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0535・暴虐と七大罪




 ファルが呼びに来たので食堂に行き椅子に座る。早速朝食を食べようと思うと、トモエが師匠にドラゴノイドの事を話しだした。



 「何じゃ藪から棒に。ドラゴノイドの……ああ、コトブキ。そなた深層でドラゴノイドゾンビに遭遇したか」


 「はい。思っている以上に今の僕達では強敵でした。特に昨夜初めて出会ったうえに、三人しか居なかったんですよ。【セイントクリア】が使えなかったらマズかったです」


 「それはの。ドラゴノイドゾンビにまでなれば、【浄化魔法】を受けても反撃をしてくる。アレ以上になれば気にせず反撃してくる者も多い。高ランクのアンデッドは皆そうだ。【浄化魔法】さえ使えれば、というのはそろそろ止めねばならんぞ?」


 「ええ。とはいえ弱体化自体はするので、修行でもなければ早めに倒す為にも使います」


 「普通は【浄化魔法】を使わずにアンデッドを倒したりせんのじゃがの。とはいえ妾も昔やった事があるので、コトブキを叱る事は出来んのだが……」


 「揃いも揃ってこの師弟は同じ事をしてるのね。まあ、あの異常な戦闘技術の師匠は違うけど、でもやる事は変わらないのよ。非常に不思議だけど、そういう意味では似通ってる」


 「頭のおかしい者はだいたい似通った事をしますよ?」


 「お主らな……。強くなる為に様々な事をやるのは当たり前の事であろうが。それがアンデッド相手であろうが変わらぬわ。大事なのは自らの修練の相手になるかどうかよ」


 「言いたい事は分かるんだけど、それは修行相手が……。って<破滅>相手に修行できる相手が居ないわね? だったら魔物相手にやりあうのも仕方ないのかしら」


 「ですね。そもそもですが、それ以前の<暴虐>時代から同じ事をしていた筈ですし……。その時からも変わらなかったのではありませんか? 強くなる為なら何でもするのは、確か昔からの筈ですし」


 「そうなのよねえ。喧嘩を売られたら情け容赦なく反撃するし、それは凄まじいまでに苛烈だったわ。もちろん苛烈な反撃を受けたくなければ最初から関わらなきゃいいんだけど、バカは理解しないからねえ」


 「ふん! そもそも利口な者ばかりであれば、妾は<暴虐>や<破滅>などと呼ばれておらぬわ」


 「本当にそうなのよ。バカが突っ掛かってボコボコにブチのめされたり、それを聞きつけたバカな貴族が自分の手元に置こうとして潰されたりとかね。そんな事をしていたら、「国に忠誠を誓うか戦争か、好きな方を選べ」と言われたのよね」


 「そうじゃ。完全に妾の事を舐めておったからな、滅びる覚悟があると思うではないか。まさか叩き潰して王城にまで乗り込んだら、「そんなつもりではなかった」などと言い出したのだぞ。心の底から呆れ果てたわ」


 「<暴虐>を敵に回す意味を理解してなかったと言うか、結果としてどうなるか全く分かってなかったのよねー。ただ面白いのは、「そんなつもりはなかった」と言った王様の首をあっさり刎ねたのよ。誰かさん」


 「「「「「えっ!?」」」」」


 「醜い命乞いなど聞く気も無かったからの。妾を敵に回すとどうなるかを星中に知らしめる為の生贄にしてやったのよ。その後、盛大に大悪魔から怒られたがな」


 「当たり前でしょ、流石に国崩しは一線を越えてるわよ。私だって要人の暗殺までしかしないっての。1国を1人で崩したのよ? それが出来る事もメチャクチャだけど、叱責で済ませる大悪魔も大概なのよね。私達は封印した癖に」


