0516・運営さん達36
「天兵氏の事を知っているのが、彼の知り合いにも居たのか。まあ、天兵氏は白山住みだから分からなくもないが……」
「五條グループの名前が出ましたけど、華麗にスルーしましたね。まあ、私も関わりたくはないのでこれ以上は何も言いませんけど」
「白山のヤバイ人達と関わるのは良くないからな。私としては極力関わりたくもない。言霊となっては困るので口にもしたくないしな。勘弁してもらいたい」
「そうですね。このままスルーし続けましょう。知った所で意味無いですし、何かの便宜なんて図りませんし図れませんしね。このまま頭の中からも消してしまいましょう」
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2000年 12月1日 金曜日
「あらら……五條グループのお嬢さんに答えがバレてるけど、いいの? あの大岩は走る者の速度によって遅くも速くもなるって。挙句、一定の速度を出してないと隠し部屋に入れない事もバレてるし」
「五條グループの七不思議の1つね。何故か会長一族は猛烈に勘が鋭い人が多いって言われてるわ。あの子もその例に漏れないのかもしれない。彼もそうだけど、白山住みの人ってちょこちょこ不思議な人が居るわよね」
「勘違いしているみたいだな。白山住みで不思議な力を持ってたりするのは、大昔から白山に住んでいる者に限定されるらしい。おそらくは彼もそうなのだろうな。あそこには古い神社がある。今はもう無名で、参拝する者も白山の人達ぐらいしか居ないそうだがね」
「何かオカルト的な話ですか?」
「そういう事を連想してしまう程、古くから住んでいる人達には何かあるらしい。元々、多くの金持ちが住みだしたキッカケがそれだったそうだからな。そういうものを自分の血筋にも取り込みたい。金持ちが考えても不思議じゃないだろう?」
「まあ、言いたい事は分かります。おっと、イベントに入ったようですね」
…
……
………
「ランドセルの向こう側に気付いたか。後は突破して鍵を手に入れるだけだな。それにしても蠍はそれなりに強い筈なんだが、彼には全く相手になってないぞ。とはいえこれ以上強くなんて出来ないのだが」
「この辺りから冗談ではなく魔物が強くなっていきますからね。そろそろ普通のプレイヤーなら難易度は優しくなっている頃ですよ。下手ならイージーかキッズモードになってます」
「キッズモードまで落ちたら、最後のポイント半減だもんね。最高難易度の彼とは雲泥の差になっちゃうけど、ちょこちょこ落ちそうな気配のが居るし、どうなるかは難しいところかな?」
「おっと竜巻の斧を手にしたか。彼ならこのままドラゴンまで行きそうだな。止められる魔物は居ないだろう。面倒なのはモンスターハウスくらいか」
…
……
………
『戦闘終了です。プレイヤーコトブキが殲滅しました』
「最高難易度ってこんな事になってたんですか? ちょっと難易度が高すぎません? 流石にこの数はちょっと……」
「バランスを見直さねばならないかもしれないが、彼は突破してしまったからなぁ。これで難易度を落とすと、突破した彼が不利益を被るし……。最高難易度だけは変えないでおくか。後は少し難易度を落とす。セントラル、最高難易度以外の数を減らしておいてくれ」
『分かりました。程良いバランスに見直します』
「予想以上に平均とトップ層とトップに差があるんですよね。それがバランス調整のし辛い部分というか、トップが突き抜けてますけど、彼の知り合い達も十分おかしいんですよ」
「最初の死神でそれなりに死んだので最初からやり直しているが、姉が2死、男の友達が2死、餅で五月蝿かった女の子が4死で、五條家の女の子が2死か。本当に死亡回数が少ないな。彼ほどではないが、このメンツも相当程度の腕をしている。そもそも有名プレイヤーで一番頑張っている勇が3死だからな」
「勇氏と同レベルが彼の周りにはゴロゴロしてるというべきか、それとも彼らも<BUSHIDO>仲間と言うべきか……」
「剣刀士のトップである近藤勇って、確かとある剣術流派の師範だったような……。そんな人物でも3死ですか」
