだ時間はあるんだけど……。それにしてもイベントをちょっとしかしない奴等は何なのかしら? 何か目的があってやってるのか、それとも下手だから途中でやる気を失くすとか?」
「幾つか書き込みがあるけど、レベルが上がらないから弱いままなのが嫌。動画みたいに上手くいく訳ないんだから、時間を使って何が悪いっていう感じに書かれてるね」
「下手は下手なりに頑張ればいい。そいつらは、やる気が無いだけ。何だかんだと言い訳してるだけだから無視していい」
「そんな感じの書き込みが溢れてるわね。まあ、どのみちイベントをしない奴等が悪いんだし、後でポイントというしっぺ返しを喰うわよ。今度のラインナップにどれだけのポイントを使うか分からないっていうのに」
「段々とMMOらしくなってきたとも言われてる。後、お菓子のラインナップが増えるかもしれない」
「なんですって!?」
「素早い反応ですね、ラスティア。お菓子の事になると反応しすぎでしょう」
「そういうキャスティだって食べてるじゃないの。それもあんた農作業の合間にも食べてるでしょうが! 私はこう見えて踊りの練習の後なのよ」
「別に農作業の合間に食べても太ってません!」
「そりゃキャスティの場合、全部の栄養が胸に行くからでしょ」
「そんな事がある訳ないでしょう!」
何の言い合いをしてるんだろうか。後、女性の胸の事に関しては何も言えないから無視するよ。絶対に関わらない方がいいしね。




