0529・アンデッドのドロップと皆へのアドバイス
朝食を終えた僕達は、いつも通りに魔隠穴へと行き素材を集める。相変わらず【魔力操作】や【魔力感知】が上級に上がらないが、そんな簡単な事ではないのだろう。そもそもVRだしMMOだしね。
経験値が恐ろしく必要だったり、試行回数がシャレになってなかったり、極低確率でしか手に入らなかったり。そういうゲームが当たり前なんだから、そもそも焦ったって仕方ない。それに、もしかしたら頭打ち状態かもしれないしね。
止められてるなら、どう考えても上がらないから意味が無い。とはいえギリギリで止まる可能性も高いので、アップデートと同時に上がるように上げておくのも大事だ。どのみち素材欲しさに来るから、気付いたら上がるって程度までは通うんだけどね。
とはいえ敵モンスターのレベルが上がってる以上は、段々と今集めてる素材じゃ厳しくなってきている。特にブッチャーゾンビのHPが高い所為で大変なんだよ。アンデッドだから仕方ないんだけどね。
でも、そう考えると浄化系の装備なら簡単に倒せるんだろうか? そっちを手に入れた方が良いのかもしれないけど、浄化系の素材って基本的に天使の星で手に入るんだよね。そのうえプレイヤーマーケットでもあまり見ないし。
どうも手に入れても生産職に指名で売るらしく、僕も買えるような形で出回っている物は少ない。しかも誰かに買われて碌なの無いしね。そうなると簡単には手に入らないんだよなぁ。後、思いつくのは浄石ぐらいなんだけど、あれはちょっと低ランク過ぎる。
アレを強化しても高が知れてるだろう。そもそも瘴気アンデッドに【クリア】を使って倒せば手に入るんだけど、スケルトンフォーアームやブッチャーゾンビからドロップしたりはしないんだよね。
だから瘴気アンデッドからドロップするとは限ってない訳で……。もしかしてもっと強力な【浄化魔法】であれば、何か別のアイテムをドロップするんだろうか? ちょっと分からないけど、【浄化魔法】の新しいのを覚えたら試そう。
豪雪山やバイゼル山に行って素材を収集したら、師匠の家に戻ってソファーの部屋へ。マイルームに全員を召喚したら、僕は囲炉裏部屋で素材の精錬を始める。
もしかして作業部屋に行って精錬した方が良いのかな? 色々な器具とかあるし……。
もし行くなら明日からにしよう。そう思って精錬を済ませ、終わったらソファーの部屋に移動。すると皆はもう戻って来ていたので、慌ててマイルームに戻り3人に伝える。
その後はソファーの部屋へと戻って召喚。ファルには昼食の準備に行ってもらった。
「コトブキが戻ってきたから言うけど、あんなに大変だなんて思ってもみなかったわ! 何なの最高難易度って。急激に難易度が上がりすぎでしょうよ! あやうく事故死するトコだったわ!」
「変身するヤツの第1段階。驚くほど速かった。前に戦った時とは比べ物にならないくらい。まさかあんなに違うとは思わなかったし、コトブキがカウンターで戦ったのがよく分かる。私も同じ戦い方で何とかなった」
「私もー。あまりに速くてビックリして目を瞑っちゃったんだけど、何故か当たってくれてグサーってなったよ。その御蔭で、目を開けたらいきなり変身中で驚いたけどね」
「相変わらずの意味不明な運。何故かナツはそれで助かる事が多い。ある意味理不尽だけど、それがナツだから仕方ない」
「イルだって妙な勘があるだけマシでしょうが。私なんて自力よ自力。自分で何とかしなきゃいけないんだから、勘も運もあるだけよっぽど恵まれてるわよ」
「恵まれてるセンスと感覚を持ってる人が言うべきではありませんよ、本当に言えるのは私だけでしょう! 本当に大変だったんですから。あれをノーデスで突破できたのは奇跡です。だからこの後が突破できるか分からず……」
