0455・第四回公式イベント その4
階段の下で少し休憩し、精神を整えたら5階へ。上へと上がり真っ直ぐの通路を進むと、奥に大きな扉があった。やはりここでは中ボスか何かが出るらしい。簡易薙刀を取り出して右手に持ち、棍棒は剣帯に差しておく。
少々強引ではあるものの、薙刀が必要なければ床に置いておけばいいだけだ。逆に切る武器でしか戦えないようであれば、棍棒と盾を床に置いておけばいい。おそらくあんな所に棍棒が置いてあった事から察するに、ここのボスは打撃に弱いのだと思う。
準備が完了したので扉を開け、中に踏み込むと自動で扉が閉じられる。そして閉まった瞬間「ガチャン」と音が鳴った。どうやら完全にロックされて出られないようになったらしい。既にボスの姿は見えており、そいつは起き上がって動き始めた。
「カタカタカタカタ」
首から上の骨は「カタカタ」鳴るだけなのだが、足下は「ドスン!ドスン!」という音が響く。見上げると3メートルほどの高さに顔があるのだが、おそらくはオーガか何かの骨だろう。そんなデカイ奴が迫ってくる。
僕は素早く薙刀を置き、前に向かって走り出す。何かの拍子に薙刀が壊れても困るからね。そう思って走ると、早速攻撃してきたのだが遅い。腕をゆっくり振るのだが、僕は簡単にかわし懐に入る。
そのまま右足にシールドバッシュを行い転倒させようとするも、仮称スケルトンオーガは倒れずに踏みとどまった。僕はすぐさま離れ、左側面を駆け抜ける。仮称スケルトンオーガは右腕で殴りつけてきたものの、既に僕は居ない。
後ろに回った僕は、何度も右足を攻撃し骨を折ろうとするが、「ガン!ガン!」と音がするだけで平気な感じだ。もしかしてギミック系のボスなのかと思うも、最初からそんなボスを出すだろうか?。
仮称スケルトンオーガが振り向いたので距離をとり、再び隙を探しながら周囲を調べる。………特に変わったような場所も何も無いね?。
近付いてきた仮称スケルトンオーガは蹴りを放ってきたものの、後ろに下がって回避し、一気に走って接近する。実はスキルが無いだけでなく、どうやら封印されている所為で全く魔力と闘気が使えないようになっているんだ。
つまりイベント中はマニュアルでも、魔法や【身体強化】などを使う事は不可能となっている。なので一気に接近する事もできず、リアルの能力と変わらない程度しか発揮できない。それでもゲームだから僕のリアル能力よりはマシだけどね。
そんな余計な事を考えつつも、再び敵の右足を攻撃していく。とにかく3メートルもあるような相手に正面から攻撃しても無駄だ。まずは足下を崩さないとどうにもならない。
再び仮称スケルトンオーガが振り向いたので、素早く離脱。動きは遅いけど、威力がシャレにならない可能性が高い。わざわざ喰らって調べようとも思わないし、ここは持久戦も覚悟して戦おう。
「カタカタカタ………カタ!!」
今度は左腕で張り手のように攻撃してきたが、それも前へと出る事でかわす。大きくて鈍い奴は接近距離の方が安全な事も多い。ただし相手は人間じゃなくて骨だからね。予想できない何かをしてきそうで困る。
そう思いながらも叩いていき、4度目。遂に仮称スケルトンオーガの右足を折る事に成功。脛を狙って殴り続けた甲斐があるよ。右足の骨が折れた仮称スケルトンオーガは倒れ、膝立ちで起き上がってきた。
しかし僕を攻撃するには片方の腕しか使えなくなったし、動きの制限が更に加わる。こうなれば後はこっちのものだ。僕は仮称スケルトンオーガの左ラリアットのような攻撃を下がってかわし、再び前へと走って行く。
裏拳のように戻してきたけど、遅いので楽々脇の方へと走り抜ける。そして今度は左腕へと攻撃を加え始めた。左足を狙わない理由は、左足まで壊すと両手で攻撃してくる可能性があるからだ。腹這いの形でね。
今度は仮称スケルトンオーガから離れず、相手の攻撃に合わせて移動しながら攻撃を続ける。とはいえ流石は腕の骨、そう簡単に折れてはくれない。出来るだけ真ん中の方の折れやすい所を殴っているにも関わらずコレだ。
