0526・ブッチャー?
深層を歩いて進み、アンデッドが出てきたら倒す。それなりに慣れたものの、やはり【浄化魔法】無しは大変だ。それでも少ない数ならば【浄化魔法】無しで倒し、出来る限りMPの消費を抑える。
瘴木を浄化しなければいけない為、そう簡単にポンポンと魔法を使う訳にもいかない。だからこそMP消費を減らしたいのだが、ここでは敵が群れる事が多く簡単にはいかない。特に混合だと使わないと大変だ。
逆にスケルトンフォーアームだけなら何とかなるんだけどね。と言っても、小人数の時に使える戦い方を大人数の時に使っても仕方ない。やはり人数が多いと一気に攻めた方が楽なのだが、レベル80台の敵はパワーで押してくる。
特にブッチャーゾンビのパワーは厄介で、肉弾攻撃で転倒させられてしまう事もしばしばある。なかなかに厄介な相手だ。それでも倒して進み、苦労をしながらも瘴木を木晶に変えていく。
ある程度ウロウロしていると、そいつは現れた。
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<スケルトンソーサラー> Lv88
生前は高名な魔法使いであったものの、今は瘴気に汚染されていて危険。特に範囲魔法に注意しよう。このレベルの魔法使いは脅威となる事が多い
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このレベルって、88は高すぎでしょうよ。幾らなんでも更に上がるとは思わなかった。
「速攻!!」
僕も【セイントジャベリン】を使うが、何かの黒い壁に阻まれて全くダメージは与えられなかった。しかし黒い壁を作るのに魔法を使ったらしく、範囲魔法が飛んでくる事は無く助かっている。
僕は素早く【セイントバレット】を放つも、再びスケルトンソーサラーは黒い壁を生み出す。それは一度で消えて無くなるが、【セイントジャベリン】でさえ防げる魔法らしい。既に接近した仲間が攻撃しているので、魔法は撃たないでおく。
すると突然スケルトンソーサラーは黒い爆発を起こし、近付いていたファルやシグマにキャスティを自分諸共吹き飛ばした。
「あれは【ブラックボム】の魔法ね。もう少ししたら私達も使える筈だけれど、自分に近接攻撃をさせない為にワザと使うなんて、思ってるよりも頭は良いんじゃないかしら?」
「でも、あれ自爆攻撃なんじゃないの?」
「残念ながらアンデッドは大抵の闇属性は無効化するか吸収するのよ。だからあいつは碌なダメージを受けてないわ。それより魔法で攻撃!」
「【セイントバレット】」
とりあえず魔法で攻撃すると、再び黒い壁を張って防いでくる。どうやらここまで露骨に嫌がるって事は、相当程度【浄化魔法】に弱いみたいだね。それでも防ぐ手段を持ってるから厄介なんだけど。
迂闊に近付くと黒い爆発で吹き飛ばされるし、遠い距離だと強力な範囲魔法を使われかねない。どうやって倒すべきかと考えつつ【セイントバレット】を撃っていると、回復した仲間達が攻め始めた。
再び近付いたものの、今回近付いたのはシグマだけだ。そのシグマが斧を動かすと、すぐに【ブラックボム】という魔法を使ってきたがシグマは盾で防いだ。そしてその後ろからセナが追い駆け、倒れているスケルトンソーサラーに一撃を加える。
それだけではなく、上空からエストが【セイントバレット】で攻撃すると、それを受けたスケルトンソーサラーは硬直した。そこへ続けてセナのトンファーが頭に決まると、頭蓋骨が割れてスケルトンソーサラーは倒れた。
「お疲れー。まさか1体であそこまで厄介だとは思わなかったよ。皆も魔法でかなりのダメージを受けたみたいだし、相当魔法に寄ったステータスをしてるヤツみたいだね」
「お疲れ。どうやらそうみたいね。とにかく攻撃か【浄化魔法】を当てれば簡単に倒せるみたい。それにしてもレベル88が登場するのね、この深層には。脆くて良かったけど、あれで耐えられるのなら相当厄介なアンデッドでしょうね」
