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0005・錬金術と現実の自宅




 「とりあえず、当座に必要なものは教えてやったからのう。後は実戦練習を重ねるぐらいか……ところで何ぞ質問はあるかな?」


 「えーっと………あ! 腐った肉が手に入ったんですけど、あれって何かの役に立たせる事は出来ますか?」


 「お主であればゾンビに食わせるか、それとも錬金術の練習素材として使ってしまえ。最初は【乾燥】からじゃが、乾燥させれば肥料になる。妾の薬草畑でも使っておるので、スケルトンに渡しておけば処理してくれよう」


 「それと魔石も手に入ったのですが、これも使い道が……」


 「まあ、極小魔石じゃからなー。使うとしても魔道具の燃料に使われるぐらいかの。それ以外には碌な使い道は無い……事もないが、錬金術の【合成】で使うぐらいか。そんな所じゃな。町に行った時に売ればよい」


 「えっ!? 町が近くにあるんですか?」


 「妾の家から南に伸びておる道。つまり玄関から真っ直ぐ行けば屍人の森を抜けられる。東西に道が伸びておるから東に行けばゼット町があるぞ。妾はそこに薬を卸しておるからの」


 「おおー! 町が……! 武具とか道具とか買えそう」


 「まあ、買えるじゃろうが、お主そういえば一銭も持っとらんかったの。魔石でも売れば多少の儲けにはなろう。頑張るがよい」


 「はい!」



 師匠との話を終え、早速腐った肉を出して【乾燥】を使ってみたものの、あっさりとボロボロになって朽ちていった。何も残らず塵になって消えていった感じだ。明らかに失敗だろう。



 「ほほほ、見習いがよくやる失敗よ。スキルに依存しておるとそういう失敗を繰り返す。腐った肉を出してみよ、妾が見せてやろう」



 僕は言われた通りに腐った肉を出すと、師匠は自らの魔力で【乾燥】の魔法陣を出し、腐った肉に【乾燥】の錬金術を浸透させていった。……もしかして、ああやって綺麗に浸透させないと駄目なのか?。



 「ふふふふ、よく見て感じておるの。それこそが大事なのだ。何故そうなるのか、どうすれば上手くいくのか。それらを考えて苦心した先に磨かれた技術がある。そなたは模倣が得意と言うておったが、それを活かす方法を考えよ」


 「模倣を活かす……」


 「他の者より優秀な能力なぞ使わなければ損よ。ただお主は使い方が分かっておらぬだけ。じゃがそれは己で磨かねばならぬもの、なら励め。励まねば才も能も輝く事は無い」


 「………」


 「悩め、悩め。悩んだ先にしか答えは無い故にな」



 そう言って師匠は家へと入っていった。このゲーム……<レトロワールド>という割には、かなり高性能なAI積んでない? 何と言うか、最新モデルのAIを使ってる気がする。もしくはそれ以上か?。


 ま、とりあえず腐った肉を【乾燥】させていこう。さっきの師匠のように自分で魔法陣を出して……発動した錬金術を浸透、さ、せ……駄目だ。思っている以上に難しい。これ、もしかして【魔力操作】が下手な所為なのかな?。


 上手くいかなかったので、もう一度。………ふぅ、今度は成功した。これ、かなり集中しないと無理だ。とはいえ見習いなんだから練習は当たり前か。よし! 腐った肉が無くなるまでは練習だ。



 ―――――――――――――――


 サブ職業:錬金術師・見習いのレベルが上がりました


 ―――――――――――――――



 おっ、ちょうど使い切った瞬間レベルが上がった。えっとステータスは……魔力が1ポイント上がってる。このゲームでは職業レベルが上がると自動的に能力値が上がるんだけど、自分では選べない。


 自分で上昇する能力値を選べるのは種族レベルが上がった時だけだ。だからこそ何を上げるかが重要になる。とはいえ、該当する能力が何に作用してるのかイマイチ分かり辛い。特に魅力。あの数値はベータ版でも不明だったんだよ。


 おそらくは<踊り子>とか<吟遊詩人>とか<大道芸人>には必要な能力値なんだろうと言われている。とはいえ、本当にそうなのかと問われると疑問に思うところだ。おっと、考え込んでないで森に……。


 っと思ったら現実の肉体に何かあったみたいだ、おそらくはサブロウタだろう。僕は師匠の家の隅で寝転ぶと、意識を現実に戻した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「ワン!!」