それでも何回も攻撃し続け、ついに左腕も破壊した。こうなると残っている攻撃箇所は胸の所の火だ。そこにだけユラユラと揺れる火が灯っている。おそらくあれが弱点か倒す為の場所なんだろう。
僕はすぐさま入り口近くの簡易薙刀を取りに行き、棍棒を無理矢理に剣帯に差して戻る。左手に盾を持ったままだけど、何とか僕に攻撃しようとする仮称スケルトンオーガの背に乗り、腹這いになっている仮称スケルトンオーガの上から胸の中の火を切り裂く。
「ガタガタガタガタ!!!」
火を切り裂かれた事で大きく暴れ始めたが、僕からすれば効いている証拠でしかない。暴れる仮称スケルトンオーガの背中の上から、ひたすらに切り裂くこと10数回。最後の攻撃の後に動きがなくなったので一旦止める。
すると、仮称スケルトンオーガの体が塵のように消えていき、入ってきた方の扉も含めて2つの扉が開いた。やれやれと思ったものの、仮称スケルトンオーガを倒しても何も出ない。まさかの鍵持ちではなかったようだ。
僕はガックリとしながらも、先へと進む方へと向かう。戻っても役に立つ物は無いし、ここから先に進まないといけないのだから戻る意味は無い。
一本道の通路を進むと右側に扉があった。その扉に耳をつけて確認するも異常は無し。扉を慎重に開くと、部屋の中央には緑色の魔法陣があり、その周りには剣と盾が落ちていた。
それ以外にもパンと水の入った甕があり、どうやら休憩とログアウトが可能だと思われる。僕はアイテムを全てランドセルに入れ、パンと干し肉を食べつつ水を飲み、飢餓度と渇水度を回復する。
それが終わったら棍棒と木の盾を持って魔法陣へ。ある程度の耐久力は減っている筈なので、これを先に壊れるまで使おうと思っている。
装備したままじゃないと、次に始めた時に忘れてるかもしれないから、その為にも装備したままだ。
緑色の魔法陣の中央に立つと、光が湧き立ち、僕はいつの間にか囲炉裏部屋に立っていた。どうやら無事に戻ってこれたようだ。
時間を見ると昼に近いので、すぐにファルに声を掛けて師匠の家のソファー部屋へ。
「おっ、コトブキ君はこんな時間? という事はもしかしてログアウト出来る所まで行けたの?」
「そう言うナツは無理だったんだね? しかしナツ以外は誰も居ないの?」
「うん。他の皆はまだだよ。私は何回か試して無理って分かったから、リアルで皆からヒントを貰おうと思って。ゲーム内の掲示板は駄目ってなってるけど、リアルでも駄目だって聞いてないし」
「まあ、運営もそこまで鬼じゃないとは思う。それまで禁止というか悪行度の範囲にすると、下手な人は楽しめなくなるからね。それに、答えを知ってても一筋縄じゃいかないし」
そんな事を話していると続々と皆が来た。最初はアマロさんで次がトモエ、最後にイルが来ていつものメンバーが揃う。
しかし皆の顔を見ても上手くいった感じはしない。どうやらログアウトできる魔法陣まで進めたのは僕だけみたいだ。
「コトブキが早くに居るという事は、途中で諦めた?」
「そんな事はないよ。ちゃんとログアウト出来る魔法陣まで進んだって。……うん。この程度なら話しても問題ないみたい」
「流石ねー、アンタは。私は出てすぐのヤツに何回殺されたか分からないわよ。何度も何度も試して、ようやく必要な物を把握した感じなのに……」
「1ヶ月も期間がある筈です。少しずつ死にながら情報を集めるしかありません。まさかメモ帳の機能がこんなに役立つ日が来るなんて思いませんでした」
まだボスにも辿り着けてないみたいだね。ボスでやられたならともかく、そこまでも行けないとは……。
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※装備
木の棍棒
木の盾
革鎧
革の剣帯・鉄のナイフ
革のサンダル
※ランドセル型アイテムバッグ
簡易薙刀(錆びた鉈)
簡易ポールハンマー
鉄の剣
木の盾
パン
大きなハム
干し肉
チーズ
コップ
水甕3
ポーション甕2
荷物袋(小)
死神の鍵