「お疲れ様です。まさか【ブラックボム】を使ってくるとは思いませんでしたよ。あの鑑定結果から察するに、【ダークバースト】まで使ってきそうですね」
「コトブキは知らないだろうけど、【ダークウェーブ】の上位が【ダークバースト】なのよ。範囲はウェーブより狭いけど、代わりに威力がかなり上がってる魔法。あれを使われると面倒だから、さっきのは【セイントバレット】での牽制が正解でしょうね」
「ええ。あの程度の魔法で牽制できるのですから、ありがたいものです。コトブキも言っていましたが魔法特化な為に耐久力が低いのでしょう。それにセナの武器は両方打撃ですから、スケルトンとは相性が良かったですね」
「テキボコボコ、ツブス!」
「端的に言い過ぎだけど、殺る気は伝わってくるわね。さっきも容赦なく頭蓋骨をカチ割ったし」
「とりあえず話は止めて、そろそろ戻った方が良いかもしれません。先ほどは1体で助かりましたけど、複数体が出てくる可能性は十分にありますから、このまま留まっていると危険でしょう」
「流石に魔法系は面倒だし、絶対に自分達は被害に遭わない【闇魔法】でゴリ押ししてくるわね。コトブキ、どうする?」
「よし、入り口まで逃げよう」
僕は即決し、さっさと後ろへと下がっていく。真っ直ぐに進んでいたから、最深部へと近付いたんだと思う。そして、だからこそスケルトンソーサラーが現れたんだろう。だから入り口近くまで離れれば、おそらく出てくる事は無い。
仮に対処不能なほど出てきても、中層に逃走すれば助かるので入り口まで逃げるのは間違ってないと思う。
途中でスケルトンフォーアームやブッチャーゾンビが出てきたが、スケルトンソーサラーが出てくる事は無かった。やはり予想した通りだったんだろう。
「そうですね。最深部に近付くと出てくるのでしょう。入り口近くだとそうでもないようですし、この辺りで戦い続けるのが良いでしょうね。魔力が無くなったら帰れば済みます」
「そうね。私達は未だレベル上げというか実力を取り戻すのが先だから、強い奴と数回戦うよりも、しっかり戦い続ける事が大事よ」
まあそうしないとレベルが上がらないしね。高経験値の奴と数回戦うよりも、それより低くても戦い続けられる方が結果として経験値が稼げる。数回戦って町に戻るとか、経験値効率悪すぎだし。
無理して先へ進んだら、次の町の周りのザコが強すぎるってパターン。レトロゲームだとあったりするんだよねえ。あれはあれで足りてないっていう目安になるから分かりやすくて良いんだけどさ、戦いが厳しすぎて辛いっていうのはある。
スケルトンソーサラーは正にそういう感じかな。それに、多分だけど奥の方はスケルトンソーサラーだけじゃないと思う。もう1種か2種は出てくるんじゃないかな? 最深部に行かせない為に。
唯の予想だから合ってるかは分からないけど、そう簡単に最深部に行けるとは思わないんだよね。だからこそ、レベル90台も出現する覚悟をしておこう。
それからはスケルトンフォーアームとブッチャーゾンビを狩っていき、そろそろ帰るかと思った矢先に面白い物が出た。
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<腕防具> 血染めのバンテージ 品質:10 レア度:10 耐久1525
ブッチャーゾンビが生前使っていたバンテージ。血に染まっているが、それはブッチャーゾンビの物なのか、それとも何か別の者の血なのかは不明。何故か妙なスキルが付いている
防御力50 魔法防御力55 【地獄突き】
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……うん、やっぱりね。あの鑑定結果だし、肉屋じゃないと思ってたよ。
えっ? セナが使うの? まあ、別にいいけどさ。




