0482・お昼の話し合い
マイルームに戻った僕は囲炉裏部屋から訓練場に行き、ファルに声を掛ける。セナ達は今日も練習しているようだが、最近カカシの難易度が<イベント鬼面武者>レベルになっているみたいだ。そしてそれをボコボコにするセナ。思ってるよりも強くなってるのかな?。
そんな事を思いつつも、僕は囲炉裏部屋へと戻りソファーの部屋へと転移。するとラスティアとキャスティがお菓子を食べながら雑談をしていた。
「あ、お帰りー。コトブキ、お菓子が無くなってきたから補充をお願いね」
「とりあえずファルを召喚してからね。それにしても今日は結構ギリギリだったと思うんだけど、皆はまだ戻ってきてないのか。それだけ進めてるって事なんだろうけど、止め時を失ってるのかな?」
「そうではないですか? コトブキが一番早かったのは間違い無いですし」
そう話しつつファルを召喚した僕は、その後すぐにマイルームへと戻る。そして適当にお菓子を大量買いし、インベントリに詰め込んで戻ると、皆がソファーの部屋に居た。どうやら入れ違いになったみたいだ。
僕はソファーの部屋のテーブルにお菓子を山積みにすると、皆に話しかける。
「皆、お帰り。僕がお菓子を買いに戻ってるのと入れ違いになったみたいだね」
「そうね。私達も今戻ってきたところよ。ギリギリまで粘って、何とか5階を突破したわ。アレ、厄介極まりなかったんだけど? コトブキから聞いてなかったら勝てなかったかもしれないわよ」
「うん、それは間違い無い。3階のもかなり厄介だった。あれは攻略法を知ってないと、相当に面倒」
「分かる。私も知らなかったら、どう倒していいか分からなかっと思うし」
「私も何とか5階まで行けましたので、皆に追いつきました。1人だけ例外が居ますけど、そこは無しで」
「何だか随分と酷い言われようだけど、僕の方はゆっくりだね。4階まで行ったけど時間が無くて慌てて戻ってきた感じ。第3エリアは大変だよ。予想以上に大変」
「アンタがそう言うって事は本当に大変みたいね。言えない事は後で聞くとして、もう来たみたいだから昼食に行きましょうか」
ファルがやってきたので食堂に移動し、昼食を食べたらソファーの部屋からマイルームへ。ログアウトして現実へと戻ると昼食の準備にとりかかるんだけど、早速シズがやってきた。
「どうも厄介そうだから先に聞いておきたいんだけど、第3エリアってどんな感じなのよ」
「今日はそもそも第2エリア10階のボスからだけど、コイツかなりの強敵だった。最初は死神っぽい姿で登場するんだけど、途中からワープして攻撃してくる。それも背後に回っての奇襲」
「また面倒臭いボスねえ……それで?」
「剣を突き込んで【魔弾】を使えば大ダメージを与えられる。その後、首に掛けてるメダルを掲げたら変身。黄金の鎧と兜に黄金の剣と盾を持つ姿に変わる。剣を振ったら光の斬撃が飛ぶよ」
「最悪……。なんてボスを用意するのよ」
「それは運営に言って。とにかく回避して近付くのが基本。近付いたら顔に剣を突き入れて【魔弾】、これで勝利できる。おそらくだけど黄金の鎧や兜に当たっても、ダメージは無いと思う。しかも黄金の盾で防がれる事を考えると、隙を見つけて突き込む以外に方法が無い可能性が高い」
「それって絶対に最初に出てきた死神より強いわよねえ?」
「確実に強いだろうね。倒すと死骨の鎧が手に入る。そして部屋の中の隠し扉の中に、死骨の槍と死骨の盾が入ってた。どれも無限アイテムなんだけど、おそらく死神じゃないからこそ死骨の槍が出たと思ってる」
「死神じゃないから? 何で?」
