0452・第四回公式イベント その1
朝食が終わった後で僕はマイルームへと戻った。そもそも公式イベントにはマイルームからしか転移できないように決められている。流石にやる気の無い人達には関わりはないが、おそらくだけど多くの人が挑戦していると思う。
僕は囲炉裏部屋で公式イベントへの参加ウィンドウを出し、そこからイベントダンジョンへの転移ボタンを押す。すると一瞬で視界が変わった。
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そこは壁から出た薄明かりがボンヤリと照らしている洞窟の中であり、その一室に閉じ込められている。どうやら手枷や足枷は無いみたいだけど、5メートル四方の狭い部屋だ。僕はまずステータスを見てみるも、改めて酷い有様だと思う。
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<コトブキ>
※種族・職業
種族:脱出者
メイン職業:脱出者
サブ職業:脱出者
※能力
力:10
耐久:10
魔力:10
精神:10
意志:10
敏捷:10
器用:10
感覚:10
魅力:10
※スキル
無し
※装備
右手:無し
左手:無し
頭:無し
体:無し
右腕:無し
左腕:無し
腰:無し
足:無し
※衣服
貫頭衣
※アクセサリー
無し
※称号
無し
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ビックリするよね。古代の衣服とも言える貫頭衣1枚しか着てないんだよ? しかも種族も職業もイベント専用みたいだし。っていうか<種族:脱出者>は色々おかしいと思う。
それはともかく進むしかないんだけど、まずはこの部屋の扉を開けよう。おそらくはそこからセーフティゾーンは無くなる筈。ここで考えていても意味無いし、まずは出てからだね。
そう思って扉を開けて出ると、そこには左右への通路があった。どうやら何処かの小部屋だったみたいだけど、左からガシャガシャと音がする。すぐに警戒しながら左を見ると、そこには大きな鎌を持って、ボロボロのローブを着たスケルトンが居た。
そのスケルトンは非常に速く、一気に距離を詰めると横薙ぎに大鎌を振ってくる。僕は素早く前に出ながら柄の表面を掌で押す。流石に柄の一撃でも死にかねないからね。
そのまま前へと出ながらも強力な振りに体が押される。それでもスケルトンに近づけた僕は、右の掌底で顎をカチ上げた。大したダメージが出ずとも動かす程度は出来るらしく、僕はその一撃後、すぐに相手の背後に回り体に抱きつく。
そして相手を持ち上げて後ろへと叩き落とす。そう、”投げる”のではなく”落とす”のが正しいやり方だ。地面は石なのでジャーマンスープレックスをまともに喰らうと、人間なら死ぬ。もちろん相手は人間じゃないけどね。
だからこそ、僕は手加減をしてやる気は無い。相手を叩きつけたものの、回転させて再び持ち上げて叩き落とす。回転させて持ち上げて再び叩き落とす。既に相手は大鎌を手放しているものの、僕は死ぬまで叩き落とし続けた。
30回を超えた辺りでやっと死んでくれたのか、スケルトンも大鎌も消えてなくなった。やれやれ、最初から厄介過ぎないかな? おそらくだけど、アレに追いかけられて逃げるのが普通なんだと思う。
そんな事を考えていると、スケルトンが死んだ所に鍵が落ちているのを発見。という事は、こいつは追い駆け続けてくるタイプって事か。おそらく逃げ切った後、また出てくるんだろうなぁ……ここで死んだけど。
僕は考えるのを止めて鍵を拾って左手に持つ。こういうのは壊れないって決まってるイベントアイテムだろうし、敵の目を突き刺すぐらいには使えるでしょ。そう思いながらスケルトンが来た左へと進む。
もしかしたら良い物が置いてあるかもしれないし、あったら報酬として頂いていこう。少し期待しながら進むと、曲がり角があったので曲がる。すると目の前には行き止まりがあり、そこにランドセルが落ちていた。
「ラッキー! インベントリが使えないから鞄なんかは貴重なんだよ。あの死神みたいなスケルトンを倒した御褒美って感じだね。やっぱりそういうのがないと駄目だと思う。いやぁ、倒して良かった」
持てる物が増えるっていうのは大きな意味を持つ。最初から鞄があるなんてありがたいと思いつつ、拾ったランドセルに鍵を入れると消えた。
あれ? と思って手を入れると、目の前にウィンドウが出現。
「………これもしかして、いわゆるアイテムバッグみたいなヤツ? だとしたら凄く有利になれるんじゃ……」
最初に居た強いヤツを倒した特典にしては大き過ぎる気がする。何故なら大量のマス目の中に鍵があるんだけど、その鍵の説明が出てるんだ。
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<イベントアイテム> 死神の鍵
最後の大扉を開ける為の8つの鍵の内の1つ。これがないと脱出不能であり、必ず手に入れなければならない物だ。勝利した君は遂に恐怖を克服した。おめでとう!
