0532・新魔法と新アイテム
今日もレベル上げの為になるべく多くのアンデッドを倒す。何と言ってもレベルが高いので、少しでも通ってレベルを上げておかないと損だ。今は僕1人だけだから時間があるけど、皆が集まるとレベル上げの時間が無くなる。
いや、むしろ暗闇ダンジョンに行く前にしっかり全員でレベルを上げておくべきだろうか? その方が暗闇ダンジョンのモンスターに苦戦しなくても済むかもしれない。何だかんだといってレベル70前半はあるからね。
僕も前に出たり後ろに引っ込んだりしながら戦い、少しでも数を減らしたり有利にしたりしていく。セナはたまに敵の背後をとって投げ、他のスケルトンフォーアームやブッチャーゾンビにブチ当てたりしている。
当然だけど、邪魔された敵は怒ってセナを攻撃するのだが、そんな隙を晒しているバカをそのままにしておく僕達じゃない。別の仲間に攻撃を受けたり、【浄化魔法】を受けたりして沈む。しかしそれでも新しい魔法は覚えない。
「おつかれー。今までよりも殲滅するのが早くなってるね。慣れてきたからかもしれないけど、油断しないように戦っていこう。それと、セナの投げは今のところ上手く引っ掻き回してくれてるよ」
「そうね。ブチ当てられた敵は怒ってセナを狙うし、そんな隙を利用しない私達じゃないわ。相手を上手く利用してこちらを有利にする。戦闘の基本の1つだもの」
「ですね。戦闘においては敵もまた利用するものの1つでしかありません。上手く使ってこそですし、私達は損をしませんしね」
意外と容赦ないよね、キャスティは。もちろん決して悪いことじゃないけどさ。それはともかくとして、また近くにアンデッドが現れたっぽいから戦闘の準備をしようか。
僕達は再び現れたスケルトンフォーアームとブッチャーゾンビと戦う。先ほどと変わらず【セイントエリア】や【クリア】を使って弱体化し、その間にボコボコにして倒す。ある意味で、いつもの戦い方と言えなくもない。
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※スキル:【浄化魔法】のレベルが規定に達しました
【浄化魔法】に【セイントクリア】が追加されます
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おっと、この通知は僕に追加される時の通知だ。新しい魔法は【セイントクリア】か。これを使えば新しい浄化系のアイテムがドロップするかな? とりあえず次の戦闘で試してみるか。
「コトブキ、何かあった? 考え込んでるみたいだけど」
「さっき【浄化魔法】の【セイントクリア】が使える様になったんだよ。だから次の戦闘で使ってみて、浄石みたいなアイテムが出たら良いなと思ってさ」
「おや、【セイントクリア】が使えるようになりましたか。それならここのアンデッドも弱める事が出来るでしょう。【セイントエリア】も併用すれば更に弱まると思います。問題はそれが良いか悪いか微妙なところでしょうか?」
「そうね。こちらの実力を磨くなら弱体化はさせない方が良いのよ。今はレベルを上げる事を考えなきゃいけないけど、それと技術は全くの別だからね。レベルさえ上げれば強くなるなんてあり得ないし、だからこそ皆が苦労するんだもの」
「レベルを上げただけの強さは単なるハリボテですからね。能力としては高いかもしれませんが、それだけです。どんな者であろうともナイフ一本で死ぬ事を考えれば、レベルを上げればいいなんていう発想にはなりませんよ」
「大天使や大悪魔の場合は、天魔星鋼のナイフじゃないと無理でしょうけどね。あいつらだけ色々とおかしいから」
「色々とおかしいという言い方は不敬ですよ。言いたい事は分かりますが……」
思わず「分かるんかい」と言いそうになったよ。最初は大天使様って感じだったのに、蓋を開けるとちょっと違うよね、キャスティって。確かに敬意はあるんだろうけど、それとはちょっと違う感情も持ってる。
それも含めて大天使って言っても、多分何の感情も無い訳じゃないんだろうね。だからこそ思うところもあるんだろうし。
おっと、またスケルトンフォーアームとブッチャーゾンビが出てきた。とりあえず【セイントエリア】を使った後に【セイントクリア】も使ってみよう。
そう思って使ったのは良いんだけど、急に頭を抱えてクネクネし始めたよ。そういえば弱いアンデッドに【クリア】を使った時もこうなったね。つまりあのリアクションは効いてる証なんだろう。敵全てに使ってみるか。
僕は一体一体に【セイントクリア】を使っていく。スケルトンフォーアームは頭を抱えてクネクネしだし、ブッチャーゾンビは膝をついて頭を抱えながら地面をバンバン叩いている。どうもそれぞれでリアクションが違うらしい。
何がしたいのかよく分からないけど、悶えているだけの相手を倒すのは簡単だ。僕達はタコ殴りにして倒してしまうが、倒した相手から2つほど見慣れないアイテムがドロップした。
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<石> 浄化石 品質:7 レア度:4
浄石よりも強い浄化の力を秘めた石。浄化されたアンデッドを元にして作られる為、聖職者の腕が問われる。これを作った者は一定程度の実力を持つ
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成る程。【セイントクリア】が使える事が、一定以上の実力の証なのか。それにしてもやっと覚えたのに、一定以上でしかないとは……これまた厄介だなぁ。とはいえ僕が覚えたという事は、そろそろ皆も覚える筈だ。
となると、これからは多少楽になるだろうし、瘴木の浄化も進むだろう。あれも【セイントクリア】があれば楽そうだしね。よし、そろそろ進もう。
皆に声を掛けて更に先へと進むと、最悪の展開になってしまった。なんとスケルトンソーサラーが3体も出てきたんだ。どうやら思っている以上に奥に進んでしまったらしい。仕方なく全員に全力戦闘を指示し、僕は【セイントクリア】を使う隙を探す。
とにかく妙な壁でこっちの魔法を防いでくるから厄介極まりないんだよね。あの壁の魔法以外を使ったら、その瞬間に【セイントクリア】を叩き込、今だ!!。
「カタカタカタカタカタカタ!!?!!?」
スケルトンソーサラーは頭を抱えて地面を転げまわっている。これも新しいリアクションだが、セナがトンファーで何度も何度も攻撃して倒した。他のスケルトンソーサラーも隙が出来次第【セイントクリア】を喰らわせ、地面を転げさせる。
厄介なモンスターではあるが、【セイントクリア】さえ喰らわせればザコと化す。使えるか使えないかでここまで差が生まれるとは思わなかったが、簡単に倒せるならそれに越した事はない。魔法使い相手は面倒だからね。
倒したスケルトンソーサラーの最後の一体が綺麗な玉をドロップした。これってもしかして……。
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<素材> 浄玉 品質:7 レア度:5
浄化の力が篭もった綺麗な玉。浄化石よりも浄化の力が強く、強力なアンデッドからしか生成されない素材。これを武具に使うと強力な浄化効果を持つ
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………スケルトンソーサラーも倒す必要が出てきたなぁ。これを手に入れる為に頑張るしかないか。とはいえ今日のところは下がろう。そろそろ僕のMPがマズい。
持って帰るまでが冒険であって、持って帰れなければ意味が無いしね。【セイントクリア】無しでスケルトンソーサラーはちょっとキツいし、今の内に逃げよう。
僕は仲間達に指示を出すと、さっさと深層の入り口まで撤退するのだった。




