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0527・3カウント




 指貫グローブを外し、血染めのバンテージを身につけたセナ。早速とばかりに【地獄突き】を使っている。それ喉に使うべき攻撃だから、生きていないとあんまり意味ないんだけどなぁ。まあ、楽しそうだから別にいいか。


 闘気を消費するらしいが、その辺りはセナの裁量に任せるので好きに使ってほしい。そろそろ帰ろうかと思っていたら、後ろからブッチャーゾンビが現れた。適当に倒そうかと思ったら、セナが前に出て牛刀をかわし【地獄突き】を喉に突きこむ。


 特に効いていないなと見ていると、突然ブッチャーゾンビが咆哮を上げる。



 「グオオオォォォォォォォ!!!」



 そして牛刀を落としたブッチャーゾンビは素手で戦い始めた。セナに対して左手でパンチをしてきたが、セナは外にかわしてヌンチャクで脇腹を一撃。するとパンチの手が裏拳になって返ってくる。


 急に変わったので慌ててバックステップで離れるセナ。再びブッチャーゾンビが攻撃してくるも、今度は右手でのパンチだった。今度は右にかわして攻撃しようとしたセナだったが、ブッチャーゾンビの右手が開き服を掴まれる。


 慌てて攻撃して放させようとするも、ブッチャーゾンビは左手で股の間に腕を入れると、掬い上げて地面に叩きつけてきた。変則的な投げだが、セナには効いたらしく慌てて距離をとる。


 何故かは知らないが、急に目の前でプロレスが始まったので、僕は面白いと思い他の皆には手を出させないようにしておく。どこまでセナが戦えるかも含めて楽しそうなんだよ。


 セナは何か考えがあるのか、突然武器を仕舞って素手になった。それを待って再びブッチャーゾンビが右手でパンチをしてくる。この後に掴まれた事を覚えているセナは、外側にかわしてブッチャーゾンビの腹に肘で一撃を加えた。


 その事すら気にしないのか、今度は左手でパンチを繰り出すブッチャーゾンビ。そのパンチをしゃがんで避けると、今度は膝で攻撃をしてくる。セナは横に転がって回避し、再び立って構えた。


 少し睨み合いになったが、お互いに動き出した両者。今度は素早くパンチを打ってきたブッチャーゾンビに対し、上手くスウェーやダッキングでかわすセナ。そして隙があるとミドルキックで反撃。


 それを何度か繰り返していると、怒ったブッチャーゾンビが【地獄突き】を繰り出してきた。しかしそれを綺麗にかわしたセナは、こちらから【地獄突き】を喰らわせる。その一撃で〝何故か〟膝を地面についたブッチャーゾンビは苦しむフリをしている。


 それを見て何を思ったのか、セナはブッチャーゾンビの後ろに回って抱えると後ろに投げ落とす。素人のやり方なのでバックドロップなのかジャーマンスープレックスなのか分かり難い投げ方になっている。


 とはいえ倒れたブッチャーゾンビに対し、セナは足を体の上に乗せてガッツポーズ。すると何故かゴングが聞こえてきて3カウント。その後、カーンカーンカーンカーンカーン! と鳴るとブッチャーゾンビは消えていった。


 …………何がしたかったのだろうか?。



 「えっと、どういう事でしょうか? 何故かブッチャーゾンビが消えていったのですが……。っていうか、まだまだピンピンしてましたよね? 何で浄化した後みたいに消えていくのでしょう。意味が分かりません」


 「本当にね。訳が分からなさ過ぎて、何て言っていいかも分からないわよ。そもそもさっきのカンカンっていう音はなに? 何故か急に聞こえてきたけど、意味が分からないしビックリしたじゃない」


 「まあ、それは放っておいてそろそろ帰ろう。僕た、うん?」



 ―――――――――――――――


 おめでとうございます。全プレイヤーの中で、初めて3カウントでのフォール勝ちを収めました。

 召喚モンスター:セナが称号【3カウント】を獲得しました


 ―――――――――――――――



 いや、ちょっと待って。どういう事さ? …………地味に強力な称号だなぁ。最初の1人しか獲得できないみたいけど、プロレスラーっぽい敵から3カウントとると貰える称号のようだね。


