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0484・第四回公式イベント その27




 僕は一旦死天の槍をランドセルに仕舞い、代わりに<秘刀・千華>を握る。普通の太刀だし特におかしな所は無く、何と言うか見た目は平凡な太刀でしかない。もちろん強力な武器だと知っているし、これは絶対に使う事になるだろう。


 今の内に使って具合を確かめておく必要はある。ラスボスで使う可能性がある以上、手に馴染んでなくて負けるとか恥ずかしすぎるからね。そんな情けない姿を晒さない為にも、ある程度は手に馴染ませておかなきゃいけない。


 ついでに死骨の盾も仕舞い、身軽になって進む。川の流れる小部屋を後にし、通路を進んで行くと早速スケルトンが出た。相手が剣を振ってくるも当たる筈など無く、僕はかわしてから一撃を頭に入れる。



 「うわ……流石は特効、まさか一撃で倒すとは思わなかったよ。そのうえ塵になって消えてるし。<秘刀・千華>の方が戦いやすいね。これを持って進む方が楽だから、このまま進んで慣らそう」



 僕は魔法をいちいち使わなくてもいい<秘刀・千華>を使いつつ、スケルトンを簡単に始末していく。一撃で倒せるうえ、久々の刀だからかちょっと楽しい。レトロワールド本編では使う気は無いが、イベントの間くらいは構わないだろう。


 切り上げ、兜割り、袈裟切りなどなど。戦いにおける間合いと呼吸、そして体重移動に重心移動。そういった基本に気をつけながら刀を振るう。段々と没頭してくると、<BUSHIDO>と似た感覚になってくる。これ本編でも握った方が良いかな?。


 もちろん刀を作るつもりは無いし、【刀】スキルを習得する気も無い。でもカカシ相手に木刀で戦うくらいは良いと思うんだ、出来れは瀕死状態で戦いたい、きっと面白い戦いが出来ると思う。



 「っと、刀を使いながらニヤニヤするとか確実に不審者だよ。そんな顔をしている訳にもいかないし、もうちょっと真面目に戦おう。さっきから動きが雑になってる」



 集中しながら進んで行くと、豪華な扉があった。ここでボスみたいだが、何で随分と進んできてからボス戦なんだろう? ……考えたってしょうがないか。流石にそういう設定ですって事だろうし。


 HPやMPに飢餓度と渇水度なども確認するが問題なし。ならば一度深呼吸をして……よし! 入ろう。


 僕は豪華な扉を開けて中に入る。背後で扉が閉まり、床に大きな魔法陣が描かれ回転する。それが上へとあがっていくと、魔法陣の下から女性が現れた。尻尾が尖っており、扇情的な水着のような物に身を包んだ、頭に角を持つ女性だ。



 「どうも見た感じサキュバスっぽいね? 何でスケルトンの後にサキュバスが出てくるのか知らないけど、ボスとしてはトリッキーなタイプか」


 「♪♪♪」



 どうやら人間の言葉は喋れないらしいが、まるでゴールドスケルトンのようにワープして目の前に現れた。突然短剣を突き出してきたが僕は寸ででかわし、距離をとる。まさかあのワープをまたされるとは思わなかったよ。


 第2エリアのラストからこんなボスが多いなと思ったが、そういえばゴールドスケルトンから2例目で、そこまで多い訳では無い事を思い出す。まあ、それはどうでもいいかと思いつつ、正眼の構えで相対する。



 「♪♪♪」



 何故か顔が笑っており、明らかに隙だらけの姿を晒している。とはいえ短剣は明らかに厄介だ。特にこのサキュバスのようにワープするとなるとかなり面倒臭い。短剣類はリーチが短いが、しかしワープでそれを補えてしまう。


 そうなると接近距離で振り回せない太刀は、そのリーチで明確な不利を作られてしまうんだ。精神的な揺さぶりを掛けるトリッキーな相手かと思ったら、近接戦闘が得意という厄介仕様だった。いや、そういう意味でもトリッキーなのか。


 構えを正眼から脇構えに変える。正眼の構えだと、それ以上に接近された時に不利になってしまう。八双も霞構えも有利とはいえない。ワープしてくる相手には下段か脇構えで迎え撃つしかないだろう。


 サキュバスは構えなかったり欠伸あくびをしたりして挑発してくるが、僕は油断無く構えている。そもそもサキュバスは適当な挑発をしているが、目が笑っていない。あれは虎視眈々と獲物が掛かるのを待つ狩人の目だ。あの目をしている以上、僕が隙を見せる事は無い。


 それが分かったのだろう、突然ワープしてきて短剣を突き出してきた。僕の左側からやって来たのだが、それは当然読んでいた。脇構えである以上、背中に近い側から攻撃をするのは当たり前の事だ。