「鑑定の説明に「君はどうする?」って書かれてたから。盾の方は「脱出に向けて良い物を手に入れた」だったのに、「君はどうする?」だよ。そしてボスを倒すと、金の融合玉と銀の武具玉というのが手に入る」
「何となくは分かるわ。昔アンタが友哉から借りてやってた、風来の○レンみたいなものでしょ。確か混ぜる壺みたいなのが登場した筈」
「そうそう、あんな感じのアイテムだよ。それで死骨の槍を入れた後に三魔の剣を入れたら死克の槍に変わって、そこに銀の武具玉を使ったら死天の槍に変わったんだ。説明にこれ以上は強化出来ないって書かれてた」
「ならそこで終わりなんでしょうけど、三魔の剣を強化はしなかったのね。リーチが短いから?」
「そうだよ。明らかに不利だからね、槍の方が良いに決まってる。まあ、今は武器が強力だから左手に盾を持って手打ちで使ってるけど、本当は両手で握ってキッチリと使いたいんだよねー。仕方ないんだけどさ」
「それで、その後は?」
「奥に螺旋階段があるからその先で買い物。何回でも使える魔法の巻物を売ってもらえるけどメチャクチャ高い。ただし巨人の腕を売ると、3つの巻物を交換でくれるよ。後は食料などを買っただけだね」
「ふーん。で、3つの巻物ってなに?」
「【ライトバレット】【サンダーバインド】【クリア】。この3つの魔法が使えるようになる巻物が貰えるんだ。僕はそれを持って第3エリアへと進んだ。で、第3エリアは暗くて、最初の通路と部屋以外には灯りが一切無い」
「厄介な場所ねえ。暗闇ダンジョンじゃないんだから、止めてほしいわ」
「左の部屋でランタンと油の入った小さい樽が、右の部屋で白いのと緑の魔法陣があるよ。記録した後で進んで行き、2階で綺麗な女性に会った。鉄格子の中に閉じ込められてて、助けてくれって頼まれる。同じ階にあるスイッチで開けられるって言われるんだけど……」
「怪しすぎない?」
「まあね。そして3階に上がって進むと2階に下りる階段があるから下りて、コウモリを倒しながら進むとボス扉。中に入ると吸血鬼が出てくる。力が非常に強いけどそれだけだから対処はしやすい。そしてダメージを与えていくとキメラの姿に変わる」
「なんでキメラ?」
「後で分かるけど実験体にされた人だった。で、このキメラの時に第1エリアで手に入れた骨の槍を刺す。後は血が流れ続けるから、回避したり防いで時間を潰せば死ぬ。骨の槍はここで使う物だったみたい」
「成る程ね。で、女性はまだ?」
「いや。吸血鬼は鍵と眼鏡と脛当てをくれる。で、この眼鏡に【夜目】と【暗視】が付いててランタンが無くても見えるようになる。脛当ては【脚力強化】が付いてて、どっちも壊れない」
「つまり、そこまで急いで行って倒せって事ね」
「そう。で、吸血鬼のところの奥のスイッチを動かして鉄格子を開けて戻る。女性は待っていて、お礼がしたいけど恥ずかしいから後ろを向いてって言われる」
「どう考えても怪しすぎるでしょ」
「そう。でも僕は往年のレトロゲームと同じ事をするとは思わなかった。だから振り向いていいって言われた瞬間前に跳んだんだよ。そして振り返ってすぐに【クリア】を連発した」
「そこまでする?」
「いや、それで正解だったんだ。普通は振り向いた後に「はっはっはっ、バカめ」っていうのをやるけど、それ無しで攻撃してこようとしてたしさ。流石レトロワールドの運営だよ、容赦なく殺しに来る」
「どっちに呆れるべきかしらね? 往年のパターンより積極的に殺しに来る運営? それともそれを読んで初見で突破するタマ? 本当にどっちに対して呆れればいいのか、悩むわよ」
「呆れるような事じゃないと思うけど?」
今日の昼食は野菜たっぷりのワンタン○ンだ。さっさと食べて雑事を終わらせないと、ゲームの続きが遠のいちゃうからね。手早く済ませよう。




