0521・知り合い達のイベントクリアとやり直し
師匠の家に戻ったのでファルを夕食の準備に行かせて、僕はソファーの部屋へと行きマイルームへ。全員を訓練場に召喚したら、僕は囲炉裏部屋で精錬作業を行う。久しぶりの感覚がするけど丁寧に熟していき、終わったらソファーの部屋へ。
既に皆は戻って来ていたけど、その表情は悪い。
「やっぱりノーデスじゃない事が響いてたのか、リザルトがちょっと……。それに他のもねえ」
「まあ、ランキングには載っちゃったから見に行けば分かるけど、お互いに酷いよね?」
「2デスした時点で駄目っぽい。ついでに再スタートで始めても、難易度的には調整されてる。その所為で難易度ボーナスも相当悪かった。コトブキと比べても違いすぎる」
そう言われて見に行くと、確かに相当ポイントが違っていて唖然とする。特に難易度ノーマルクリアって1.5倍しかされてない。僕の最高難易度クリアって確か5倍だよね? ここまで違うのか。
先ほどの話と合わせると、1度……もしくは2度死んだ段階で最高難易度にはならないんだと思う。その時点でどれだけ再スタートしても最高難易度には戻れず、おそらくハードモードスタートだろう。
擬似と完全に差があるというなら、おそらく1度は死亡が許されているんだと思う。あの運営が1デスを許してくれる時点で大分甘いとは思うけど、それぐらいじゃないと高ポイントで突破は出来ないか。
となるともう1回最初からやり直すしかないね。実際トモエ達もそのつもりらしい。流石にポイントを稼いでおかないと、引き換えるものによっては莫大な金銭が要る可能性が出てくる。マイルームが追加された時もそうだったし。
「そうなのよねえ。ここで頑張っておかないといけないのよ、後で苦労するのも嫌だしさ。それに、今回のイベントって最初から2周前提な気がするのよね。わざわざクリア後にやり直せる事自体が、2周目を推奨してるでしょ?」
「それはそう。だからこそ死亡すると難易度低下とか厄介な形にしてある。どう考えても2周目の為の下準備だと思う。1週目でどれだけしっかりやってきたかで2周目の難しさが変わる。とはいえ最高難易度の動画を公表する事になったのは、運営にとって計算外だった筈」
「アレは無理だと思います。あんな最高難易度の攻略を一番最前線で突っ走るなんて反則でしょう。1デスもしていないからこそのトップですからね。運営の人達も諦めたんじゃないでしょうか?」
「それはねー。あそこまで先頭を走ってたら、むしろ笑ってるんじゃないかな? 想定外だと言いつつも楽しんでる気がする。だってナーフ? っていうのされてないんでしょ?」
「全くじゃないけど、それは理由が当たり前すぎる事だったからね。だからアレはナーフとは思ってないし、となるとされた事は無いね」
「とはいえコトブキはナーフし辛い。何故なら大半がプレイヤースキルという形だから、無理にナーフすると殆ど全プレイヤーが被害を受ける。そして結局のところ差は縮まらない。本当にナーフしたいなら、旧世代のVRマシンを使わせないと無理」
「もしかして、あの反応が遅すぎてまともにゲームが出来ず、観光VRとかしか楽しめない第2世代の事? あれって地獄だったみたいだけど、今はもう何処にも無いんじゃない?」
「うん。博物館に展示してあるのは見た事あるけど、何かゴーグルとか着けるだけのヤツだよね。反応がズレてて、売り出されたゲームも碌に出来なかったって聞いた事あるよ」
「冗談じゃなくて本当の事らしいですけど、それでプレイしろってなったら新手の虐めみたいですね。逆に言えば、それぐらいしか方法が無いんでしょうけど」
「コトブキに合わせたら難易度が<BUSHIDO>になってしまう。そうなると一部の人しか出来ない修羅ゲーの完成」