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「いや、おめでとうって言われても……。最初に出てきてすぐに倒したんですが? 僕は一度も追いかけ回されてませんよ?」
言っても仕方ないのでランドセルを閉めて背負い、僕は戻って別の道を進んで行く。当たり前だけど死神がもう一度出てくるなんて事は無く、今度は最初の部屋を出て右へと進む。
「あれ? ステータスを見るとMPが減ってる? ……あ、回復した。どうやら仕舞うのにMPを僅かに消費するみたい。最初から100といわれてるから、多分消費は1かな?」
ゲージがちょっと減ったがすぐに回復したので、消費量は特に考えなくてもいいね。
通路を進んで行くと扉を発見。罠があるかどうかは分からないが、おそらくいきなりの罠は無いだろう。そう思い、扉に耳を付けて中の音を窺う。……特に何の音もしないね?。
待っても音がしないので、扉の取っ手を掴んで引っ張る。すると扉はあっさり開き、部屋の中には木の机が幾つかと椅子があった。机の上にはナイフとチーズ、そして干し肉が散乱している。
もう1つの机の上にはコップと水差しと袋があり、部屋の隅にある甕には水が満タンに入っていた。どうやらここで多少の食料に武器と水、そして荷物用の袋が手に入るらしい。僕はありがたく”全部”頂いていき、ランドセルに詰めた。
何故か水の入った甕まで入れられたけど、本当にあの死神さんを倒して良かったよ。装備が無くても倒せるようになってるんだから、ありがたい限りだね。
全て手に入れた僕は、部屋を出て再び歩いていく。ここまでは一本道であり、迷うような場所は無かった。そろそろ分岐路とか出るかな? と思ったものの、そんな事は無くまた部屋が。
音を確認するも音は無く、再び僕は遠慮なく開ける。すると中には壊れた武具があった。刃物はボロボロになったり錆びたりしており、とても使える物は無い。とはいえ、槍などの柄は使えるだろう。
それらの棒を全てランドセルに入れ、ついでに部屋の中にあったロープも拝借していく。そしてナイフを棒の先端に水平に付け、切ったロープでグルグル巻きにしたら完成。簡易的な槍だ。
スキルがあるならまだしも、このイベントでは能力値も何も変わらない。だったら槍の方が有利であり、わざわざ棒とナイフで戦う必要はないんだよね。特に唯の棒じゃそこまで威力が出ないし。
いつも使ってるのは石で被覆したり金属で出来てるから役に立つのであって、唯の木の棒に命を預けるほど僕は酔狂ではない。よし、終わったので先へと進もう。
更に先へと進んで行くと、再び部屋を発見。中に入ると、また甕があった。しかし今度の水は緑色だぞ? これってまさか……。
ランドセルの中に入れてみると、甕の中身が初級ポーションだと判明。まさかの甕に満タンのポーションが手に入るとはねー。ま、ありがたく頂いていこう。
他にも大きなハムがあったので全部詰め込み、更には鉈も発見したので持っていく。剣帯が無いので持ち運びが出来ないが、それでも簡易槍の予備が手に入ったのはありがたい。
僕は部屋を出ると、再び進んで行く。
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※装備
簡易槍
※ランドセル型アイテムバッグ
鉈
棒(複数)
大きなハム
干し肉
チーズ
コップ
水甕
ポーション甕
荷物袋(小)
ロープ
死神の鍵