 「それはお主らが阿呆な事ばかりしておるからじゃろうが、いい加減に克服せんか。恥ずかしいとは思わんのか、ラスティアよ」


 「五月蝿いわね。ちょーっとイロイロしてただけでしょうが。まさかその程度の事で封印されるとか思う訳ないじゃない」


 「各国の要人やら実力者の男ばかりを集めて乱痴気騒ぎをしておいて、ようもまあそんな事が言えるものじゃ。挙句その理由が「寂しいから」など、お主は子供か!」


 「五月蝿いわねえ、ちょっとぐらい潤いを求めても良いでしょう。それに悪い思いなんて誰もしてないでしょうが!」


 「……それってもしかして、魅了を使って集めたのでは?」


 「………」



 急にラスティアが横を向いたから、どうやらキャスティが言った事が正解みたいだね。何とも言えない微妙な気分になってくるけど、総合すると寂しさから男性を集めてそういう事をしてたと。


 そりゃ大悪魔も封印するだろうね。寂しくなる毎に魅了を使っておかしな事をされるんじゃ、封印して反省させるのも当たり前だ。どうやら七大罪それぞれに、大罪とは別の原因がありそうだね。


 大罪持ちのままだと封印してなかった以上、何か別の原因から封印したと考えるのが正しい。それがラスティアの場合は寂しさなんだろうね。もしかしたら他の悪魔も似たようなものなのかも。


 【傲慢】【憤怒】【嫉妬】【怠惰】【強欲】【暴食】【色欲】。


 全て似たような事が原因で、それぞれの大罪持ちになった? 誰かとの関わりが原因って事かな? それで悪魔の力を得るまでになった。いや、捻じ曲がった?。


 まあ、これから明らかになっていくとは思うけど、最後まで明らかにならなかったりして。しかし【色欲】の悪魔であるラスティアが乱痴気騒ぎを起こさない理由って、もしかしたら皆と居るからなのかもしれない。


 それで大人しいなら、【色欲】であるラスティアが早く出てきた理由も分かる。だって寂しくなきゃ大人しいんだしね。それなら他の大罪より先に出てくるのは当たり前だよ。納得した。


 食事が終わった僕達は師匠の家から魔隠穴へ。そして素材を回収していく。中では魔力を詳細に感知しつつ、敵を見つけては倒していく。VRだから関係ない筈だけど、それでも目を使わないと他の感覚が鋭敏になる気がするね。


 出てくるパペットやドールにゴーレムを倒しつつ、それぞれの素材を回収したら脱出。次はバイゼル山から豪雪山へ。ここでもモンスターを倒しつつ素材を回収。既に慣れている行程なのでサクサク終わらせ、バイゼル山で金属を掘って終了。


 師匠の家に戻ってきたらマイルームへと戻り、ラスティアとキャスティも含めて全員戻し、僕は作業部屋で作業を始める。今日もここで作成を進めていくんだけど、いつもよりも少し上手くいくような気がする。


 微妙な違いだけど今まで散々してきた作業だからこそ、違いが分かる程度には違和感があるんだよ。しかも楽だという方向なので、僕としてはありがたい事だ。とはいえそこまで楽になっている訳ではなく、僅かに楽という程度でしかない。


 多分この差が積もって僕と他の錬金術師の差になっているんだろう。という事は、普段はこっちで作業をしない方が良い……?。


 修行にならないというか、練習にならないから却って駄目な気がしてきた。品質が良くなるのはいい事だけど、楽をするのは良くないな。うん、次からは囲炉裏部屋で作業しよう。やり辛くても、そもそも今まで通りでしかないんだし。


 作業が終わったらソファーの部屋に移動し、ラスティアとキャスティとファルを呼ぶ。3人は訓練してたんだけど、ソファーの部屋に移動する前に声を掛けているから大丈夫だ。いきなり呼んだとか言われて怒られない。



 「皆、おかえり。ボス戦は終わっただろうから、午後からは第3エリアに戻って攻略かな?」


 「そうだけど、もう殆ど終わりだね。後はさっさと突破していって終了かな?」


 「最後のオーソドックスなのがどうかは分からないけど、そこまで厄介とも思えない。アレは正攻法も裏も使えば問題なく倒せる。そうなったら後は面倒臭いのだけ」



 やっぱりラスボスは面倒臭い扱いになるね。仕方ないんだけど。


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