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0518・屍人の森・深層




 「食事には来たけど、いったい何処に居たのよ。コトブキ」


 「外に出て作った刀を振ってただけだよ。やはり木刀とは違うし、一応鍔とかあるしね。持ち手は木だけど手に馴染むから問題は無し。そうやって1つずつ確認してたんだ。必要な事だからね」


 「ああ、そういう事。通りで私達を放ったまま何処かへ行った筈よ。単に練習してただけだったとはねえ。それにしても刀っていうのを使うって事は、これからの戦いでは全力を出すって事かしら?」


 「いいや。いつも通りに槍か棒で戦うのがメインだよ。でも刀も使っていく事になるだけだね。何というか、装備が武士っぽいのが何とも言えなくなるけど、これも仕方ないのかなぁ」


 「槍はともかく、棒は武士っぽくないと思うんだけど……」


 「そんな事は無いよ。誰だったか忘れたけど、金砕棒を戦で使ってたっていう武士が居た筈。実際に西洋でメイスが使われていた以上、日本で使われていても不思議じゃないしね」


 「まあ、それは確かにそうだね。それで戦えたのかどうかは知らないけども、使われる可能性はあると思う。でも金砕棒って、確か鬼が持ってる物じゃなかった?」


 「それは金棒。金砕棒は棒の先にトゲが沢山付いてるだけの物。持ち手の近くが輪っかになってない、普通の棒状の武器。そもそも持ち手の手前が輪っかになってる武器なんて、金棒と苦無しか知らない」


 「苦無! それって忍者の武器だよね? 投げたらピューっと飛んで相手に刺さるっていう武器!」


 「本当は違う。苦無には色々な形があってこれと決まってないし、元々は多用途に使う唯の道具。持っていても不自然じゃないからこそ忍者が武器にした」


 「そうだね。忍者の武器って基本的には当時の人が持っていても不思議じゃない物ばかりだよ。もし珍しい物を持ってたら疑われるからね。だから怪しまれる物は徹底的に排除してる。実は忍者って本当に目立たない人達だったと言われてるんだよ」


 「まあ、人ごみに隠れるのが当たり前な人達だから、怪しまれない物しか持たないわよねえ。例えば大工道具の箱に入ってる武器はのみだったりね」


 「木を削る、あののみ?」


 「そう。忍者が使う槍の1つに忍槍というのがあって、これは先がのみそっくりになってるのよ。それで敵を倒したり穴を掘ったりするわけ。実は農具のすきに似せて作ってあったらしいわよ」


 「すき?」


 「先がのみに似た、古い時代のスコップ? シャベル? だと考えると分かりやすいかな。先が長方形の形をしてるものだよ」


 「へー、そんなのが昔あったんだー」


 「だから忍者刀とかいうのも無かったし、そもそもあれは直刀と言って古くからある刀」


 「え? そうなんですか!?」


 「ナツじゃなくてアマロが驚くのね。実は真っ直ぐの刀である直刀は、緩やかに曲がっている刀より古いのよ。いつ曲げるようにしたかは定かじゃないらしいけど、それよりも前の時代から直刀が在ったのは分かっているそうよ」


 「その真っ直ぐな方は使わんのか? 剣と同じでそちらの方が使いやすいと思うが……」


 「刀が曲がっているのは、その分だけ切れ味を上げる為です。相手の体に沿うように斬っていき、曲がっている部分をなるべく長く敵に沿わせる。そうする事で切り裂く時間を長くして滑らせ、その分だけ敵を斬る訳です」


 「ついでに剣や直刀だと、必ず途中で引っ掛かる。切り裂き続けても真っ直ぐな為に、どこかで引っ掛かって滑らせる事が出来なくなってしまう。人だってスパッと切れる訳じゃない。だから滑らせる事が出来る様に湾曲してる」