 しかし読めていたなら当然対処は出来る。僕は左前方から突き出される短剣を、体を半回転させる事で回避。そしてそこから左斜め上へと切り上げる。それは見事にサキュバスを切り上げ、ハッキリとしたダメージを与えた。



 「gyaaaaaa!?!!??」



 ああ声は出せるんだねぇ、そして取り繕えなくなったと。<秘刀・千華>が効いてるんだろうけど、あっさりと変わりすぎじゃないかな? 美しい顔が吊り上がり、怒り狂った目に変わる。



 「見下していた人間に斬られて怒り狂ったのかい? 随分と我慢が出来ないんだねー。君の方が挑発されてどうするのさ、僕を余裕の態度で見下してたじゃないか」



 サキュバスは更に怒り狂い、僕に連続で攻撃をしてくるが当たる事は無い。直線的な攻撃ばっかりなので避けるのは実に簡単なんだ。挑発できれば勝ちってボスなのか、な!。



 「Giaaaaaaa!!?!?!」



 それにしても<秘刀・千華>はメチャクチャ効いてるみたいだ。流石は妖魔に特攻効果を持つだけはあるよ。叩き出しているダメージが全然違うんだろうね。サキュバスはワープで距離をとり、僕の方を憎悪の篭もった目線で見てくる。



 「※※※!※!!※※※※※!!!」



 なにやらよく分からない呪文をサキュバスが唱えると、僕の足下に魔法陣が発生。それが僕を包み、そこで僕の意識は途絶えた。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 コトブキは死んだ訳ではなく、部屋の中で止まっていた。コトブキ自身が意識を失っているのだから、1階の白い魔法陣に戻されていないとおかしいのだが、このサキュバス戦ではこれが正しかったりする。


 意識の無い間にある程度ダメージを受け、その後で急に意識が復帰、混乱してしまうという罠だ。ちなみにこの罠の名は<狂戦士化>という。つまり意識の無い間は暴れるしかないのである。


 サキュバスは狂戦士になった者に攻撃する為に近付く。これはAIによって決められているボスの行動であり、何の不思議もない。そして<狂戦士化>は普段のプレイヤーの動きを参照して行われる。


 その筈なのだが、何故かコトブキは動かない。それに対して作られたデータであるサキュバスは何も考える事はなく、既に決まっている行動を機械的に行う。そしてコトブキに斬られた。



 「!!?!!?!?!」



 この時サキュバスを動かしているAIは混乱していた。実はコトブキのイベントのみ、他のプレイヤーよりも敵が数段強いのである。実はこのイベント、参加するプレイヤー個人の能力で難易度がある程度決まっていたりする。


 そして死亡するにつれ難易度が下がっていくという形なのだが、コトブキだけは一度も死んでいない。それは既に運営の計算外である為、実はボスを動かしているのは<セントラル>なのだ。


 そして統括AI<セントラル>は、あり得ないものを見た。暴走する筈の罠で暴走せず、明確に殺意だけを向けてくる怪物を。触れれば斬ると言わんばかりの、その姿を。


 統括AI<セントラル>だけでなく、リアルタイムで見ている運営の一部人員も、そのあり得なさに言葉が出ない。


 ただ立っているだけだというのに、そこに存在するのは人の形をした殺意の塊である。否、ただの修羅とも言うべきものであった。明確に敵を殺すという意識しかないモノ。


 それを前にして<セントラル>は素早くコトブキのデータを参照し始めた。



 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 ※装備


 秘刀・千華

 鉄のサレット

 金縁眼鏡

 死骨の鎧

 巨人兵のガントレット

 革の剣帯・鉄のナイフ・革の水筒・からくり手裏剣

 火弾の魔法紙8・水弾の魔法紙3・氷縛の魔法紙12

 【ライトバレット】の巻物

 【サンダーバインド】の巻物

 【クリア】の巻物

 キメラの脛当て

 からくりの足袋


 ※ランドセル型アイテムバッグ


 死天の槍

 死骨の盾

 骨の槍

 鉄のメイス

 鋼鉄の剣

 鋼鉄の槍

 鋼鉄の盾

 金の融合玉

 光の解呪玉

 パン10

 大きなハム2

 干し肉4

 チーズ2

 コップ

 水甕2

 ポーション甕

 下級ポーション甕

 毒消しの甕

 油の樽

 荷物袋(小)

 紙(複数)

 長い棒

 大きな板

 ランタン

 火付け棒

 死神の鍵

 骨の鍵

 巨人兵の鍵

 人形の鍵

 吸血鬼の鍵


 ※イベント限定金銭

 39440エス


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