「修羅ゲーね、確かに間違ってないところが何とも言えないわ。実際、私達でも匙を投げるだろうし、他のプレイヤーならもっと無理よ。頭のおかしくなる人外魔境の完成じゃない?」
「流石にそれは酷いんじゃない? ここの運営の人いわく、僕以外にも完全リアルモードの<鬼一法眼>を倒せる人は居るらしいし」
「「えっ!? 本当に!?」」
トモエとイルが驚いてるけど、そこまでかな? あの<鬼一法眼>にもちゃんと隙はあるから、倒すのはそこまで難しくないけどね。こっちは学習して学ぶけど、向こうは決まってるからさ。
倒す方法さえ分かれば、そこまで苦戦するものでもないんだけど……。ただ、初めて戦った人は混乱するだろうけどね。ビックリ人間みたいに反応するから。
トモエとイルもおそらく怖いもの見たさに戦った事があるんだろうね。そして多分だけど何も出来ずに負けたんだと思う。僕も初めての時はそうだったし、だからこそ気合いを入れて攻略に取り掛かったんだけどね。
「ここの運営の人が<BUSHIDO>の話をしたって事は、知っている人なのか、それとも開発に居たのか。でもこのゲームの感じだと、おそらく開発に関わっていた人よねえ」
「ここまでファンタジーでレベルもスキルもあるのに、中身は<BUSHIDO>の関係者………。その事実が一番恐ろしい」
「まあ、言いたい事は分かるわ。あんなメチャクチャで頭のおかしいゲームを創る人が、今度はこんなファンタジーで普通? のゲームを創るなんてね」
「今、普通の後に絶対「?」を入れた。トモエだって普通じゃない事は薄々気づいてた筈。ここの運営がちょっと変だったのは明らか。ただそれが普通になっただけ。だってあんなゲームの開発だし、なら「変」が「普通」になる」
「それは確かにそう。だって「カンカン」アレ……っと、来たみたい。続きは戻ってからね」
僕達は食堂に移動し、早速夕食を食べてく。その最中に師匠が話し掛けてきた。どうやら深層がどうだったか聞きたいらしい。
「瘴気で薄暗く、アンデッドの強さが桁違いに上がってましたね。流石に暗闇ダンジョンより上だとは思ってもいませんでしたよ」
「あそこレベル74とかじゃなかった? それよりも屍人の森の魔物って強いの?」
「今日出てきたスケルトンフォーアームってヤツ、普通にレベル80を超えてた。最初に出て来たのが81だったからね。ブッチャーゾンビは79だったけど」
「「「81……」」」
「それでも【セイントエリア】と【クリア】で弱体化はできるから十分に戦えるわ。ただ、魔力が無くなるのが早いのよね。そのうえ瘴木を浄化するにも魔法を使う必要があるし、今は何度も通って強くなる事が先よ」
「ええ。焦らずに着実に強くなる事が重要です。こういう時に焦ると大抵失敗しますのでね。それにスケルトンフォーアームも技術的な部分はそれなりに優秀でしたから、4本腕でも練習にはなります」
「4本腕のスケルトンって厄介そうねえ。ブッチャーというのは肉屋の事でしょうけど」
「アブド○ラ・ザ」
「コトブキ、何か言った?」
「いや、何も……」
何故か高速でラスティアからツッコミが入ったけど、これは言っちゃいけなかったのかな? 地獄突きをブッチャーゾンビにしたら何か反応があるかもしれないね。ま、わざわざそんな面倒な事はしないけどさ。
しかしあの説明文なんだから、確実にそっちに寄せてるよね? 僕としてはむしろそういう弄りを期待した鑑定結果だと思ったんだけど、違うのかな? まあ考えなくてもいい事か。
夕食が終わったのでソファーの部屋へと戻り、そこからマイルームへ。ログアウトして現実に戻ったら、お風呂や夕食を済ませてログイン。
さて、今度はファルのレベル上げだ。ちょっと五月蝿くするかもしれないけど、師匠にバレたら謝ろう。おそらくは気にされないだろうけど。気配でバレてるっぽいし。