 「打刀と太刀は違っていて、太刀は打刀より深く湾曲してるの。つまり反りが深いのが特徴ね。つまり、より切れ味に特化してると言えるわけ。とはいえショーテルみたいに湾曲してる訳じゃないから、世界的に見るとそこまででもないのよ」


 「ショーテル……?」


 「湾曲が刀よりも遥かに深くて、鎌のようになってる剣だよ。エチオピアだったかな? その辺りで使われてたらしい。確か皇帝直属の戦士が使う剣だったと思う」


 「そんな剣まであるんだね。それも切れ味を追求したからそうなってるのかな?」


 「多分そうじゃない? ただしショーテルほど曲がってると凄く扱い難かったそうで、使い熟せるのは熟練の戦士だけだったらしいよ。だからもしかしたら、それを使えるのは名誉であり特別な者の証だったのかもね。日本でもそうじゃない? 刀って特別でしょ?」


 「「あー……」」



 ナツとアマロさんは特別という部分に納得したようだ。刀だって持てるのは武士だけで、農民は脇差までしか持てなかった筈だしね。それ以上は詳しく知らないけど、でも江戸時代にも刀を持ってる庶民って居たような……?。


 あれは創作話だったのかな? まあ、いいや。そんな深いところまで興味無いし。


 昼食の終わった僕達はソファーの部屋に行き、今度はドースを置いて行く。残念ながら<屍人の森>は森だからね、ドースの大きさじゃ動き難いんだよ。だから置いて行くしかない。


 それだけ話して戻り、師匠の家の前で全員を集め準備を整えると出発。まずは浅層の澱み草から枯らしていく。【浄化魔法】を使えば簡単に萎びて消えるので大した手間も掛からない。


 澱み草を見つけつつ浄化していき、僕は作ったばかりの太刀で敵を切る。大してダメージが与えられないが気にせず攻撃し、後は【クリア】で止めを刺す。すると予想通りのウィンドウが出た。



 ―――――――――――――――


 ※スキル:【刀術】を習得しました


 ―――――――――――――――



 これで良し、と。後は適当に戦えば良いだろう。訓練場では訓練でスキルレベルを上げられるが、スキルを覚える事は出来ないみたいなんだよね。もしかしたら出来るのかもしれないけど、実戦で覚えた方が手っ取り早いしこれで良い。


 その後はウロウロとしつつ敵を適当に始末し、浅層が終わったら中層へ。ここの魔物も相手にならないので適当に倒していく。随分前に通った場所なので、今さらどうこうという事もない。


 適当な感じでさえ倒せてしまうし、あからさまに弱い所為か皆もやる気が無いみたいだ。澱み草探しはしっかりしているだけに、その落差が激しい。まあ、気持ちはよく分かるから注意はしないけどね。


 そのまま中層も終わらせ、ようやく深層に踏み込む。



 ―――――――――――――――


 ここから先は屍人の森・深層となります


 ―――――――――――――――



 あれ? 昔は〝絶対に死亡します〟とか出てたけど、今は何も出なくなったね。という事は推奨レベルを突破してるって事か。通りで師匠が行けと言う筈だ。僕は問題無かったんだね。最初の事があるから、敵は凄く強いと思ってたよ。


 深層に踏み込むと更に辺りは暗くなった。僕は色々見える装備を着けているが、それが全く機能していない。となると、これは瘴気の濃さで見えなくなっていると考えるべきか。厄介な場所だよ。


 そんな中、早速とばかりに腕が4本あるスケルトンが出てきた。



 ―――――――――――――――


 <スケルトンフォーアーム・上級> 魔物 Lv81


 かつて存在した種族とも言われている謎の魔物のスケルトン。瘴気を浴びて強化されている為にかなり強い。武器を持っている事も多いので気をつけよう


 ―――――――――――――――



 確かに腕には長い剣のような骨、槍のような骨、棒のような骨に骨盾を持っている。それが3体とは厄介な……。


 それにしてもレベル81って、暗闇ダンジョンより高いんだけど? ここ本当に適正レベルなの?。


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