アマロさんはなぁ……。何というか、この中では一般人代表みたいな感じだからねえ。そもそも自力で攻略したとか言ってるけど、トモエの自力って相当高いんだよね。何たって僕のを全部持って行ったんじゃないかってくらいの才能持ってるし。
それを言うと色々と言い返されるから言わないけどさ。でも、そういう意味ではアマロさんの言ってる事の方が正しいんだよね。
「それでも突破出来たから良かったと思うよ。後は地下の大軍だけだね。あそこが危険だけど、最悪は上に退避しながら細い通路で迎え撃てばいい。少しずつ減らしたら何とか突破出来るよ。駄目なら諦めるしかないね」
「それでも狭い通路があれば何とか持ちこたえられると思う。あそこなら一斉に向かってくる事はできないし、だからこそコトブキもあそこで戦ってた。でも斧じゃなくて刀で戦うべきだったと思う。弱点が突けるのが結構居た」
「ああ、それはあるかも。斧の方が甲殻を割りやすいかなって思ってそのままだったんだよね。弱点を考えると刀の方が良いか。片手で使うなら突きをメインに使えばいいよ、盾を持ってね」
「まあ、刀は突きで使えば10人以上は殺せるって言うしね。あんな形状だけど、突きに使えない訳じゃないから大丈夫でしょ。本来なら剣の方が突きに適した形状をしてるんだけど……」
「剣は大軍の部屋の中にあるから取れないし、戦闘中に強化するのは流石に無理。戦闘後にゆっくりやる必要があるし、無理に取りに行っても意味が無い。そんな事をすればすぐ死ぬ」
「まあねえ。やっぱり自分の楽な形で戦うべきね。それこそ盾じゃなくて、左手は短剣でもいいかも。それで戦えるなら、だけどね」
「レイピアでの戦闘において片手はマン・ゴーシュだったらしいし、戦えなくは無い。ただし決闘用だからそれで済むとも言える。大軍相手は乱戦だから、そんな装備じゃ多分死ぬ。コトブキならワンチャン……?」
「いやいや、そんな面倒臭い装備しないよ。あれだけの大軍相手なのに、そのうえ自分の手足を縛るような事をする訳ないじゃん。幾ら戦闘といっても、僕はマゾじゃないよ」
「やっぱりそう思えるくらい短剣では危ないんですね。むしろ盾と槍の方が良いでしょうか?」
「それもどうだろう。あそこ素早いのとかも出てくるじゃない? それに対して点で攻撃する槍で戦えるかと言うと、ちょっと難しいとしか言えないよ。槍って面積の多い人間相手なら有効だけど、小さい相手にはねえ……」
「それに関してはコトブキの言う通りね。小さくて素早い相手に槍は不利よ。思いっきり懐に入られたらどうにもならないわ。そういう意味では剣の方が戦いやすいでしょうね」
「ですね。もしくは盾で弾き飛ばすかですが、乱戦では難しいでしょう。魔法で排除しては?」
「あそこなら【サンダーバインド】を使って、効いている間に殺すって感じかな? それなら槍でも戦えるよ。どっちにしても刀の方が良いけどね。乱戦で懐に入られたら、どうにもならないからさ」
「乱戦で一番大事なのは、常に退路を確保する事よ。逃げられなくなったら終わりだから、狭い通路でも危険なら下がっていきなさい。階段があるなら素早く上がって、上から蹴り落とせばいいのよ」
「ええ。ラスティアの言っている事は正しいです。乱戦で追い詰められている時に、四の五のなど言っていられません。地形を利用したり数の多さを利用する。とにかくあらゆる事を利用するのです。勝つ為に手段を選んではいけません」
「まったくもって正しいけど、【純潔】の天使が言うことじゃないと思う」
「それは勘違いしていますね。何故なら【純潔】を保つ為にも必要なのです。負ければ穢されるのですから、負ける訳にはいかないでしょう?」
「「「「「「………」」」」」」
どうやらキャスティも過去に色々とあったようだ。まさかとは思うけど、【天使】を手篭めにしようとした人でも居たんだろうか? 頭のおかしい権力者なら考えるかもしれないけど……。
「カンカン」
ファルが来たから、この話題はスルーして食堂に行こう。こういうのは掘り返さないに限る。




