0536・レベル90
「そこまで行っているなら、明日からは全員揃って素材を回収しに行けそうだね。問題は暗闇ダンジョンに行って素材を得るか、それとも深層に行ってレベル上げをするかだけど……。深層も皆が居れば連戦し続けても問題ないだろうし、悩む」
「そうねえ。流石にそろそろレベルは上げておきたいし、次のアップデートでレベルキャップが外れるという話もあるのよ。せっかくだからその前にギリギリまでレベルは上げておきたいかな?」
「今回も超過分は無効扱いだろうけど、ギリギリまでなら損にならない。そこまで上げたら暗闇ダンジョンに行けば損しなくて済む。あそこは経験値が入らないからレベルが上がらないし」
「そうだね。あそこに篭もってるとランダムガチャなうえにレベルも上がらないから、イライラしてくる事が多いし。それに<幸運のハチマキ>を取りに行かないといけないから、しっかりレベルを上げてから行こうよ」
「ナツは前に手に入れたけどデスペナで失ってる。おそらく次は相当長い期間を待たされると思う。そもそもナツの妙な運であっさり手に入った事がおかしい。その時点で気をつけなければいけなかった」
「それはそうね。あっさり手に入るなんて絶対に罠付きに決まってる。で、手に入って喜んだ瞬間、あっさり首を刎ねられたのよ。むしろ綺麗にオチまで行った感じ?」
「それで間違ってない。普通に運が良いだけだとナツじゃないし、そんなナツは認めない」
「どういうこと!?」
「「「「「あははははは……」」」」」
「カンカン」
おっと、ファルが来たから僕はすぐに食堂に行こう。ちなみに僕は笑ってないよ、根に持たれても困るからね。ああいう時は大人の態度でスルーするのが一番だ。関わったって碌な事にならない。
「どうしたのだ? やたらに機嫌が悪いようだが……」
「ナツの妙な運の事を話してた。ナツはとても運が良いけど、その運は必ずおかしな方向に向く。決して真っ直ぐ運が良いとは言えない。それは子供の頃から変わらない事」
「ナツが投げたボールが知らない人にぶつかるも、上から降ってきた物が直撃せずに人助けになるとか。拾った物を届けたら本人じゃなくて間違えた人に届けたけど、その結果盗んだ犯人が見つかるとか」
「席を決める時にじゃんけんで負けて落ち込んでたら、自分の席だけ地震の時に怪我をせずに済んだとか。ゴミであるアイスの袋を拾ったら何故か当たりで、1本タダで貰えたけど捨てたヤツに取られたとか。色々とあったよね」
「最後のは幸運でも何でも無いような?」
「そいつはゴミを捨てた癖に当たりだったと知らなかったらしくてね。拾ったナツから無理矢理奪った後に走って逃げたら、車に轢かれたのよ。あのまま奪われずに歩いてたらナツが轢かれてた可能性があってね。結局助かったの」
「………それも微妙な事ですね。元々その人が捨ててなければ事故前に通り過ぎてた可能性が……」
「確かにそうだけど、それを言い始めたらキリがない。ただナツには結構そういう事がついて回る。不思議だけど、昔から変わらない」
「そういう者は稀におるの。何故かは分からぬが、幸福なのか不幸なのかイマイチ分からんのはな。言い換えれば幸運とも不運とも言えるが、どちらも運である事に変わりは無い。そういうのは如何にもならんから諦めるが良い」
「まあ、それはもう長い間で分かってるんですけど……」
「納得がいかないって事ね。分からなくはないけど、うっかりミスはそもそもナツの所為よ? 特にあの<幸運のハチマキ>の時は本当にそう。幾ら嬉しかったからと言っても、戦闘中にモンスターから目を離すのは駄目に決まってるじゃない」
「それは駄目じゃな。運とかいう問題ではない」
「ぶー……」
そんな微妙な昼食も終わり、僕達はソファーの部屋からマイルームに移動してログアウト。現実に戻ったら昼食を作って食べる。その後は雑事を熟してログイン。今度は師匠の家を出てから召喚。
今日も深層へと進んでのレベル上げだ。もう慣れたものであり、さっさと進んで澱み草を枯らしたら深層へ。入り口近くから倒していき、今日は道なき場所を進んで行く。
そこで出現するのはスケルトンフォーアームとブッチャーゾンビだけであり、僕達は戦いにくさを感じながらも戦闘を熟していく。なかなかに大変だが、道から外れた場所まで入った事は多くなかったんだよね。
おそらくこちらにも瘴木はあるだろうから、出来るだけ木晶を稼いでおきたい。今は【セイントクリア】があるから、今までよりは楽だしね。
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召喚モンスター:フォグの【浄化魔法】のレベルが規定に達しました
【浄化魔法】に【セイントクリア】が追加されます
召喚モンスター:フィーゴの【浄化魔法】のレベルが規定に達しました
【浄化魔法】に【セイントクリア】が追加されます
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おっと2匹の【浄化魔法】に【セイントクリア】が追加されたか。流石にセスとエストはまだみたいだけど、おそらくそこまで時間は掛からない筈。2人とも頑張って使ってるし、十分な経験は積んできている。
そんな事を考えながら戦っていくも、2匹が新たに【セイントクリア】を使えるようになったのは楽で、一気に弱体化させての勝利を繰り返すようになった。戦闘がここまで飛躍的に楽になるとは思わなかったよ。
皆も楽になったからか、気分的にも上向いてきている。このまま気分良く戦闘を続けてレベルを上げよう。
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召喚モンスター:セスの【浄化魔法】のレベルが規定に達しました
【浄化魔法】に【セイントクリア】が追加されます
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よしよし。更にもう一人増えたな。これならドラゴノイドゾンビとも戦える筈。多少は反撃してくるけど、そこまでじゃない。これがスケルトンソーサラーも反撃ありだったら厳しかっただろうね。
弱ったと思って近付いたら魔法が飛んでくるとかシャレにならないしさ。とはいえ弱体掛かるから、元気な時のような威力は無いだろうけど。
そう思いつつ奥に進んでいき、スケルトンソーサラー5体が出現した。数が多くて厄介だけど、盾持ちが時間を稼いでる隙に連続して魔法を放つ。【セイントクリア】が成功すれば、後は敵じゃないからね。
完全に5体全てを弱体化させたので一気に攻撃を開始すると、近付いた際に黒い爆発が起きた。
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<スケルトンソーサラー> Lv90
生前は高名な魔法使いであったものの、今は瘴気に汚染されていて危険。特に範囲魔法に注意しよう。このレベルの魔法使いは脅威となる事が多い
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まさかレベル90の奴が居たなんて予想外だった。味方のHPを確認すると思っていた程には減っていないので安心し、早めにレベル90のヤツだけを速攻で倒す。
それにしても警戒した矢先に出くわすとは。ドラゴノイドゾンビがレベル90を超えてたから、嫌な予感はしてたんだよね。まんまその通りになるとは運が無い。
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召喚モンスター:エストの【浄化魔法】のレベルが規定に達しました
【浄化魔法】に【セイントクリア】が追加されます
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まあ、これで【浄化魔法】持ちの全員が【セイントクリア】を使えるようになったから良いか。レベル90超えのソーサラーは、【セイントバレット】で硬直させておいた方がいいね。
沢山出てくると今回みたいに見逃す可能性があるけど、皆で警戒していれば大丈夫かな? 僕は浄玉を拾いつつ皆に話し、警戒しながら進む。するとスケルトンソーサラー2体とドラゴノイドゾンビ3体が現れた。
ブレスと魔法か……面倒だけど仕方ないね。