 打撃と投げ技と関節技のダメージが増えるらしい。ただし打撃は素手のみなようで、格闘武器のダメージは増えないようだ。なかなかに優秀なんだけど、素手の威力じゃねえ……。これ、本命は投げ技でしょ。せっかくだから、セナには投げ技を教えておこう。


 このレトロワールドには投げ技なんて名前のスキルが無いんだよね。だからおそらく【格闘術】に組み込まれてるか、最初から誰でも使える攻撃なんだと思う。実際、ストンピングは【格闘術】に含まれてないっぽいんだ。


 それを考えると、投げ技もおそらく誰でも使えるようにしてあるんだと思う。それならセナに教えておいて損は無い。うまく使えば敵を巻き込んで攻撃できるかもしれないしさ。投げっ放しジャーマンとかジャイアントスイングとか。


 何を教えるか考えながら戻り、師匠の家に着いたらソファーの部屋へ移動。そしてマイルームへと戻りファルとラスティアとキャスティ以外を訓練場に召喚。そしてソファーの部屋へと戻って、改めて皆に挨拶する。



 「ただいま。皆は早めに戻ってきてたんだね。第3エリアまで行けた? 今日の午前で第2エリアの5階だとは聞いたけど」


 「問題なく行けたわよ。必要な物もキッチリ揃えられたしね。しっかし、ここからが厄介よ。第3エリアの動画を見直してるけど、本当ここからは面倒極まりない」


 「敵が多いからミスをする可能性が高い。ちょっとした凡ミスでも、そのままズルズルとやられる恐れがある。それに気をつけるのと同時に、個々も強いし賢い」


 「そうそう。何か1回目と違って動きが賢いよね? 難易度が高いからかもしれないけど、こっちが嫌だなって動きをしてくるんだよ。あんなの初めてだから嫌な感じ」


 「確かにそういう動きはありますね。そちらはどうでしたか? 何かありました?」


 「セナが3カウントとって勝ったぐらいかな? それ以外は特に変な事もなかったよ」


 「3カウント? プロレスじゃあるまいし、いったい何を言ってるのよ」


 「それが事実なんだよ。ブッチャーゾンビを倒してたらレアアイテムを手に入れてさ、それが<血染めのバンテージ>という物で腕防具だったんだ」


 「成る程、分かった」


 「あ、イルは分かったんだ。それには【地獄突き】っていうスキルが付いててさ、セナが装備してブッチャーゾンビに使ったらプロレスが始まったんだよ」


 「何故なのか理解に苦しむ始まり方ね? まったくもって訳が分からないわよ」


 「セナがブッチャーゾンビに【地獄突き】を食らわせた後、背後に回って投げ飛ばし、その後は体に足を乗せて3カウント。何故かブッチャーゾンビは消えていったよ。そして称号の【3カウント】は何故かセナが入手した」


 「えっ!? 召喚モンスターでも称号を獲得出来るんですか!?」


 「どうもそうみたい。【3カウント】の効果は素手の打撃、投げ、関節のダメージが上がるってものだったよ。意外に有用だと思うけど、3つの中の本命は投げかな? 夜にログインしてセナに教えようと思ってる」


 「それにしても【3カウント】ねえ。いや、ブッチャーとプロレスが出来るなら喜んでやるプレイヤーも居るでしょうけど……」


 「ブッチャーじゃなくてブッチャーゾンビね。一応間違えないように。色々と問題があるかもしれないからさ」


 「問題? 言っちゃいけないとか、後で本人の近くの人に怒られる………もしくは、人間爆○にされるとか?」


 「それはザン○ット3に出てくるキラ○・ザ・ブッチャーであって、プロレスラーの方じゃないから」


 「何を話してるのかサッパリね」


 「まあ、放っておきましょう。どうも大した意味はなさそうです」



 夕食までの暇潰しだからね。こんなものだよ。


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