 「おっとサブロウタ、ありがとう。ついでにシズも起こしてきて」


 「ワン」



 そのままサブロウタはシズの部屋へと歩いて行った。サブロウタはウチで使っているロボドッグだ。防犯兼ペットとしているが、これはウチでは動物を飼えないから。理由は父さんが動物の毛のアレルギー持ちだからだ。ちなみに父さんは動物好きなんだけどね。


 キッチンに行って適当な物でも食べよう。面倒だから冷凍食品でいいや。何かあった筈。………おっと焼き餃子があるね、これにしよう。ご飯も一緒に温めればいい。お味噌汁はインスタントで……。



 「タマ、私のも一緒にしておいて! 何でもいいよ。……ところでタマは何処から始まったの? 私は普通に町から始まったけど、タマから連絡が無かったからさ。もしかして特殊な所から始まった?」


 「確かに特殊と言えば、特殊だねぇ。師匠もゲットしたし」


 「ゲッ!? マジで? もしかしてスタートダッシュ決めちゃった感じ? 私なんて普通に進めてるのにさー、何かズルくない?」


 「ズルくない、ズルくない。だって僕、悪魔の星から始めたし。今は師匠の家に厄介になってて、町にも行った事ないよ」


 「えっ? タマも悪魔の星から始めたの? 私だけ悪魔の星の新情報あげようと思ってたのに、つまんなーい!」


 「知らないよ、そんなの。そもそもシズはテイマー系じゃなかったの? 思いっきりモフモフするんでしょ? こういうゲームではテイマー系ばっかり選んでるじゃん」


 「それは正しいよ。ベータの時は必死にテイミングしてたけど面白くなかったからね、悪魔の星の<魔隷師>って職業にした。魔物とかを誘惑して魅了して支配するっていう職業、スキルはテイム+状態異常って感じかな? ついでに種族は<サキュバス>ね」


 「何でネタキャラなのか強キャラなのか分からない境目を狙いにいくかな? 僕は魔人で<ネクロマンサー>ね」


 「えー、普通すぎて面白くない。もっと狙いに行こうよ、せっかくのゲームなんだしさー!」


 「ゲームだからってだけで、あんな布面積の少ない水着を着れる人と一緒にしないでよ。流石に羞恥心が無さ過ぎる気がするけどね?」


 「あはははは、そんなの気にしてたらゲームできないって! そのうえ見られてるのは私じゃなくてアバターだからね。どれだけ見てもポロリは無いし、私じゃない。ほら、気にする要素がどこにもない。ついでに私以上のキャラとか普通に歩いてるし」


 「ふーん。こっちは町に行った事ないから何にも分からないんだよね。一応師匠には近くの町に行ってもいいって聞いてるけど、今のところお金も無いし行ってもしょうがないんだよ」


 「あらら。私は最初から5000デル持ってたけど、それは町始まりだからかなぁ。ちなみに町の名前はサティラスっていうトコ」


 「僕のいる屍人の森の近くにある町はゼット町っていうそうだよ。どうやら離れた所から始まったみたいだね」


 「どうやら、そうみたいね。お金稼ぎとレベル上げに使えるかと思ったけど、無理そう」


 「いやいや、自分で頑張りなさい。僕だって師匠に殺されたりとかしてるんだし。そっちも頑張って戦えばいいじゃない」


 「こっちは最初期から出てくるのが、スライムとグレイドッグよ? エロ枠と灰色の犬とか、超つまんなくて困ってるのよ」


 「それを僕に言われても困るんだけど? 後スライムを自動的にエロ枠に入れるの止めなよ。上から降ってきて窒息死タイプか、悪いスライムじゃない可能性もあるじゃない」


 「悪魔の星のスライムは触手伸ばしてくるタイプなのよ……」


 「ああ、うん。12歳以上は出来るゲームだから、エロい事はされないと思うよ? だから普通に仲間にしたら? 盾に使えるかもしれないし」


 「まあ、そうね。それより、何かいい物できたらプレイヤーマーケットで売ってよ。私も良い物できたら売ってあげるから」


 「という事はサブは細工師にしたんだね。ベータのままだけど、アクセは突き詰めると終わりが無い沼だからなぁ……」


 「錬金術だって沼じゃん」



 まあ、それはね。


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