「彼は第4陣から入ってきているから、今まであまり目立ってはいなかった。とはいえ流石は剣刀士のトップだとは思う。このイベントの初回攻略だと、3死でも十分すぎる程の腕前だ。元々から2周前提のイベントだからな」
「弟君がまさかの初回ノーデスクリアをしそうですからね。一応1デスだけは許されてますから、最高難易度でクリアするにはノーデスでなくてもいいんですが……」
「実際にやってのけてるのが居るからなぁ。この動画を流せば彼がノーデスでここまで来ているのはバレるだろうし、まあバレたとしても難易度もバレるから大丈夫ですかね」
「だろう。ハッキリと真実を突きつけてやった方がいい。そうすれば下らん嫉妬も湧くまい。それでも全員とはいかないだろうが」
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2000年 12月2日 土曜日
「今日はドラゴン戦だが、彼ならそこまで苦戦するまい。こいつはよくあるパターンのボスだ。弱点武器を持って順番通りに攻撃していけば倒せる。弱点武器を持っていないなら、残念でした、というところだな」
「実は<竜殺剣・聖王>がないとダメージが与えられませんからね。彼が最初で、しかも弱点武器を持ってくれて良かったですよ。絶対にやらかす奴が現れるでしょうし」
「銀の武具玉を使い過ぎて、必要な武器を手に入れられなくて詰む者は出るでしょう。そもそもそれもまた予想の範疇ですし」
「おっと、始まった。後はゆっくり見ているだけだな。回避するだけなら、そこまで難しくはないボスだ」
…
……
………
「割と呆気なく終わりましたね。時間は掛かりましたけど終始安定してましたし、本当に拍子抜けのボスで終わりましたよ。狙い通りではあるんですけど、何だかなー」
「まあ、良いじゃないか。ここから彼も第3エリアを一気に進んで行くだろう。そうすれば、とりあえず彼の動画を流せる。他のプレイヤーはそれぞれに努力するだろう。何たって一番難易度の高いものの攻略動画なんだからな」
「それはそうですね。これさえ見れば最高難易度はバッチリって感じですか? 実際に同じ事をしようとして苦しむ羽目になると思いますけど」
「良いじゃないか、阿鼻叫喚の嵐もオツなものだ」
「まあ、下手な連中が必死に努力する様を楽しみましょう」
…
……
………
「あーあー。彼と練習している所為で【殺意】を習得したよ。これ一応は威圧系スキルでもトップクラスなんだけど? それも主にモンスターやNPCが使う事を想定してるヤツじゃん」
「弟君が殺意を撒き散らしてるらしいから、それを見て学習したんじゃない? ある意味で優秀なAIと言えるんだから誇りましょうよ」
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2000年 12月3日 日曜日
「遂に10階まで来たか。ここのボスはそこまでHPが高くないものの、その反面オーソドックスに強いというボスだ。ま、彼なら普通に倒すだろう」
「でしょうよ。アレだけ強いならむしろオーソドックスなタイプも、余裕を持って倒せますよ。小手先でやるタイプならオーソドックスな強者は苦手でしょうけどね」
「既に始まってるけど、簡単にダメージを与えていくわよ? これ、このまま押し切って終わるんじゃない?」
「うん、これはそのまま行っちゃうわね。何と言うか、武器を強くしすぎたかしら? でも他のプレイヤーが困るし……」
「終わった。後は商人の不意打ちだけど……無理だろう、彼を見てたら油断なんてしていないみたいだ」
「一緒に進み始めた……あっと言う間だったよ。一撃でバッサリな挙句、バッグもキッチリ突き刺した。本当に隙が無いね」
「最後のボスは気付けば倒せる程度に抑えてある。脱出の際の油断を誘う為にHPは高く疲弊するように仕向けてはいるがな」
「精神的に疲れているとミスしやすいですから、それに脱出時には焦りもありますし。とはいえ、弟君はこの罠に嵌まらない気がするんですよね」




